Shiftブラウザの代わりになるもの|手放してよい機能
Shiftブラウザの代わりを探し始めるきっかけは、たいてい機能の不満ではない。無料で使える数の上限に当たった、請求の金額が想像と違った、あるいは画面の作りが急に変わった。どれも「この道具が自分に何をしてくれていたのか」を言葉にしないまま起きる出来事で、その状態で乗り換え先を選ぶと、同じ不満をそのまま新しい道具に持ち込むことになる。この記事では、Shiftブラウザが実際に引き受けている仕事を4つに分け、そのうち何を手放してよくて何を手放せないのかを、公開されている条件の数字に沿って切り分ける。
代替を探す前に、この道具が引き受けている仕事を4つに分ける
アプリ集約ブラウザと呼ばれる道具は、見た目こそ似ているが、中では性質の違う仕事を同時に引き受けている。まとめて1つの製品として見ているうちは、代わりの候補を正しく比べられない。
1つ目は、Webアプリの集約だ。GmailやSlackやNotionを、タブではなく常設の置き場所として持つ。公式のヘルプによればShiftに統合できるアプリは1,500を超える。ここで効いているのは数そのものではなく、毎日開くものが決まった位置にあるという性質になる。
2つ目は、同じサービスを別のアカウントで同時に開くことだ。仕事のGmailと個人のGmail、会社のSlackと副業のSlack。これはCookieの保管場所を分ける話で、並べ方をどれだけ工夫しても代わりにならない。Shiftではこれを Spaces という単位で扱う。
3つ目は、画面の組み立てだ。新しい版のShiftは Browser Builder という仕組みを持っていて、バー・アプリ・操作系をドラッグで好きな位置に置ける。テンプレートから始めることもできる。
4つ目は、ブラウザとしての土台だ。Chromiumを基にしているため拡張機能がほぼそのまま動き、ダウンロードの事前走査や組み込みのAIが乗っている。
この4つは、代替を考えるときの重みがまったく違う。2つ目だけは他の手段への置き換えが難しく、1つ目と3つ目は慣れの問題で、4つ目は土台が同じなら大半が引き継げる。
いま公式に書かれている条件を、数字で押さえる
代替の検討は、いま払っている条件を正確に知るところから始まる。ここが曖昧なまま比べると、安く見えたほうへ動いて後で戻ることになる。
公式の料金ページに出ている条件は次の通りだ。無料の Free プランは 5 Spaces、1つの Space につきアプリは 10 個まで。Browser Builder とテンプレートは無料でも使え、組み込みAIは利用量に制限が付く。有料の Advanced は年払いで $199.99、月払いなら $19.99 で、年払いにすると $40 分安くなる。Advanced では Spaces もアプリ数も上限が外れ、サポートにビデオ通話が付く。
ここで注意が要るのは、同じサイトのFAQページには別の数字が残っている点だ。そちらには無料枠が2つの Space と1つの Space につきアプリ5個、Advanced が年 $149.00 と書かれている。どちらかが誤りというより、記述の対象が違う。Shiftは従来の v9 から新しい Shift browser へ移行の途中にあり、ヘルプの一部は前の版の条件のまま残っている。自分に当てはまるのがどちらかは、手元の版を確かめないと決まらない。
契約まわりの条件も、代替の判断材料になる。1つのサブスクリプションで使えるアカウントは1つで、複数の端末で使う場合は同じアカウントでサインインし、同期を有効にする形になる。返金は購入日または更新日から 14 日以内の申請が対象。学生・教職員・非営利団体には 30% の割引が用意されている。チーム向けの契約は請求の一本化と管理画面が付き、価格は問い合わせになる。
動作条件も見ておく。対応はWindows 10と11、およびMac。macOSは 11 Big Sur以降が必要で、メモリは 8GB 以上が推奨されている。
Shift is available on desktop for Windows 10 and 11, as well as Mac. We recommend you have at least 8GB of RAM on your computer for Shift to run smoothly. At this time, macOS 11 Big Sur or newer is required to run Shift. 出典: tryshift.com
