Gmailの複数アカウントをMacで使い分ける|番号が入れ替わる理由

gmail 複数アカウントという使い方は、いまや珍しくありません。学生時代から使っている個人のアドレス、Google Workspaceで配られた仕事のアドレス、副業や取引先の都合で増えた3つ目。Googleはこの3つを同時にサインインした状態で使えるようにしているので、それで解決したように見えます。ところが実際には、返信が違うアドレスから飛び、届いた通知はどのアカウント宛なのかを教えてくれず、共有したリンクは相手の環境で別の受信箱を開きます。

これは使う側の不注意ではなく、複数サインインという仕組みの性質から予測できる結果です。どこまでが設計で助けてくれる範囲で、どこから先は自分で分けなければならないのかが分かると、対処の順番が決まります。

切り替えメニューは、身元を並べているだけです

右上の切り替えメニューにアカウントを追加しても、増えるのは中に入っている身元の数だけで、入れ物は1つのままです。Cookieの置き場所も、デスクトップ通知の許可も、機能拡張も、そのブラウザのプロファイルに1組しかありません。「アカウントを増やす」と「持ち場を分ける」が別の話になるのは、この作りが理由です。

同じ理由から、次の2つは覚えておく価値があります。

  • 1つのアカウントだけをサインアウトすることはできません。切り替えメニューからサインアウトすると、そのブラウザに入っている全アカウントが一緒に外れます。3つのうち1つだけ落として2つ残す、という操作は用意されていません
  • アドレスバーからコピーしたURLには、そのブラウザでの並び順を表す番号が埋め込まれています。番号は名前ではないので、渡した相手の環境ではまったく別のアカウントを指します。人に共有する前に /u/ から始まる部分を削っておけば、この種の行き違いはほぼ消えます

そして、Googleが用意している手段は「同時にサインインする」だけではありません。読む必要があるだけのアドレス、送信元として名乗りたいだけのアドレス、他の人にも触ってもらいたいアドレスには、それぞれ別の仕組みが当たっています。ここを知らないまま数を増やすと、本来なら1つで済んだものにログインとパスワードと窓を用意することになります。

代理アクセスなら、2つ目のログインは要りません

分けている理由が「同じ人の別の顔」ではなく「別の役割・別の担当」なのであれば、代理アクセスがいちばん筋の通った答えになります。設定の「アカウントとインポート」から代理人を追加すると、相手は自分のGmailの中から、そのアカウントのメールを読んで返信できるようになります。

上限と条件は公開されています。

  • 個人用の @gmail.com アカウントは代理人を最大10人まで、仕事用または学校用のアカウントは最大1,000人まで追加できます
  • 1つのアカウントに同時にアクセスできる代理人は、一般的な使い方でおよそ40人です。APIやブラウザの機能拡張が頻繁に触っていると、この数は下がります
  • 追加すると相手に招待メールが届きます。招待は1週間で期限が切れます
  • 承諾されてから実際に使えるようになるまで、最長で24時間ほどかかります

大事な点が2つあります。1つは、代理人が送ったメールには代理人自身のアドレスが表示されることです。誰が書いたのかが受け取った側に見えるので、なりすましにはなりません。もう1つは、予備のアドレスやエイリアスには代理人を追加できないことです。それらはGoogleアカウントではないためで、共有したい受信箱がエイリアスで作ってある場合は、この手段は使えません。

代わりに、委任された側で使えなくなる機能はかなりの数にのぼります。ドライブへの添付ファイルの追加、Gmail内のChatとMeet、Gemini in Gmail、スマート作成とスマートリプライ、ToDoリストへの追加、スペルと文法のチェック、絵文字のリアクションは、代理人の画面には出てきません。パスワードの変更やGoogleアカウントの設定にも触れません。日常的にやり取りを読んで返すだけなら足りますが、資料を添えて送る仕事が中心なら、窮屈に感じる場面が出てきます。

複数サインインが黙って諦める場所

同時に開いたまま扱えるのは、複数サインインを前提に作られたサービスに限られます。Gmailとドライブとカレンダーはそれなりにこなしますが、それ以外の場所では、しかも失敗の仕方が静かです。

複数サインインに対応していないサービスは、いま画面に出ているアカウントではなく、最初にサインインしたアカウントで動きます。リンクを開き、ページが読み込まれ、確認もないまま別の人格として処理が進みます。「Googleでログイン」を提供している他社サービスも同じ性質を持っていて、サインインの流れが既定のアカウントを掴みにいくため、意図と違うアカウントで登録が完了してしまうことがあります。

ブラウザのタブの外に出るものは、この問題がさらに強く出ます。Gmailのデスクトップ通知はブラウザから出るので、通知に付いている身元はアカウントではなくブラウザのものです。新着があったことは分かっても、3つのうちどの受信箱に届いたのかは分かりません。クリックすると、すでに開いていたタブ、つまり届いたのとは別のアカウントの画面が前に出てくることもあります。

