Arcの代わりがうまくいかないとき|確かめる順番

Arcの代わりを入れてみたものの、思ったように動かない。通知が来ない、あるいは同じ通知が2回鳴る。朝になるとサインインし直しを求められる。ファンが回り続ける。リンクを押すと見当違いの場所で開く。この手の詰まりは、製品の出来が悪いから起きているとは限らない。移行の途中では、macOSの設定、道具側の設定、サービス側の制限という3つの層が同時に絡むため、どこを触ればよいのか分からなくなるだけのことが多い。ここでは、症状ごとに見る順番を決めて、最短で原因の層にたどり着く手順を並べる。

詰まりは3つの層のどこかで起きている

原因を探すとき、いきなり道具の設定画面を開くのは効率が悪い。先に層を決める。

  • macOSの層。通知の許可、集中モード、ログイン項目、省電力の設定、アクセス権限。ここが原因のときは、どの道具に替えても同じ症状が出る
  • 道具の層。アプリの追加方法、区画の作り方、常駐の設定、拡張機能の扱い。ここが原因のときは、別の製品では起きない
  • サービスの層。GoogleやSlackなど、開いている側が課している制限。ここが原因のときは、同じサービスだけで起きて他は正常に動く

判定は簡単だ。同じ症状が複数のサービスで出ているならmacOSか道具の層、1つのサービスだけで出ているならサービスの層を先に見る。そして、以前使っていた環境でも同じ症状が出るかを1回試す。出るならmacOSの層で確定する。この2つの質問だけで、探す範囲は3分の1に縮む。

通知が来ない、あるいは同じ通知が2回鳴る

移行直後にいちばん多いのがこれだ。順番に見る。

最初にmacOSの通知許可。新しいアプリは、インストールした直後に通知の許可を1回だけ聞いてくる。その場で許可しなかった場合、以後は聞かれない。システム設定の通知の一覧に当該アプリが並んでいるか、並んでいるとして許可が入っているかを確かめる。macOSの通知の扱いについてはAppleサポートに各バージョンの手順がある。

次に集中モード。仕事の時間帯だけ集中モードが自動で入る設定にしている場合、新しく入れたアプリは許可リストに入っていない。前の環境では許可済みだったので、切り替えた瞬間に通知が消える。この場合、症状は時間帯に連動して出たり消えたりする。

通知が二重に鳴るときは逆の話で、前の環境がまだ動いている。以前使っていたブラウザで同じサービスのタブが開いたままだと、両方が鳴る。前の環境のタブを閉じるか、通知を切る。

サービス側の設定も見る。Webアプリは、ブラウザの通知許可とサービス内部の通知設定の2段構えになっているものが多い。新しい環境ではCookieが別なので、サービス内部の設定は初期値に戻っている。Slackのヘルプのように、サービスごとの通知設定の場所を確かめておくと早い。

サインインが続かない、サインイン自体が弾かれる

朝になるとログインし直しになる場合、まず疑うのはCookieの保存設定だ。終了時にCookieを消す設定が入っていると、常駐する道具では毎回サインインからやり直しになる。次に、道具側が区画ごとにデータを分けている場合、どの区画で開いたかによってログイン状態が変わる。同じサービスを2つの区画に置いていると、片方だけログイン済みという状態になり、日によって症状が違うように見える。

サインイン画面から先に進めない場合は、サービスの層になる。Googleは、サインインを許可しないブラウザの条件を公開している。

To help protect your account, Google doesn't let you sign in from some browsers. Google might stop sign-ins from browsers that: Don't support JavaScript or have JavaScript turned off. Have unsecure or unsupported extensions added. Are being controlled through software automation rather than a human. Are embedded in a different application. 出典: support.google.com

最後の条件が、アプリの中にWebの画面を埋め込む型の道具に関係する。弾かれた場合の回避は、その道具が標準のブラウザと同じ枠組みで画面を出しているかどうかで変わる。Chromiumをそのまま使っている製品では、この条件に当たること自体がまれだ。検討中の道具が何を土台にしているかは、できることの説明ページで確かめられる。

