Googleアカウントの使い分けは何個が適切か|決め方の基準
Googleアカウントを何個に使い分けるかは、好みの問題に見えて、実際には後から取り返しがつきにくい設計の話です。増やすのは数分で終わりますが、減らすときにはファイルの引っ越しと共有先への連絡がついてきます。ここでは、個数を先に決めるのではなく、分けざるを得ない境界を数えてから個数を出す順序で整理します。
「何個持てるか」と「何個回せるか」は別の問い
検索結果には上限の話と運用の話が混ざって出てきます。この2つは分けて考えたほうが早く答えが出ます。
持てる数のほうは、実務ではほぼ制約になりません。1つのブラウザに同時にログインしておくことも公式に案内されている使い方で、切り替えの手順も用意されています。詰まるのは、その先の回せる数のほうです。
回せる数を決めているのは、アカウントの側ではなく人間の側です。パスワードと2段階認証の端末、受信箱を見る頻度、ファイルがどこにあるかの記憶。これらが追いつく範囲が実際の上限になります。増やす前に、いま持っているアカウントのうち、直近1か月で1度も開いていないものがいくつあるかを数えると、自分の上限がだいたい見えます。
開いていないアカウントは、放置してもゼロにはなりません。届いた重要な通知に気づけない、復旧用の連絡先が古いまま残る、ログイン連携に使ったサービスからの連絡が届かない。この3つは、使っていないアカウントほど起きやすくなります。数を決めるときは「増やしても管理できるか」ではなく「毎週開くか」で線を引くと、実態に近い判断になります。
分けざるを得ない境界は、機能ではなく責任で決まる
「仕事と私用」という分け方は粗すぎます。実際に分離が必要になるのは、次の境界をまたぐときです。
- 支払いの主体が違う。経費として落とす契約と、自腹の契約を同じアカウントに置くと、解約や名義変更のときに切り分けられなくなります
- ファイルの所有権が移る可能性がある。退職や契約終了で相手に渡す前提のものは、渡せる単位のアカウントに置いておく必要があります
- 共有したときに相手へ見える名義が違う。ドキュメントを共有した瞬間、閲覧者にはそのアカウントの名前と写真が表示されます
- 組織の管理権が及ぶ。仕事用または学校用のアカウントは管理者の設定に従うため、個人の判断で変えられない項目があります
- 国ごとに違うサービスを使う。Google Playの国はアカウントの支払い情報で決まり、複数の国のアカウントにログインしていると意図しない表示になることがあります
この5つのうち、いくつをまたいでいるかがそのまま必要な個数の下限になります。またいでいないのに分けているアカウントは、便利さではなく管理の手間だけを増やしています。
判断に迷ったときの目安は、そのアカウントを他人に渡す場面を想像できるかどうかです。渡す可能性があるなら、渡せる形にしておく必要があるので分けます。渡す場面が思い浮かばないなら、それは分ける理由ではなく、整理したいという気持ちです。整理は受信箱の中のラベルやフォルダで足ります。
もう1つ、分けたつもりになりやすい落とし穴があります。同じブラウザの同じ保存領域に2つのアカウントでログインしている状態は、切り替えができるだけで分離ではありません。片方で開いた画面から、もう片方のデータに手が届く場面が残ります。境界を守りたいなら、アカウントを分ける判断と、それをどこで開くかの判断はセットで決める必要があります。
1個増やすたびに増える固定費
アカウントを1つ足すと、目に見えない負担が4つ増えます。
1つ目は、既定のアカウントのずれです。複数にログインした状態では、Googleがどのアカウントで開くべきかを判断できない場面が出ます。公式のヘルプはこう説明しています。
多くの場合、デフォルトのアカウントとは、最初にログインしたアカウントになります。 出典: support.google.com
2つ目は、URLに埋め込まれる番号です。ログインした順に割り当てられるため、途中で1つログアウトすると番号が詰まり、ブックマークしておいた画面が別のアカウントで開きます。
