ブラウザのタブを開きすぎる人の性格と、その先の直し方
タブの数が40を超えて、アイコンが細い線になっている。どれも理由があって開いたはずなのに、その理由がもう見えない。この状態を説明する言葉として、好奇心が強い、完璧主義、心配性、決断が遅い、といった性格の話がよく出てくる。当たっている部分はある。ただ、性格の名前が分かっても、次にどのタブを閉じればよいかは決まらない。手が動くのは、開いているタブが実は4種類の別物であり、そのうち1種類だけが本来タブであるべきではなかった、と気づいたときになる。
性格で説明される4つの傾向
日本語で検索すると、タブを開きすぎる人はだいたい4つの型で説明されている。新しい情報が目に入るたびに開いてしまう好奇心の型。全部そろえてから判断したい完璧主義の型。見落としが怖くて閉じられない不安の型。閉じるかどうかの判断を後回しにする先延ばしの型。
この4つは実感に合う。同じ日に同じブラウザを使っていても、人によってタブの数が10と60に分かれる理由は、たしかにこのあたりにある。
役に立たなくなるのは、そこから先になる。気質は火曜日の午後に変えられるものではない。変えられるのはタブバーのほうになる。興味を引いたリンクを開いてしまう人はこれからも開く。問うべきことは、その開いたページがメールやチャットと同じ列に並ぶのか、別の場所に積まれるのかだけになる。判断を後回しにする人も後回しにし続ける。効くのは「決断力を持とう」という決意ではなく、比較の候補を3行のメモに書き出す作業になる。
もう1つ、型で語ると見落とされる点がある。タブの数が多い仕事は、複数の資料を突き合わせて結論を出す仕事であることが多い。1つの問いに答えるために8枚開いている人は、たいてい丁寧に仕事をしている。それを性格の欠点として扱うのは、道具の側の問題を人の側に付け替えていることになる。
研究が指摘したのは「閉じたら二度と戻らない」不安
この行動については、カーネギーメロン大学の研究チームが2021年のCHIという学会で発表した「When the Tab Comes Due」という論文がよく引かれている。情報を扱う仕事の人に聞き取りをして、2週間にわたって開いているタブを1枚ずつたどり、そのうえで人数を増やしたアンケートを行っている。大学の紹介記事によると、調査の一部では参加者の約25%が、タブを開きすぎてブラウザかパソコンが落ちた経験があると答えている。
注目すべきなのは落ちた割合のほうではない。本人が嫌だと思っているのに、それでもタブが閉じられない理由のほうになる。研究チームは、視界から消えた瞬間にそれが失われると人が感じており、その怖さが強いためにタブが手に負えない数になっても開いたままにしてしまう、と説明している。
この見方に立つと、話が性格から離れる。タブを残しているのは片づけが下手だからではない。ブラウザの中に、そのページが生き続ける別の置き場が用意されていないからになる。ブックマークも履歴もリーディングリストも存在してはいるが、どれも入れたものが自分から戻ってくることはない。だから入れた瞬間に消したのと同じ感触になる。タブを開いたままにするのは、戻す仕組みを持たない道具に対する、合理的な反応ということになる。
開いたままのタブは4種類に分かれる
数の多い窓を見ていくと、タブは重なりの少ない4つの群れに分かれる。
- 毎日開くアプリのタブ。メール、チャット、カレンダー、タスク管理、ドキュメント。読んでいるのではなく住んでいる。ログイン状態と通知を抱えていて、1日の切り替えの大半がここに向かう
- 用事の代わりのタブ。経費の入力画面、返信すべきスレッド、予約の確定画面。やることリストの1行を、日付もメモも持てないタブが代役として引き受けている
- あとで読むタブ。記事、資料、動画。締切も担当者もない。静かに増えていき、たいていの窓ではここがいちばん多い
- 決めきれていないタブ。宿の候補が6枚、パソコンの比較記事が4枚、求人が3枚。これは1組で意味を持つので、1枚だけ閉じると比較そのものが壊れる。だから個別には閉じられず、ある日まとめて捨てられる
| タブの正体 | 実際に抱えているもの | 閉じたときの損失 | 本来の置き場 |
|---|---|---|---|
| 毎日開くアプリ | ログイン状態と通知 | 入り直しと通知の取りこぼし | 独立した窓 |
