Googleアカウントを複数使う|Macで誤爆を止める分け方

Googleアカウントを複数持っているのは、いまでは普通のことです。個人のアドレス、Google Workspaceの勤務先アドレス、副業や屋号のアドレス、取引先から発行されたアドレス。Googleは同時ログインに対応しているので、最初の1週間は問題が片づいたように見えます。困りごとは少し遅れて、小さく現れます。予定の招待を開いたら別名義で入っていた。共有されたはずの資料で権限がありませんと言われた。チャットのリンクを踏んだら、そのアカウントには見えない画面だった。

これは不具合ではなく、複数ログインの作りからそのまま出てくる結果です。仕組みが分かると、対処が注意深さの問題ではなくなります。注意深さは忙しい日に真っ先に失われるので、そこに頼らない形にするのが要点です。

既定のアカウントが、すべての行き先を決めている

Googleのヘルプには、複数のアカウントを持っている場合は同時にログインできると書かれています。切り替えは右上のプロフィール画像から行います。見落とされやすいのは、どれが主導権を持つかについての一文です。

In many cases, your default account is the one you signed in with first. 出典: support.google.com

多くの場合、既定のアカウントは最初にログインしたものになる、と説明されています。つまり既定のアカウントは設定画面で一度選ぶ好みではなく、ログインの順番で決まるセッションの性質で、そのセッションが消えるまで続きます。アカウントの情報が付いていないリンクを開いたとき、行き先は必ずこの既定になります。Macで起きる誤爆のほとんどは、この1点で説明がつきます。

もう1つ、アドレスバーを見ると分かる事実があります。GoogleのWebアプリはURLの中にアカウントの番号を持っていて、/u/0、/u/1 のように書かれます。この番号はログイン中の一覧における位置であって、アカウントを固定で指す識別子ではありません。/u/1 を含むURLをブックマークしても、ログインの順番が変わった時点で別の受信箱が開きます。2つ目のアカウントをブックマークで固定する方法が当てにならないのは、このためです。

同じヘルプには、設定がアカウント間で共有されないことも書かれています。

When you sign in to multiple accounts, account settings usually aren't shared between accounts. 出典: support.google.com

複数ログインが足りなくなる3つの場面

限界は決まった順番で現れます。

1つ目は外から来るリンクです。チャットアプリ、メールソフト、カレンダーの通知から開いたリンクには、どのアカウントで開くべきかの情報が付いていません。既定のアカウントで開き、権限がなければアクセス権のリクエスト画面になり、切り替えると再読み込みが走ります。1回10秒ほどの手間ですが、1日に何十回も起これば無視できない量になります。しかもこの種の損失は請求書に載らないので、放置されがちです。

2つ目は、複数ログイン中の挙動がサービスごとに違うことです。Googleの説明では、判断がつかない場面では既定のアカウントの設定が適用されることがあるとされ、異なる国のアカウントに同時ログインしている場合、Google Playが既定のアカウントの国の内容を表示することがあるとも書かれています。あいまいな場面では、見ているアカウントではなく既定のほうに寄る、と考えておくと外しません。

3つ目は管理の問題です。Google Workspaceのアカウントは所属する組織の管理下にあり、個人のアカウントと同じブラウザのセッションに同居させたときの扱いは、管理者の設定に左右されます。勤務先が管理しているアカウントを使っているなら、ブラウザのセッションも管理の対象に含まれると考えておくのが安全です。

どれも「どちらのアカウントか気をつける」では解決しません。解決するのは、そのセッションに間違えるほうのアカウントを置かないことです。

Chromeのプロファイルは境界になる。ただし錠ではない

Chromeで実際の境界になるのはプロファイルです。プロファイルごとにクッキーの保存領域が分かれるので、それぞれが1つのGoogleアカウントだけを抱えられます。そのプロファイルの中で開いたリンクは外へ出ません。拡張機能・履歴・保存したパスワードも分かれ、専用の窓とアイコンを持つので、いまどちらの窓にいるかが目で分かります。

分離としては本物ですが、Googleのヘルプは効果を誇張していません。

Only share your device with people you trust. If someone has your device, they can switch to any other Chrome profile on it. 出典: support.google.com

端末を渡す相手は信頼できる人に限るべきで、端末を持っている人は別のプロファイルへ切り替えられる、という説明です。プロファイルは情報を分けますが、鍵をかけるものではありません。持ち出すMacで取引先のデータを扱うなら、プロファイルはmacOS側のユーザーアカウントやディスクの暗号化の代わりにはならない、という前提で組む必要があります。