3つ目は、2段階認証の管理です。アカウントごとに認証の手段を用意する必要があり、端末を機種変更したときの作業量はアカウントの数に比例します。
4つ目は、切り替えそのものにかかる時間です。1回あたりは数秒でも、1日に何度も繰り返せば無視できません。増やすかどうかを決めるときは、この4つを引き受ける価値がその境界にあるかどうかで判断すると迷いが減ります。
分ける単位は、アカウントだけではない
「使い分け」という言葉には、性質の違う4つの手段が混ざっています。どれで分けるかによって、解決する範囲と負担がまったく違います。
| 分ける単位 | 解決すること | 残る問題 |
|---|---|---|
| アカウントを増やす | 所有権、支払い、名義がきれいに分かれる | 認証の管理と切り替えの回数が増える |
| 受信箱の中でラベルを分ける | 用途ごとに整理して見られる | 名義も所有権も1つのまま |
| ブラウザの保存領域を分ける | 同じサービスに同時ログインできる | アカウント自体は増えたまま |
| 委任で人に任せる | 対応の担当を分けられる | 自分の作業量は減るが名義は同じ |
多くの人が最初に手を出すのは1つ目ですが、実際の困りごとが「用途ごとに整理したい」だけなら2つ目で足ります。「同時に開きたい」なら3つ目で、アカウントを増やす必要はありません。アカウントを増やすべきなのは、前の節で挙げた境界をまたいでいるときだけです。
順番を間違えると、増やしたアカウントを後から統合する作業が発生します。この作業は、増やすときの数分とは比べものにならない量になります。
増やさずに済む場面が3つある
分けたい理由が「別の名前でメールを出したい」「別の人に受信箱を見てほしい」であれば、アカウントを増やさずに解決できます。
まず委任です。Gmailには、他の人に自分の受信箱の操作を任せる仕組みがあります。
1 人以上の代理人に自分の Gmail アカウントへのアクセス権を付与できます。代理人とは、アカウント所有者に代わってアカウント内のメールを閲覧、送信、削除できるユーザーのことです。 出典: support.google.com
追加できる代理人の数は、個人用のアカウントで最大10人、仕事用または学校用のアカウントで最大1,000人です。一般的な使い方であれば、同時にアクセスできるのは40人までとされています。招待メールの有効期限は1週間で、実際に使えるようになるまで最長24時間かかることがあります。共同で1つの窓口を運用するなら、2つ目のアカウントを作るより先に検討する価値があります。
次にエイリアスです。別のアドレスから送信する設定は、アカウントを増やさずに名義だけを変えます。ただし代理人を追加することはできません。エイリアスはGoogleアカウントそのものではないためです。
最後にピリオドです。Gmailのアドレスは、ピリオドの数や位置が違っても同じアドレスとして扱われます。他の人が、あなたのユーザー名にピリオドを足したアドレスで登録することもできません。受け取ったメールを仕分けるための目印としては使えますが、別の名義として使い分けることはできない仕組みです。
この3つで解決しない場合にだけ、アカウントを増やす判断に進んでください。順序を逆にすると、委任やエイリアスで足りたはずの用途に、認証と管理の一式がついてきます。
2個・3個・5個以上で、運用の形が変わる
| 個数 | 想定される境界 | 現実的な置き方 |
|---|---|---|
| 2個 | 私用と仕事 | ブラウザのプロファイルを2つ。標準機能だけで完結する |
| 3個 | 私用・勤務先・自分の事業 | 色分けと起動ページの区別が必須になる |
| 5個以上 | 顧客ごとの管理権が別 | 名義よりも、どこで作業しているかを固定する設計が要る |
2個までは、いま使っているブラウザの標準機能で十分に収まります。3個からは、どのアカウントで何をしていたかの記憶が怪しくなり、色や名前で見分ける工夫が必要になります。