ここが、ブラウザのタブがGmailアカウントの入れ物として力尽きる地点です。そして、どう分けるかという判断が実際に効いてくる地点でもあります。

分け方は4通り、それぞれの代償

よく使われる形は4つあります。優劣ではなく、状況によって正解が変わります。

同じ窓で切り替え ブラウザのプロファイルを分ける アカウントごとに窓を分ける 1つの受信箱にまとめる
同時にサインインしていられる できる できる できる 1アカウントのみ
送信元を間違える危険 高い 低い 低い 中くらい
番号の入れ替わり 起きる 起きない 起きない 関係ない
通知でアカウントが分かる 分からない 分からない 分かる 関係ない
Dockのアイコンが分かれる 分かれない 分かれない 分かれる 分かれない
拡張機能や設定の共有 共有される 別々になる 道具による 共有される
用意にかかる手間 なし 10分程度 10分程度 30分程度

上から順に手間が増え、順に取り違えが減ります。切り替えメニューは手間がゼロで、だいたい2つ目までは通用します。プロファイルを分けるのは定番の次の一手ですが、増えるのは入れ物であって置き場所ではありません。プロファイルはどれも同じアプリケーションの別の窓なので、Dockのアイコンは1つに集まり、アプリ切り替えの一覧では全部が同じ名前で並びます。窓ごとに分ける形だけが、通知とDockの側にも違いを持ち込みます。いちばん右の集約は方向が逆で、置き場所を増やさずにアカウントの数そのものを減らします。

1つの受信箱にまとめる方法と、その代償

反対方向の解き方も検討する価値があります。分け方を精密にするのではなく、そもそも開く必要のあるアカウントを減らすという考え方です。

Gmailには、他のアカウントのメールを取り込む機能があります。設定の「アカウントとインポート」にある「他のアカウントのメールを確認」で、POPを使って他のアドレス宛のメールを現在の受信箱に集められます。

You can add up to 5 accounts, including Gmail and other email accounts. 出典: support.google.com

取り込めるのは最大5件です。これに、認証済みのアドレスを返信の差出人に選べる「名前」の設定(送信元アドレスの追加)を組み合わせると、1つのGmailの窓で複数のメールボックスを代表させられます。

この形には、はっきりした代償が3つあります。

  • POPでの取り込みは受け取りに行く仕組みなので、届くのは即時ではなくGmailの巡回のタイミングです。ニュースレターと請求書がたまに来るアドレスなら問題になりませんが、5分の遅れが響く用途には向きません
  • 差出人の初期値が事故のもとになります。1つの窓に差出人の候補が4つ並ぶと、選択欄を読まずに返信するだけで誤送信になります。取り込んだアドレスごとに「届いたアドレスから返信する」設定にしておくと危険はかなり下がるので、思い込みで済ませず設定画面で確認してください
  • 以前は受信箱が分かれていることで自動的にできていた仕分けを、フィルタとラベルで作り直す必要があります。全アドレスのメールが1本の流れになるので、届いた時点でアドレスごとのラベルを自動で付ける設定は飾りではなく必須です。これを省くと、アカウントを切り替える手間が仕分けの手間に置き換わるだけになります

そもそも増やさなくてよかったアカウント

置き方を決める前に、手元のアドレスが本当に別アカウントを必要としているのかを確かめておくと、作業そのものが減ります。実際には、分けなくてよかったものが混ざっていることがよくあります。

個人向けのGmailは、アドレスの前半に入っているドットを無視します。[email protected] 宛のメールも [email protected] 宛のメールも同じ受信箱に届くので、名刺にドット入りで書いてあるアドレスは別のアカウントではありません。さらにプラス付きアドレスにも対応していて、[email protected] は同じ受信箱に届きながら、フィルタで拾えるタグを持ちます。サービスに登録するときにタグを付けたアドレスを使っておくと、サービスごとの仕分けが手間なしで手に入り、あとからどこがアドレスを漏らしたのかも見当が付きます。

Google Workspaceでは、管理者が既存のアカウントにエイリアスのアドレスを追加できます。エイリアス宛のメールは同じメールボックスに届き、差出人としても選べるので、請求担当のような役割のアドレスのために別のログインとパスワードと窓を用意する必要はありません。「2つ目のアドレスを持つためだけに作ったアカウント」は、まとめてしまえる筆頭候補です。

判断の分かれ目は所有です。エイリアスは同じメールボックスへの別の入口なので、そのアカウントを持っている人は全員が持ちます。別アカウントは、履歴もドライブも権限も別に持つ別のメールボックスです。いつか他の人に引き継ぐアドレスや、担当が変わっても残す必要があるアドレスは、後者でなければなりません。前に触れた代理アクセスが効くのもここで、受信箱そのものは別に持ったまま、読む人だけを増やせます。

この確認を先にやると、たいてい一覧から1つか2つ消えます。消えた分だけ、窓と通知設定と日々の判断が減ります。

通知が、置き場所を決めている

どの形を選ぶかを決める最大の材料は、見た目の整理ではありません。「意識して無視できるかどうか」です。

同じブラウザに2つのGmailが入っていると、通知はどれも同じ顔で届きます。何が来たのかを知るには開くしかなく、この確認の動作こそが高くつきます。失うのは読むための30秒ではなく、そのとき進めていた作業が中断されることのほうです。