| 用事の代わり | 期限のない用事 | 用事そのものを忘れる | 日付の付くタスク管理 |
| あとで読む | 読むつもりの資料 | 探し直せるならほぼ無し | 見直す時間を決めた一覧 |
| 決めきれていない | 判断の途中経過 | 比較の材料 | 3行の候補メモ |
4つの群れには4つの別々の答えが要る。金曜の午後に全部閉じるやり方が続かないのは、用事の代わりのタブまで一緒に消えるからになる。月曜に抜け漏れとして返ってきて、「タブを閉じるのは危ない」という学習だけが残る。
いちばん高くつくのは毎日開くアプリのタブ
このタブは数では少数派で、負担では多数派になる。40枚のうち10枚がここに当たるとして、1日の切り替えのほとんどをその10枚が受け止めている。
調べ物のタブ30枚と同じ列に並ぶことで、この10枚には固有の損が出る。番号で目的のタブへ飛ぶショートカットが当てにならなくなる。検索結果を1枚開くだけで、それ以降の並びが全部ずれるからになる。狙う手がかりがアイコンだけになり、同じサービスの2つのアカウントはアイコンが同じになる。チャットから踏んだリンクは、そのとき手前にあるアカウントではなく、ブラウザが現在のものと見なしているアカウントで開く。Googleのアカウントの場合、それはそのセッションで最初にログインしたものになることが多い。
これらは調べ物のタブを閉じても直らない。直るのは、毎日使うアプリをタブバーから外して、それぞれに残り続ける窓を与えたときになる。窓を名前の付いた集まりとして切り替える考え方はワークスペースに、窓ごとにログイン状態が保たれる仕組みはできることに整理してある。アプリごとに独立したワークスペースを持つ道具は、この10枚だけを対象にした手当てになる。
見分け方は1つで足りる。明日の朝、何も考えずに開き直すページなら、それはアプリであって、読みかけの記事と場所を取り合うべきものではない。
読むつもりのタブは、見る時間を決めないと減らない
あとで読むタブは、先ほどの「戻ってこない不安」がいちばん強く働く場所になる。保存する道具はすでに全部そろっている。リーディングリスト、ブックマーク、あとで読む系のサービス。それでも使われないのは、入れることと消すことの手触りが同じだからになる。
足りていないのは保存先ではなく、見返す時刻のほうになる。見返す時間が決まっている一覧は、入れたものが実際に戻ってくるので、消したのと同じにはならない。金曜の午後に30分置く、カレンダーに繰り返しの予定を入れる、方法は何でもよく、大事なのはその枠が存在することだけになる。枠を作らないまま記事だけ一覧へ移すと、不安が見えない場所へ移動するだけで、しばらくするとタブが戻ってくる。
もう1つ、割り切りの強い選択肢もある。あとで読むものの大半は結局読まないと認めて、保存せずに閉じる。ウェブ上にあるものは探し直せる。この選択肢が成り立つのは、あとで読むタブが、用事の代わりのタブと違って失っても損が出ないからになる。
決めきれていないタブは、決めるまで閉じない
比較のために並べた6枚は散らかりではない。終わっていない判断の作業中の状態が、置き場所がないのでタブに乗っているだけになる。先の研究も、複数の情報源から材料を集めて突き合わせ、結論に至る種類の作業でタブが増えることを指摘している。
つまり、整理術ではこの群れは減らない。判断が終わったときに一緒に消える。止まっている判断を動かすやり方は2つある。1つは、候補と、それぞれの費用と、何が分かれば決まるのかを3行で書き出すこと。12枚が1つのメモになる。もう1つは、判断そのものに期限を付けること。結論が「今は決めない」であっても、流れで先送りするのと、決めて先送りするのとでは、タブの扱いが変わる。
再起動を3回またいで生き残っている比較のタブがあるなら、その判断は材料不足で止まっているのではない可能性が高い。
一気に閉じるやり方が長続きしない理由
タブが増えるたびに試される対処が2つある。全部閉じる方法と、全部ブックマークに放り込む方法になる。どちらもその日は数が減り、1週間から2週間で元に戻る。
