chrome profile syncで移るものと、端末に残るもの
新しいMacにChromeを入れて、前と同じアカウントでログインする。1分もしないうちにブックマークが戻り、拡張機能が勝手に入り始める。ブラウザごと引っ越せたように見える。ところが最初の仕事のタブを開いた瞬間、パスワードを聞かれる。次のタブでも聞かれる。
すぐ戻ってくるものと、手で入れ直すものの線引きは、不具合でも同期の失敗でもない。chrome profile syncという機能の設計上の境界になる。この線がどこに引かれているかを知っていると、2台目の準備にどれだけ時間がかかるのかを、始める前に見積もれる。
ログインと同期は別のスイッチになる
Chromeの中でGmailにログインすることと、Chromeそのものにログインすることは別の行為になる。前者はそのサイトに対する認証で、それだけではブックマークもパスワードもアカウントには送られない。
もう1つのスイッチが同期になる。プロファイルのメニューか設定画面から入れるもので、端末の外にデータが出るかどうかを決めているのはこちらになる。アカウントのアイコンが右上に出ていても、同期が入っていなければ、すべてはそのMacの中にとどまっている。
逆向きの誤解も多い。Chromeからログアウトしても、プロファイルのフォルダは消えない。ヘルプはこの動きを1文で説明している。
Chrome からログアウトすると、情報は Google アカウントに安全に保存され、デバイスからは削除されます。 出典: support.google.com
読み方に注意したい。ログアウトはアカウント側の片付けにはならず、プロファイルの削除は端末側の片付けにしかならない。保存先は2つあり、1回の操作はどちらか片方にしか届かない。
アカウントに保存されるもの
ヘルプに並んでいるのは、ブックマーク、リーディングリスト、パスワード、お支払い情報、住所などの情報、拡張機能、ウェブアプリ、設定になる。履歴と開いているタブは別のスイッチで、これだけを個別にオンにする形になっている。ブックマークは全部あるのに履歴だけ来ない、という状態はここで説明がつく。
いちばん誤解されているのが拡張機能になる。同期が運ぶのは「何が入っているか」の一覧であって、その拡張機能が保存したデータではない。新しい端末では、一覧に従ってストアから改めてダウンロードされ、中身は空の状態で立ち上がる。ライセンスの登録も、拡張機能の中でのログインも、保存した項目も引き継がれない。
設定の同期も、思っているより粒度が粗い。検索エンジンや起動時のページのような、プロファイル全体に関わる設定は運ばれる。一方で、この拡張機能をシークレットウィンドウで許可するかどうかのような、その端末のインストール状態に紐づく項目は運ばれない。
端末に残るもの
2台目の準備にかかる時間を決めているのは、この側になる。
Cookieとログインのセッションは同期されない。サイトがログイン状態を保っているのは、プロファイルのフォルダにあるCookieによるもので、これは作られた端末から出ない。同じアカウントで新しいプロファイルを作っても、あらゆるサイトからログアウトした状態で始まる。同期に失望する場面のほとんどは、この一点に集約される。
ローカルストレージやオフライン用のデータベースも残る。下書きを端末側に持つWebアプリ、送信待ちのメッセージ、オフラインで開ける資料は、新しい端末では空になる。開いていた窓の配置も引き継がれない。別の端末のタブ一覧は見えても、並べ方そのものは移らない。
| 項目 | アカウントに届くか | 補足 |
|---|---|---|
| ブックマーク、リーディングリスト | 届く | ログイン直後に戻る |
| パスワード、お支払い情報、住所 | 届く | お支払い情報と住所はパスフレーズの対象外 |
| 拡張機能の一覧 | 届く | 中身は空で入り直す |
| 検索エンジン、起動ページなどの設定 | 届く | 端末固有の項目は含まない |
| 履歴、開いているタブ | 別のスイッチ | 個別にオンにする必要がある |
| Cookie、ログイン状態 | 届かない | 新しい端末では全サイトで入り直す |
