Ferdiumの使い方をMacで最初から|無料で二重ログインまで
ferdium 使い方を調べている人の多くは、無料であることを先に知って、そのうえで「どこかに落とし穴があるのでは」と確認しに来ている。料金の面での落とし穴はない。Apache 2.0のライセンスで公開されていて、寄付で運営されており、機能を有料で切り分ける仕組みそのものが存在しない。ただし、設計から来る限界はある。この記事では、Macでの導入手順、セッションの分離とワークスペースの扱い、独自CSSの当て方を順に押さえたうえで、この道具では埋まらない部分まで含めて整理する。
複数のWebアプリを1つの窓にまとめる道具の中での位置づけ
Gmail、Slack、Notion、社内の管理画面。1日に何度も行き来するWebサービスをブラウザのタブで抱える運用は、数が20を超えたあたりから成立しなくなる。この不便を埋める道具は10年近く前から作られていて、Ferdiumもその系譜にある。
系譜という言い方をするのは、この製品が2度の分岐を経ているためだ。最初にあったのはFranzという商用製品で、無料の範囲が少しずつ狭くなっていった。そこから分岐したのがFerdiで、有料側に移っていた機能を開いた。そのFerdiの開発が止まった後に、あらためて分岐したのがFerdiumになる。運営しているのは企業ではなく開発者のコミュニティで、開発はGitHub上で進み、収入は寄付による。
この経緯から性格が決まっている。Franzが有料にしていた機能、たとえば同じサービスの複数アカウントやワークスペースは、最初から全部使える状態にある。料金ページが存在しないのは、プランが存在しないためだ。良い面は、後から機能が有料側に移る心配がないことになる。理由は単純で、そうする動機を持つ企業がいないからだ。裏返すと、修正や新機能は「誰かが書きたいと思ったとき」に入る。サポート窓口に連絡して優先度を上げる経路はない。
Macでの導入と、最初の10分で触る設定
配布はGitHubのリリース経由で、公式サイトのダウンロードページから辿る形になる。Appleシリコンを積んだMacでは、Intel向けではなくApple Silicon向けのビルドを選びたい。アーキテクチャが違うと変換をはさんで動くことになり、ただでさえメモリを使う作りのアプリで無駄が増える。
最初の起動でmacOSが開くのを止めた場合は、システム設定のプライバシーとセキュリティに、それでも開くためのボタンが出る。App Store以外から入手したアプリで一般的に起きることで、アプリ自体の問題を示すものではない。
Electronを土台にした作りなので、サイドバーに並べたサービスの数だけWebページを抱えることになる。メモリの使用量はブラウザで同じ数のタブを開いた状態に近く、少ない構成のMacでは並べる数がそのまま効いてくる。導入直後に触っておきたい設定が3つある。
- 通知の許可。各サービスの通知はアプリがまとめてmacOSに渡す作りのため、システム設定の「通知」で許可されていないと、すべてのサービスの通知が同時に止まる。原因が分かりにくい形で表に出るので、先にOS側で許可を出し、そのうえでサービスごとの通知をアプリ内で決めたい
- ハイバネーション。しばらく触っていないサービスをメモリから降ろす仕組みで、動作の重さに一番効く。引き換えに、降りている間は接続が切れているため通知が遅れる。即時性が要るチャットは対象から外し、管理画面や課題管理は対象に含める形が扱いやすい
- 一覧に無いサービスの追加。よく使われるサービスにはレシピと呼ばれる定義が用意されていて、アイコンや通知の受け取りを面倒なく処理してくれる。レシピが無いものも、URLを貼れば独自サービスとして追加できる。社内の管理画面や自前で立てたツールはこの形で入る
サービスごとにログイン状態が分かれる
この分野の道具を使う理由の中心は、ログイン状態の分離にある。ここは正確に押さえておきたい。