動作が重い、ファンが回り続ける

常駐するアプリの数だけメモリを使う設計なので、数が増えれば重くなる。ここで効くのは、使っていないアプリを休ませる仕組みがあるかどうかだ。オープンソースの製品でも、この仕組みは標準で持っているものがある。

Ferdium will hibernate services to save resources to prevent computer slow downs. 出典: ferdium.org

休止の仕組みがある製品では、休止までの時間を設定できることが多い。初期値が長いと、開いたまま忘れたアプリがずっと動き続ける。15分程度に縮めるだけで、体感はかなり変わる。

それでも重い場合は、数を疑う。常駐させるアプリを15個以上並べている場合、道具の設定では解けない。毎日開くものだけを常駐させ、週に数回しか開かないものは通常のタブに戻す。この線引きをすると、常駐は8個前後に収まることが多い。

拡張機能も見る。前の環境から拡張機能を全部移していると、常駐するアプリの数だけ拡張機能が走る構成になり、負荷が掛け算になる。移行のときは、拡張機能をいったんゼロにして、必要になったものだけ戻すほうが結果的に速い。

リンクが思っていない場所で開く

メールやチャットのリンクを押したとき、前の環境が開いてしまう。これは既定のブラウザの設定がmacOS側に残っているためだ。システム設定のデスクトップとDockにある既定のWebブラウザの項目を確認する。

厄介なのは、既定を新しい道具にしたあとに起きる逆の症状だ。常駐型の道具を既定にすると、調べ物のリンクまでその道具の中で開き、一時的なタブが常駐の画面に混ざる。多くの人はここで使いにくさを感じる。役割を分けるほうが素直で、既定のブラウザは調べ物用の普通のブラウザにしたまま、常駐する仕事道具だけを別の道具に置く形にすると、混ざらなくなる。

道具の側にも、リンクをどこで開くかの設定がある製品が多い。アプリの中のリンクを外側のブラウザで開く、という設定を入れると、この問題は片付く。設定項目の名前は製品ごとに違うので、各製品のよくある質問にある記述を確かめるのが早い。

会議で画面共有やカメラが使えない

ビデオ会議を常駐の枠の中で開いていると、画面共有やカメラが動かないことがある。これはmacOSの権限の層だ。画面収録とカメラ、マイクの権限は、アプリ単位で許可する仕組みになっている。新しく入れた道具は、前の環境が持っていた許可を引き継がない。

システム設定のプライバシーとセキュリティで、画面収録、カメラ、マイクの3つに新しいアプリが入っているかを確認する。許可を与えた直後はアプリの再起動が必要になることが多く、再起動しないまま「動かない」と判断してしまう例が多い。

それでも動かない場合は、会議サービス側が特定のブラウザしか対応していない可能性がある。この場合は無理に常駐の枠に入れず、会議のときだけ対応しているブラウザで開く運用にしたほうが安全だ。毎日の会議が止まるリスクを、道具の統一のために負う理由はない。

ショートカットが効かない、指が前の操作を覚えている

不具合として報告されがちだが、実際には割り当ての違いであることが多いのがショートカットだ。前の環境でタブの切り替えに使っていたキーが、新しい道具では別の機能に割り当てられている。押した瞬間に想定外の動作が起きるため、故障のように見える。

確かめる順番は、まず道具側のキー設定の一覧を開くこと。多くの製品は割り当ての変更に対応しており、前と同じ配置に寄せられる。次に、macOSのシステム設定にあるキーボードショートカットと衝突していないかを見る。画面の切り替えや入力ソースの変更に同じ組み合わせが割り当てられていると、macOSの側が先に受け取ってしまい、アプリまで届かない。この場合、どの製品に替えても同じ症状が出る。