分け方がOSの側まで届いていると、これは根元から解決します。アカウントが自分の窓と自分のアプリケーションとして存在していれば、macOSのシステム設定で「日中は仕事のアカウントの通知だけ通し、個人のアカウントは黙らせる。夜は逆にする」と指定できます。一度設定すれば、意志の力を使わずに割り込みが1種類まるごと消えます。

1つのブラウザの窓の中では、これができません。通知の許可はブラウザに対して1つしか無く、全部通すか全部止めるかの二択になるためです。

使い方に合わせて置き場所を決める

判断は短い問いで足ります。アカウントごとに、次の2点に答えてください。

  • そのアドレスから送るメールは、そのアドレスの名前で届く必要があるか
  • そのアドレスに届くメールは、1時間以内に気づく必要があるか

どちらも不要なアカウントは、まとめた受信箱に入れるのが正解です。領収書や発送通知が届くだけのアドレスに、専用の窓もアイコンも通知の設定も要りません。必要なのはラベル1つです。

どちらも必要なアカウントは、専用の入れ物を持つ価値があります。仕事のアドレスと取引先のアドレスは、正しい差出人で送る必要があり、届いたら早く気づく必要もあります。窓と通知設定を分けるべきなのはこの2つで、たいていの場合、そもそも困っていた原因もこの2つです。

片方だけ必要なアカウントは中間で、判断は流量で決まります。正しい差出人で送る必要はあるが受信はほとんど無いアドレスなら、主アカウントの送信元アドレスとして登録しておけば足ります。読む必要はあるが自分の名前で送らないアドレスなら、代理人として招いてもらう形が軽くて済みます。

Webアプリを1つの窓にまとめるブラウザは、この考え方をメール以外にも当てはめます。Slack、カレンダー、案件管理、取引先の管理画面は、2つ目のGmailとまったく同じ問題を抱えています。どれもブラウザという1つの人格の中のタブとして置かれていて、自分の身元を持っていません。仕事の単位で窓とセッションをまとめる仕組みはワークスペースにまとまっており、どのサービスがその形で動くようにしてあるかは使えるアプリで確認できます。同じ分野の道具をすでに検討している場合は、対応範囲と料金の違いを並べたShiftとの比較が判断の助けになります。この置き方の中心にあるのはアプリごとに独立したワークスペースという考え方で、アカウントの数ではなく仕事の単位で区切ります。

数える単位を、アカウントから役割へ

gmail 複数アカウントの話は、たいてい「いくつまでサインインできるか」から始まります。しかし実際に効くのは数ではなく、そのアドレスに何をさせたいかです。

手元のアドレスを紙に書き出して、送信元の正しさと反応の速さの2軸で仕分けてみてください。多くの場合、専用の入れ物が必要なアカウントは2つに収まります。名乗るためだけのものはエイリアスか送信元アドレスの登録へ、読むだけのものは集約か代理アクセスへ、それぞれ移せます。増えたアカウントを上手に切り替える工夫よりも、切り替える対象を減らすほうが、翌月以降の手数に効いてきます。

よくある質問

Gmailは何個までのアカウントを同時にサインインできますか?

Googleの複数サインインは、1つのブラウザで複数のアカウントを同時に扱えます。ただし技術的な上限より先に実用上の限界が来ます。入れ物が1つのままなので、Cookieも通知の許可も機能拡張も全アカウントで共有され、複数サインインに対応していないサービスは最初にサインインしたアカウントで動くためです。2つ目までは切り替えで足り、3つ目からは入れ物を分ける検討に入るのが目安になります。

代理人を追加すると、相手は何ができるようになりますか?

そのアカウントのメールを読む、送る、削除することができます。送ったメールには代理人自身のアドレスが表示されるので、受け取った側には誰が書いたのかが分かります。パスワードの変更やGoogleアカウントの設定には触れません。ドライブへの添付ファイルの追加、Gmail内のChatとMeet、Gemini in Gmail、スマート作成、ToDoリストへの追加といった機能は、代理人の画面では使えません。個人用のアカウントは最大10人、仕事用または学校用のアカウントは最大1,000人まで追加できます。

複数のGmailを1つの受信箱にまとめられますか?

できます。設定の「アカウントとインポート」にある「他のアカウントのメールを確認」でPOPを使って最大5件のアドレスから取り込め、送信元アドレスを追加すれば返信の差出人も選べます。ただし届くのは巡回のタイミングで即時ではなく、アドレスごとにラベルを自動で付けるフィルタを用意しないと仕分けが追いつかなくなります。

エイリアスと別アカウントは、どう使い分ければよいですか?

エイリアスは同じメールボックスへの別の入口なので、名乗るアドレスを増やしたいだけならこちらで足ります。別アカウントは、メールもドライブも権限も別に持つ独立した持ち物です。いつか他の人へ引き継ぐアドレスや、担当が替わっても残す必要があるアドレスは、別アカウントでなければなりません。受信箱を独立させたまま読む人だけを増やしたい場合は、代理人として招く方法があります。

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