古いMacを使い続けている場合、代替を探す理由がそもそも料金ではなく対応OSだった、という結論になることもある。
手放してよい機能と、手放すと困る機能
4つの仕事のうち、どれを手放せるかは人によって違う。ただし判断の順番は共通していて、置き換えの効く機能から先に外していくと、最後に本当の条件が残る。
手放しても代わりが利きやすいのは次のものだ。
- テンプレートと色テーマ。見た目の初期設定であって、作業の成否を分ける要素ではない
- 組み込みのAI。ブラウザの外にある同じ用途の道具で代用できる。無料枠では利用量に制限があるため、そもそも常用していない人も多い
- カーボンメーターのような計測系。判断材料としては面白いが、無いと仕事が止まる種類の機能ではない
- ドラッグでの細かな配置換え。毎日動かすものではなく、最初の1回で決まる
逆に、手放すと日々の手数が増えるのは次のものになる。
- 同じサービスを別アカウントで同時に開く仕組み。代わりにブラウザのプロファイルを使うと、窓の数が増え、切り替えの行き先が分かりにくくなる
- アプリが常設の位置にあること。タブに戻した瞬間、探す時間が戻ってくる
- 拡張機能が使えること。パスワード管理や広告のフィルタを日常的に使っているなら、これが無い道具は候補から外れる
- 通知の出どころが分かること。どのアカウント宛の通知かが分からないと、確認のためだけの切り替えが発生する
アプリごとに独立したワークスペースという考え方に照らすと、残るのは「身分の分離」と「置き場所の固定」の2つで、それ以外は装飾に近い。代替を選ぶときは、この2つを満たすかどうかだけを最初に見ればよい。
同じ発想の道具を、価格と無料枠の条件で並べる
候補になりやすいのは、同じくWebアプリを1つの窓にまとめる系統の道具と、ブラウザのプロファイルをそのまま使う方法だ。公開されている条件を並べると次のようになる。
| 道具 | 無料でできること | 有料の価格 | 補足 |
|---|---|---|---|
| Shift | 5 Spaces、1 Spaceにつきアプリ10個 | Advanced 年199.99ドル / 月19.99ドル | Windows 10と11、Mac。返金は14日以内 |
| Wavebox | 2グループ、各グループにアプリ2個、拡張1個 | Pro 月8.33ドル(年払い)、Teams 月12.50ドル/人 | 7日間のPro試用、30日間の返金保証 |
| Rambox | アプリ数は無制限、1アプリにつき2インスタンスまで | Pro 月7ドル / 年70ドル、Teams 月14ドル/人(5人から) | 30日間のPro試用、クレジットカード不要 |
| Ferdium | 制限なし(オープンソース) | 無料 | アカウント不要で使える。同期はアカウントを作った場合 |
| ブラウザのプロファイル | 制限なし | 無料 | 窓が身分の数だけ増える |
同じ「無料プランあり」でも、数え方の単位が違う点に注意が要る。Shiftは Space の数とその中のアプリ数の掛け算で上限が決まる。Waveboxはグループとアプリの両方が少なく、拡張機能の数にも制限がある。Ramboxはアプリの数を制限せず、同じアプリを何個の別アカウントで開けるかで線を引いている。つまり「同じサービスを3アカウントで使いたい」人にとって、Ramboxの無料枠は上限に当たりやすく、逆に「20種類のサービスを1アカウントずつ使いたい」人にはShiftの無料枠のほうが先に足りなくなる。
自分がどちらの形かは、身分の数とサービスの数を紙に書き出せば1分で分かる。書き出さずに試用版を入れると、たいてい最初の30分は配置換えに消える。
終了・移行・運営会社の変化も、条件として数える
ツールを選ぶときに見落とされやすいのが、その製品が今どの段階にあるかだ。料金は据え置きでも、前提が変わっていることがある。
Shiftについては、公式のヘルプに v9 への大きな製品更新は今後行わない旨が書かれている。新しい Shift browser は既存の利用者に順次展開され、その際に Spaces・アプリ・ブックマークが引き継がれる。待たずに自分で新しい版を入れることもできるが、その場合は引き継ぎのない状態から作り直しになる。早めに移る場合は、現在の主たるメールアドレスでサインインすると有料の機能が引き継がれる。