| ローカルストレージ、オフラインデータ | 届かない | 下書きや送信待ちは移らない |
| 窓とタブの配置 | 届かない | 一覧は見えるが並びは移らない |
同期はプロファイル単位で効く
同期の対象は、プロファイルとGoogleアカウントの組み合わせになる。1台のMacに3つのプロファイルがあり、それぞれ別のアカウントでログインしていれば、3組の同期が互いに無関係に動く。
ここから、よくある行き違いが生まれる。仕事用のプロファイルで保存したブックマークは、同じMacの個人用のプロファイルには出てこない。両者の距離は、別のパソコン同士と変わらない。同じMacの中で移したいときも、書き出しと読み込みを通すか、両方を同じアカウントでログインさせるしかない。後者はプロファイルを分けた理由を打ち消すことになる。
裏を返すと、復旧の単位は端末ではなくアカウントになる。壊れたプロファイルを直すより、新しく作って同じアカウントでログインする方が早い場面が多い。同期の対象は戻り、対象外は戻らない。作り直しが速く感じられ、その後の1日が長く感じられるのはこのためになる。
いま同期しているかを確かめる
同期についての思い込みは、たいてい同じ方向に外れる。オンだと思っていたものが、何か月も前から止まっている。確認できる場所は3つある。
1つ目は、Chromeの設定にあるアカウントのページになる。区分ごとにスイッチが並んでいて、履歴とタブが別扱いになっていることも、パスフレーズが設定されているかどうかも、ここで分かる。
2つ目は、Googleアカウント側のダッシュボードにあるChromeのデータの欄になる。アカウントが実際に何をいくつ持っているかが見える。端末のブックマークの数と突き合わせれば、送れていないのか受け取れていないのかが切り分けられる。
3つ目はchrome://sync-internalsになる。開発者向けの詳細な画面だが、上部の要約だけで、同期が動いているのか一時停止しているのかが分かる。
見落としやすいのが、この一時停止の状態になる。アカウントのセッションが切れると同期は止まるが、ブラウザは普通に動き続ける。表示の変化はアイコンに付く小さな印1つだけで、警告は出ない。数週間分のブックマークが、本人がバックアップされていると思っているプロファイルの中だけに溜まる。ログインし直せば送信が再開され、ダッシュボードの件数が急に増える。
パスフレーズを設定する前に
Chromeには、同期するデータを暗号化してGoogleに読ませない、任意のパスフレーズがある。選択肢としては妥当だが、設定したあとより前に知っておいた方がよい条件がいくつかある。
新しい端末ではパスフレーズの入力が必要になり、すでにログインしている端末でも求められる。保存したパスワードをパスワード管理のサイトから確認できなくなる。履歴の同期はアドレスバーに入力したURLだけに限られる。お支払い情報と住所は、そもそもパスフレーズの対象外になる。
変更するときの影響も小さくない。
パスフレーズを変更すると、そのパスフレーズで暗号化されたデータが Google のサーバーから削除され、ログインしているすべてのデバイスからログアウトされます。 出典: support.google.com
パスワードを失わないために、変更の前に書き出し、あとで読み込み直す手順がヘルプに用意されている。会社が管理している端末では、この選択自体が管理側で決まっていることもあるため、先に確認しておきたい。
会社が管理している端末では、選べる範囲が狭くなる
勤務先が配ったMacや、会社のアカウントでログインしているプロファイルでは、同期の設定が自分の手を離れていることがある。管理者は、同期そのものを止める、特定の区分だけを対象から外す、パスフレーズの利用を禁じる、といった設定を配れる。設定画面のスイッチが灰色で押せないなら、この状態に当たっている。
どの設定が効いているかはchrome://policyで確認できる。同期に関する項目が並んでいれば、それが理由になる。ブラウザ側で切り替えられない以上、変更の判断は端末を管理している側にある。