ログイン状態はCookieとサイトのローカルストレージに保存されていて、その保管場所を共有している限り、同じサイトに別人としてログインすることはできない。表示の枠を2つに増やしても、保管場所が1つなら、サイトから見れば同じ訪問者のままになる。Ferdiumはサイドバーに並ぶサービスごとに保管場所を分ける作りなので、Gmailを2つ追加すれば、それぞれ別のGoogleアカウントで同時にログインしたままにできる。追加の設定も、プランの購入も要らない。メールアドレスが違う2つのSlackワークスペースでも、Notionを2アカウントでも同じことができる。
ブラウザ側では、この分離の単位が変わる。
プロファイルを使用すると、Chrome 上の情報全体(ブックマーク、履歴、パスワードなど)を、プロファイルごとに分離できます。 出典: support.google.com
Chromeが窓(プロファイル)を単位にしているのに対し、Ferdiumはサービスを単位にしている。この差は使い勝手にそのまま出る。プロファイルを分けると、仕事用の窓と個人用の窓に分かれる代わりに、どちらの窓の中にもタブが増えていく。サービス単位で分けると、窓は1つのままで、サイドバーの項目が増えていく。どちらが合うかは、抱えているアカウントの重複がサービス全体に散っているのか、特定の数サービスに集中しているのかで変わる。
ワークスペースと独自CSS
ワークスペースは、サービスをまとめて名前を付ける機能になる。「取引先A」というワークスペースに5つのサービスだけを入れておけば、その仕事の間はサイドバーが20項目から5項目に減る。切り替えてもログアウトは起きず、見えるものが変わるだけだ。Franzでは有料だった機能がそのまま使える形になる。
見た目の調整は、設定画面ではなくファイルで行う。設定ディレクトリに custom.css を置くと、その内容が反映される。macOSでの置き場所は ~/Library/Application Support/Ferdium の下になる。サービスごとに当てることもできるので、Webアプリ側が持っている左メニューを隠して、Ferdium側のサイドバーと二重にならないようにする、といった調整ができる。テキストファイルを書いて再起動する形なので、設定画面から選びたい人には向かない。合う人には、有料製品でしか手に入らないことが多い自由度が無料で手に入る形になる。
サイドバーの並び順も、地味だが効く要素になる。追加した順のまま固定されやすいので、1日に何度も開くサービスを上に、週に1度しか見ないものを下へ寄せておくと、探す時間がそのまま減る。ワークスペースを使う場合でも、それぞれの中の並びは同じ考え方で整えたい。加えて、やることを書き留めておくパネルが最初から付いている。別のタスク管理サービスをサイドバーに1枠足すかどうかを決める前に、こちらで足りないかを見ておくと、項目を1つ増やさずに済むことがある。
同期のためのアカウントは任意になる。作らなくてもアプリは全機能が使える。複数のMacでサービス一覧を揃えたいときだけ、公式のサーバーか、自分で立てたサーバーを使う。この選択ができる製品は多くないので、設定を自分の管理下に置きたい場合は効いてくる。
既存の環境を移すときの順番
一度に全部を移して、1つのサービスの挙動でつまずき、数日で戻す。この道具で一番多い失敗の形になる。段階を分ければ避けられて、手間としては1週間ほどの軽い作業で済む。
- 1日中開きっぱなしで、アカウントが1つしかないサービスから入れる。驚きが少なく、タブは一番減る。この段階ではブラウザも並行して開いたままにしておく
- 重複しているアカウントを、1組ずつ足す。この道具の価値が出るのはここで、同時に想定違いが一番高く付く場所でもある。取引先のアカウントではなく2つ目のGmailで先に確かめたい
- 社内ツールや自前のダッシュボードは最後に、URLで追加する。レシピが無いためアイコンや通知の扱いは弱くなる。週に2回しか見ない画面なら、ブックマークのままにしておくほうがいい
- ワークスペースは最後に作る。移す前に想像したまとまりは、移した後に必要になるまとまりとたいてい一致しない。1週間使えば適切な区切りが見えてきて、案件ごとに1つではなく、2つか3つに落ち着くことが多い
無料でも残る手間は4つ
料金の話とは別に、構造から来る限界がある。使い方の巧拙で埋まる種類のものではないので、期待値をそろえておきたい。