同じ系統の製品では、より大きな変化も起きている。Sidekickの公式サイトだった meetsidekick.com は、2026年9月時点でアクセスすると comet.perplexity.ai へ転送され、最終的にPerplexityのComet の案内ページに着く。製品名で検索して出てきたページが、別の製品の案内に変わっている状態だ。候補に挙げた製品については、配布ページが今も自分の製品を配っているかを一度踏んで確かめておくと、乗り換え先で同じ話を繰り返さずに済む。
運営の形も確認の対象になる。ShiftはRedbrickという企業グループのポートフォリオに属し、B Corp認証を受けていることを自社サイトに明記している。Waveboxは英国で開発され、ベンチャー資本を入れていないことを公表している。Ferdiumはコミュニティが開発するオープンソースで、公式ドメインは1つだけだと注意書きを出している。どれが良い悪いの話ではなく、更新が止まったときに誰に聞けるのかが変わる。
数えてから決めると、乗り換えは1回で済む
代替の検討は、比較表を眺める作業ではなく、自分の使い方を数える作業になる。順番は3つだ。
最初に、身分を数える。会社の自分、個人の自分、取引先ごとの自分。この一覧は、たいてい今作ってある Space の数より短くなる。終わった案件の置き場所が残っているためだ。
次に、毎日開くサービスと月に数回しか開かないサービスを分ける。常設の位置が要るのは前者だけで、後者は普通のタブで足りる。この仕分けをすると、無料枠に収まるかどうかの答えがそのまま出る。
最後に、譲れない条件を2つまでに絞る。拡張機能が要るのか、同じサービスの3アカウント同時が要るのか、対応OSが古いMacでも動くことなのか。3つ以上並べると、どの候補も外れる。
サービス単位ではなく案件単位でまとめる考え方はワークスペースにまとめてある。どこまでをブラウザの機能として窓の中に持ち込み、何を持ち込まないのかという線引きはできることで整理している。ターミナルを同じ窓の中に置いて開発の作業とWebアプリを往復する形はターミナルにあり、開発が主な人はここが分かれ目になる。
価格帯と無料枠の考え方の違いを横に置いて見たい場合はWaveboxとの比較、同じ発想でアカウント数を軸に線を引く道具との違いはRamboxとの比較、無料のオープンソースとの線引きはFerdiumとの比較が参考になる。Shift自体との違いを1対1で見たい場合はShiftとの比較、費用から先に判断したい場合は料金、導入前に迷いやすい点はよくある質問にまとまっている。使えるサービスの範囲が条件になる人は使えるアプリを先に見ておくと、比較の順番を間違えにくい。
数えた結果、いまの無料枠で足りているなら、代替を探す必要はそもそも無い。足りていないなら、足りない理由が身分の数なのかサービスの数なのかで、選ぶ道具が変わる。その1問に答えるところまでが、乗り換えの本体になる。
よくある質問
Shiftの無料プランはどこまで使えますか?
公式の料金ページによると、無料の Free プランでは5つの Space を作れ、1つの Space につきアプリを10個まで置けます。テンプレートと画面の組み立て機能は無料でも使え、組み込みAIは利用量に制限が付きます。ヘルプページには2 Spaceと5アプリという古い記述も残っているため、手元の版がどちらかを確認してから判断してください。
有料版の料金と返金の条件を教えてください?
Shift Advanced は年払いで199.99ドル、月払いで19.99ドルです。年払いにすると40ドル分安くなります。返金は購入日または更新日から14日以内の申請が対象で、アカウント画面またはサポートへの連絡で手続きします。アンインストールしただけでは解約にならないため、課金を止めるには解約の操作が別に必要です。
代わりの候補は無料のものだけで足りますか?
同じサービスを別アカウントで同時に開く用途に限れば、オープンソースのFerdiumやブラウザのプロファイルでも形は作れます。差が出るのは、通知の出どころが分かるか、拡張機能が使えるか、端末をまたいで設定が揃うかという部分です。毎日何十回も切り替える使い方をしているなら、この差が費用より先に効いてきます。
乗り換えるときに最初にやることは何ですか?
新しい道具を入れる前に、ブックマークとパスワードを書き出しておくことです。Chromiumを基にしたブラウザはブックマークをHTML、パスワードをCSVで書き出せ、同じ系統のブラウザにそのまま取り込めます。先に書き出しておくと、古い環境を1週間ほど残したまま並行して試せるため、移行を一度に終わらせる必要がなくなります。