仕事のアカウントと個人のアカウントを1つのプロファイルに同居させないのは、この観点からも意味がある。会社の管理下にあるプロファイルで個人のブックマークを同期していると、退職時のアカウント停止に個人のデータが巻き込まれる。プロファイルを分けておけば、片方が止まってももう片方は無関係でいられる。
2台目のMacを立ち上げる順番
境界が分かっていると、準備の順番も変わる。同期で戻らない側から先に手を付けるのが早い。
- 古いMacで、ログイン中のサービスと、二要素認証や端末承認が要るものを書き出す
- 新しいMacでプロファイルを作り、アカウントにログインする。ブックマークとパスワードと拡張機能は勝手に戻る
- 拡張機能の導入が終わるのを待ってから、各サービスにログインする。途中で入った拡張機能がログインの流れに割り込むことがある
- 書き出した一覧の順にログインし、再起動後もログインが保たれるかを確かめる
- 古いMacを手放すなら、プロファイルからログアウトしてから削除する。順番を逆にすると端末側にCookieが残る
ログインの作業を一度にまとめてしまうと、翌週まで断続的に中断される状態を避けられる。使うたびに1つずつログイン画面に当たる進め方は、作業の合計時間が変わらないだけでなく、そのたびに手を止められる分だけ体感の負担が大きくなる。
古い端末をしばらく手元に残せるなら、完全に消すのは数週間待つのが安全になる。同期の対象外だったものに気づくのは、たいてい必要になった瞬間で、その時点で参照できる環境が残っていれば書き出して移せる。消してしまってから気づくと、戻す手段がない。
同期に任せられない部分を、どこで埋めるか
同期は設定を複製する仕組みであって、作業中の状態を運ぶ仕組みではない。自分の端末を行き来したときに、ブラウザが前と同じ設定で立ち上がることを目的に作られている。同じサービスの複数のアカウントを同時に開いておくことも、窓の並べ方を持ち歩くことも、その目的の外側にある。
同期では満たせない要望は、形がよく似ている。2つのアカウントに同時にログインしたままにしたい。並べ方を別の端末でも再現したい。新しいMacを、ログイン作業なしで使い始めたい。どれもセッションと配置の話で、端末に残る側になる。
この側を扱うのが、アプリ集約ブラウザの役割になる。アプリごとに独立したワークスペースを持たせると、並べ方そのものが一度決めれば再利用できるものになり、端末ごとにブックマークから組み立て直す作業が減る。その考え方はワークスペースに整理されている。どのサービスが対象になっているかは使えるアプリで確認でき、いま使っているブラウザとどう併用するのかはよくある質問に回答がまとまっている。
同期の設定を見直すことと、セッションの置き場所を見直すことは、別の作業になる。どちらの話をしているのかを分けるだけで、直すべき場所ははっきりする。
よくある質問
Chromeの同期でCookieも同期されますか?
されない。Cookieとログインのセッションは、それを作った端末のプロファイルのフォルダに残る。同じGoogleアカウントで新しいプロファイルを作っても、すべてのサイトからログアウトした状態で始まるため、サービスごとに入り直す必要がある。
同じMacの2つのプロファイルでブックマークを共有できますか?
直接は共有できない。同期はプロファイルとGoogleアカウントの間で働くため、別のアカウントでログインしている2つのプロファイルは、別のパソコン同士と同じ扱いになる。共有したい場合はHTMLファイルに書き出して読み込むか、両方を同じアカウントでログインさせる形になる。
拡張機能は設定ごと引き継がれますか?
一覧は引き継がれ、ストアから入り直すが、拡張機能が保存していたデータは移らない。ライセンスの登録や拡張機能内のログイン、保存した項目は、その拡張機能自身の書き出し機能かアカウント機能で戻すことになる。
同期が止まっていることに気づくにはどうしますか?
アイコンに小さな印が付くだけで警告は出ないため、定期的に確認する形になる。Chromeの設定にあるアカウントのページか、Googleアカウント側のダッシュボードにあるChromeのデータの欄で、実際に保存されている件数を見るのが確実になる。