- 切り替えは一覧を目で追う操作のまま。タブ40個がサイドバー20項目に置き換わる。密度は上がるが、探す動作は消えない。Command+Tabで届くのはアプリであってサービスではない
- 外から届いたリンクの行き先。メールやカレンダーから届いたURLは、macOSの既定のブラウザで開く。macOSは既定のブラウザを1つしか持てず、「このリンクはこのアカウントで開く」という指定ができない。この分野の道具すべてに共通する制約になる
- レシピの当たり外れ。レシピはコミュニティが維持しているため、Webアプリ側の作りが変わると、誰かが直すまで挙動が乱れることがある。URLで足した独自サービスは、そもそもレシピが無いので壊れない代わりに、通知の扱いが弱い
- 問い合わせ先。不具合の報告先はGitHubになる。個人の環境なら十分だが、業務が止まる可能性のある機械で使うなら、「困った日に誰が直すのか」を先に決めておきたい
5秒の中断が1日に何十回も起きる状態は、合計の秒数よりずっと大きなものを削る。1つ目と2つ目は、無料か有料かとは無関係にこの分野に残り続ける。
何で困っているのかで選び分ける
同じ分野の製品でも、無料の範囲に入っているものは揃っていない。同一サービスの二重ログイン、独自CSSの適用、拡張機能あたりは、製品によって無料と有料のどちら側にあるかが分かれる。この線引きを製品ごとに並べたものはFerdiumとの比較にまとめてあり、最も近い有料製品との違いはRamboxとの比較で扱っている。
判断の基準は、困っている中身のほうにある。困りごとがログインの切り替えなら、この道具で終わる。費用はかからず、追加で買うものもない。困りごとが「目的の画面にたどり着くまでの時間」なら、サイドバーを持つ道具はどれも同じ壁に当たる。探す対象がタブからサイドバーの項目に変わっただけだからだ。
後者に効くのは、区切る単位をさらに動かす考え方になる。Webサービスをアプリとして扱い、アプリごとに独立したワークスペースを与えて、キーひとつで呼び出せる位置に固定する形だ。案件単位でまとめる考え方はワークスペースで説明していて、リンクの行き先やまとめた通知のように、分離ではなく導線の側を扱う機能はできることにまとまっている。
まずは現在のビルドを1週間そのまま使い、アプリの外に出た瞬間を数えるのが確実になる。出た理由がログインの切り替えなら、探し物はここで終わる。理由がリンクの行き先や画面の探し方なら、別の形の道具を見る段階になる。どちらなのかを1週間で見分けてから動くほうが、機能表を先に読むより外しにくい。
よくある質問
Ferdiumは本当に無料ですか?後から有料になりませんか?
Apache 2.0のライセンスで公開され、寄付で運営されています。プランの区分そのものが無く、機能を有料側に取り置く仕組みもありません。企業ではなくコミュニティが維持しているため、後から機能を有料に移す動機を持つ主体がいない構造です。引き換えに、問い合わせ先はGitHubの課題管理になり、サポート窓口はありません。
Gmailを2アカウント同時にログインしたままにできますか?
できます。サイドバーにGmailを2つ追加するだけで、それぞれ別のセッションを持つため、2つのGoogleアカウントに同時にログインした状態を保てます。設定も購入も不要です。メールアドレスが違う2つのSlackワークスペースや、ブラウザで動くサービスであれば同じように複数アカウントを並べられます。
FranzやFerdiとは何が違いますか?
Franzが最初の商用製品で、無料の範囲が次第に狭くなりました。Ferdiはそこから分岐して有料機能を開いたもので、Ferdiumはその流れをもう一度分岐させ、現在も更新が続いているものです。FranzやFerdi向けに書かれた解説は動作の説明としては概ね今も通じますが、メニューの位置は変わっています。
2台のMacで設定を揃えるにはアカウントが必要ですか?
同期したい場合だけ必要になります。アカウントを作らなくてもアプリの機能は全部使え、サービス一覧はそのMacの中に保存されます。複数台で一覧を揃えたいときに、公式のサーバーか自分で立てたサーバーのどちらかを選ぶ形です。後から切り替えることもできます。