理由は群れの内訳にある。40枚のうち、失っても損の出ないタブは、あとで読む群れだけになる。用事の代わりのタブを一緒に閉じると、その用事は誰の手にも残らないので、月曜に抜け漏れとして表に出る。決めきれていないタブを一緒に閉じると、集めた比較の材料が消えるので、同じ判断をもう一度最初から始めることになる。毎日開くアプリのタブを閉じると、翌朝に入り直しから始まる。つまり一括の操作は、いちばん安いものといちばん高いものを同じ扱いにしている。
しかも失敗の記憶は残る。一度これをやると「タブは閉じないほうが安全だ」という学習が働き、次からはさらに閉じづらくなる。数を減らす操作が、長い目では数を増やす方向に効いてしまう。
順番を逆にすると事故が起きない。先に毎日開くアプリを窓へ移し、次に用事の代わりのタブを日付の付く場所へ移し、決めきれていないタブは3行のメモにしてから閉じる。ここまで済ませてから残りを一括で閉じると、閉じた結果に痛みが出ない。作業としては1回で30分から1時間ほどで、やり直しが起きにくいのはこの順番のときになる。
ブラウザ側は「たくさん開いたまま」を前提に作り替えている
タブが増えることを、ブラウザの作り手はすでに前提として受け入れている。Chromeの設定にはメモリセーバーがあり、しばらく使っていないタブを無効にして、戻ったときに読み込み直す。
パソコンのメモリを節約して、アクティブなタブがスムーズに動作するよう、使用していないタブを無効にします。アクティブでないタブにアクセスすると、自動的に再読み込みされます。 出典: support.google.com
同じ設定では、無効にするまでの長さを「適度」「バランス重視」「最大」から選べるようになっている。音声や動画を再生しているタブ、画面共有中のタブ、入力途中のフォームがあるタブなどは対象から外れる。
これは60枚開いたままのノートパソコンを実用的な速度に保つ改善であり、実際に効いている。ただし解いている問題が違う。メールのタブと読みかけの記事が、同じ大きさで同じ列に並んでいる事実は変わらない。CPUとメモリが尽きるのと、人の注意が尽きるのは別々に起きる。数を見て気が重くなるのは後者のほうになる。
手を付ける順番を決める
ここまでを踏まえると、動かす対象は1つに絞れる。明日の朝、何も考えずに開き直すタブを数えてみる。多くの場合その数は6から12のあいだに収まる。この群れだけがタブバーに置くべきではなかったもので、残りは正直にただの待ち行列になる。
その6から12に窓と名前を与えると、残りのタブの意味が変わる。読むつもりのものは読むつもりの一覧として、決めきれていないものは決めていない判断として、それぞれ別の扱いができるようになる。窓を分ける道具で何ができるようになるかはできることに、どのサービスがそのまま入るかは使えるアプリに、費用の目安は料金に書いてある。
性格を変える必要はない。変えるのは、明日も開くページの置き場所だけになる。
よくある質問
タブを開きすぎるのは性格の問題ですか?
数の多さには気質が関係します。ただし研究では、閉じられない主な理由として、視界から消えたものは失われると感じる不安が挙げられています。これはブラウザに「入れたものが自分から戻ってくる置き場」が無いことへの反応なので、道具の側で戻る仕組みを作ると、性格が変わらなくても行動は変わります。
タブを開きすぎるとMacに悪いですか?
メモリを使います。カーネギーメロン大学の調査では、一部の参加者のうち約25%が、タブの開きすぎでブラウザかパソコンが落ちた経験があると答えています。Chromeのメモリセーバーは使っていないタブを無効にしてこの負担を下げます。機械側の負担は設定で軽くできますが、注意が散る問題は設定では変わりません。
タブグループと、アプリごとに窓を分けるのは何が違いますか?
タブグループは1つの窓と1つのプロファイルの中でタブをまとめる仕組みなので、まとめたタブもCookieとログイン状態を他のタブと共有します。アプリごとに窓を分ける道具では、窓ごとにログイン状態が保たれるため、同じサービスの2つのアカウントを同時に開いたままにできます。
あとで読む記事はどこに置くのがよいですか?
見返す時刻が決まっている場所ならどこでも構いません。リーディングリストでもメモでもあとで読む系のサービスでも動きます。逆に、繰り返しの予定など「実際に開く時間」を決めないと、どこに入れても消したのと同じ感触になり、しばらくするとタブとして戻ってきます。