3個の構成でよく起きるのが、真ん中のアカウントが宙に浮く現象です。私用でも勤務先でもない自分の事業用のアカウントは、開く頻度が他の2つより低くなりやすく、確定申告の時期だけ思い出す置き場所になります。頻度が低いこと自体は問題ありませんが、そのアカウントに支払いと契約が集まっている場合、更新の通知を見落とす窓口になります。開く頻度と重要度が逆転している箇所は、増やす前に必ず確認しておく場所です。
5個を超えると、問題の性質そのものが変わります。ログインの分離はブラウザの側でとうに解けていて、残っているのは、目的の受信箱や目的の管理画面がいまどの窓にあるのかを毎回探していることのほうです。
減らすときにかかる作業を、増やす前に見ておく
個数を決める判断が難しいのは、増やす費用と減らす費用が釣り合っていないからです。作るのは数分ですが、畳むときには次の作業が全部ついてきます。
- ファイルの所有権の移し替え。共有しただけでは所有権は動きません。1件ずつ移すか、まとめて移す手続きを踏む必要があります
- 共有リンクの張り直し。相手に渡したリンクは、元のアカウントを消した時点で開けなくなります。どこに渡したかの記録がないと、相手から連絡が来るまで気づけません
- そのアドレスでログインしている外部サービスの付け替え。Googleでログインする設定にしていたサービスは、アカウントを消すと入れなくなります。数が多いほど時間がかかります
- 2段階認証の解除と再設定。認証アプリに登録した項目を消し、移行先で登録し直します
この4つを見てから増やすと、判断はかなり保守的になります。実際、迷った末に増やさなかったアカウントで困ることはほとんどありません。逆に、勢いで増やしたアカウントは、使われないまま認証だけ維持し続ける対象として残り続けます。
個数を増やす代わりに、置き場所を固定するという解き方
アカウントの数を減らせないなら、探す対象を変えるのが次の手になります。名義を単位に窓を並べると、窓の数はアカウントの数だけ増えて、どれも同じ見た目になります。仕事の種類を単位にすると、探すものが名義から場所に変わります。
アプリごとに独立したワークスペースを持つ形にしておくと、受信箱は常に同じ場所にあり、その中でどの名義かは開いた瞬間に確定します。切り替えの操作は、選ぶ行為ではなく移動になります。この構造の説明はワークスペースにあり、どのサービスをこの形で扱えるかは使えるアプリで確認できます。標準のブラウザとの差分はできることに整理されていて、先行する同種の製品との違いはShiftとの比較とRamboxとの比較で構造ごと比べられます。費用の目安は料金にあります。
決め方の順序は1つだけです。増やす理由を思いついたら、それが上に挙げた5つの境界のどれかに当てはまるかを先に確かめてください。当てはまらないなら、必要なのは新しいアカウントではなく、いま持っているアカウントの置き場所を決め直すことです。
よくある質問
Googleアカウントは何個まで作れますか?
作成できる総数について、Googleは具体的な上限を公開していません。実務で先に限界が来るのは作れる数ではなく、2段階認証の管理と受信箱を見る頻度が追いつく範囲です。直近1か月に1度も開いていないアカウントがあるなら、その時点で運用できる数を超えています。
アカウントを分けずに、別の名前でメールを送ることはできますか?
できます。別のアドレスから送信する設定を使えば、1つのアカウントのまま送信元の名義を変えられます。ただしエイリアスはGoogleアカウントそのものではないため、代理人を追加することはできません。受信箱の操作を人に任せたい場合は委任の仕組みを使います。
複数のアカウントにログインしていると、なぜ意図しないほうで開くのですか?
Googleがどのアカウントで開くべきか判断できない場面があり、その場合は最初にログインしたアカウントの設定が適用されるためです。URLに含まれる番号もログインの順で決まるので、途中で1つログアウトすると、ブックマークしておいた画面が別のアカウントで開きます。
仕事用のアカウントと個人用のアカウントは、必ず分けるべきですか?
支払いの主体、ファイルの所有権、共有時に相手へ見える名義、組織の管理権のいずれかが違うなら分けてください。逆に、これらがすべて同じで「気分の問題」で分けている場合は、切り替えの手間と2段階認証の管理だけが増えます。