最後に、日本語入力の状態を疑う。入力が変換中のとき、アプリによってはキーの受け取り方が変わる。特定の場面でだけ効かないという症状は、この線であることが多い。移行の初日にキーの配置を前と揃えておくと、こうした切り分けをする回数そのものが減る。

参考にしている手順が、もう古い可能性を疑う

うまくいかない原因が自分の設定ではなく、参考にしている情報のほうにある場合がある。この分野は入れ替わりが速く、数年前の記事に載っている製品が、いまは別のものになっていることがある。

一例として、かつてこの分野で名前の挙がったSidekickというブラウザの公式ドメインは、現在アクセスするとPerplexityのCometというブラウザの案内ページに転送される。旧来の製品名で検索して出てきた手順をそのまま試しても、画面が一致しないのはこのためだ。製品の現状を確かめるときは、記事の日付より先に、公式ドメインを実際に開いて何が表示されるかを見るのが確実になる。比較の資料を読む場合も、Sidekickとの比較のように個別に条件を並べた資料であれば、どの時点の情報かを追いやすい。

同じ理由で、ショートカットキーの一覧や設定画面の名称も、記事の内容と実際がずれていることがある。設定項目が見つからないときは、自分の探し方を疑う前に、参照している情報の時点を疑うほうが早い。

詰まりの出方から見える、移行の進め方

ここまでの症状を層で分けると、macOSの層が原因のものは通知、権限、既定ブラウザの3つに集中している。いずれも、道具を替えても再発する種類の詰まりだ。逆に言えば、この3つを移行の初日に一度だけ片付けておけば、その後に出る症状は道具かサービスの層に絞られる。原因探しの範囲が最初から狭くなる。

進め方としては、初日に全部を移さないことが効く。常駐させるアプリを3つだけ選んで移し、通知と権限をその3つで通しておく。ここで出た詰まりは、アプリの数が少ないので原因が特定しやすい。1週間動かして問題がなければ、残りを足す。一度に10個移して同時に3種類の症状が出ると、どれがどの原因か分からなくなり、結局前の環境に戻すことになる。

もう1つ、記録を残しておくと問い合わせが速く済む。症状が出た日時、開いていたサービス名、そのとき同じ症状が他のサービスでも出ていたかどうか。この3点があれば、サポートに投げたときのやり取りが1往復で済むことが多い。逆に「通知が来ません」だけでは、相手も層の切り分けから始めることになる。ログの取得や設定の書き出しを自分で行いたい場合は、ターミナルのような機能を持つ製品であれば、状況の記録までその中で完結できる。

よくある質問

通知が来ない原因を、最初にどこから見ればよいですか?

macOSのシステム設定の通知一覧に、そのアプリが並んでいて許可が入っているかを最初に見てください。次に集中モードの許可リスト、最後にサービス内部の通知設定です。新しい環境ではCookieが別になるため、サービス側の通知設定は初期値に戻っていることがあります。

複数のサービスで同じ症状が出ています。道具の問題でしょうか?

複数のサービスにまたがる症状は、道具かmacOSの層である可能性が高いです。前に使っていた環境でも同じ症状が出るか1回試してください。出るならmacOSの設定、出ないなら道具の設定に原因があると切り分けられます。

動作が重いときは何を減らせばよいですか?

常駐させているアプリの数と拡張機能の数です。毎日開くものだけを常駐させ、週に数回のものは通常のタブに戻すと、常駐は8個前後に収まることが多くなります。使っていないアプリを休止させる設定があれば、休止までの時間を短くするのも効きます。

サインイン画面から先に進めない場合はどうすればよいですか?

Googleは、別のアプリに埋め込まれたブラウザやJavaScriptが無効な環境からのサインインを止める場合があると公開しています。この条件に当たっている可能性があるため、その道具が何を土台にして画面を出しているかを確かめてください。標準のブラウザで同じ操作が通るかどうかも、切り分けの材料になります。

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