実務上の弱点は別のところにあります。切り替えが窓の移動になること、そしてプロファイルの窓がそれぞれ完全なブラウザなので、タブ列も別々に増えていくことです。2つなら快適ですが、4つになると4つのブラウザ窓がそれぞれ散らかり始め、整理のために分けたはずの効果が薄れていきます。

Safariのプロファイルは軽い代わりに例外がある

Safariにも同じ考え方があり、仕事・学校・私用といった生活の部分ごとにプロファイルを作って閲覧を分けられる、と案内されています。プロファイルごとにタブグループ・履歴・機能拡張が分かれるので、Mac中心で仕事をしている人には十分な場合が多いです。

ただし明記された例外が1つあります。iCloudキーチェーンにパスワードを保存している場合、そのパスワードは作成したどのプロファイルでも使えます。ログインの入力は楽になりますが、間違ったアカウントの資格情報が候補に出ることは防げません。分離の範囲を確かめずに「これで完全に分かれた」と考えると、そこで足をすくわれます。

誤爆はブラウザの外から始まっている

意図しないアカウントで開いてしまう場面の多くは、ブラウザの中で起きていません。チャットアプリ、メールソフト、カレンダーの通知が出発点で、リンクはmacOSを経由して既定のブラウザへ渡されます。送り出す側にはどのアカウントのものかを伝える手段がなく、受け取る側にも尋ねる手段がありません。結果として、たまたま手前にある窓がそのページを開きます。

プロファイルを分けた構成が、自分で調べ物をしている間は完璧に働くのに、通知から仕事が飛んでくる時間帯になると崩れるのはこのためです。分離はブラウザの内側では本物で、境界では存在していません。アドレスを自分で打つ時間より、届いたリンクを踏む時間のほうが長い人は、この境界の上で一日を過ごしていることになります。同じ構成を、ある人は絶賛し、似た仕事をしている別の人は役に立たないと言う理由もここにあります。

部分的な対処はあります。macOS向けのリンク振り分けツールを使えば、ドメインごとに開くプロファイルを決められます。取引先の独自ドメインのように1つのアカウントへきれいに対応する相手には有効ですが、どの取引先も使う共有の書類サービスのような相手には効きません。既定のプロファイルの窓を業務時間中は手前に置いておく、という運用は雑ですが費用はゼロです。どちらも根治ではありません。足りない情報を補うのではなく、迂回しているだけだからです。

管理する前に、アカウントの数そのものを減らせないか

分離の仕組みを組む前に確かめる価値があるのは、そのアカウントが本当にアカウントとして存在する必要があるか、という点です。

Gmailには別のアドレスを差出人にして送信する機能があります。屋号や小さな副業のアドレスは、2つ目のログインを作らなくても、本業の受信箱で受けて元のアドレスのまま返信できることがあります。これで2つのアカウントが1つになり、名乗る名前は失われません。

Google Workspaceには委任の仕組みもあります。自分の受信箱の中から、別のメールボックスを読んで返信できるようにするものです。問い合わせ窓口のような共有アドレスを見ている場合、委任を使えばログインが1つ減ります。

ファイルについては共有ドライブが同じ役割を果たします。共有ドライブに置いた資料は個人のアカウントではなく組織に属するので、どのアカウントでログインしているかに閲覧の可否が左右されなくなります。

もちろん、2つのアカウントが本当に別の組織に属していて権限も別なら、この方法では減りません。それがいちばん難しい形の困りごとです。ただ実際には、1つか2つは整理できることが多く、状況の難しさはその数に比例します。4つが2つになれば、必要になる構えそのものが変わります。

4つの構え方を並べる

構え方 境界 誤爆の起きやすさ 切り替えの手間 向いている人
1つのブラウザで複数ログイン なし。セッションを共有 高い。既定に引っ張られる メニュー操作と再読み込み アカウント2つで使用頻度が低い
Chromeのプロファイル プロファイルごとのセッション 低い 窓の移動 仕事と私用がはっきり分かれる
Safariのプロファイル プロファイルごとのセッション 低い 窓の移動 Mac中心で完結する仕事
アプリとアカウントごとの窓 アプリケーション単位で固定 低い。窓が身元を表す ひと押し 複数アカウントを一日中使う

境界が硬くなるほど誤爆は減り、代わりに費用が「毎日の注意力」から「最初の設定」へ移ります。複数ログインは設定の手間がゼロな代わりに毎日注意を要求し、下の3行は最初に一度決めれば以後ほとんど何も要求しません。

決断そのものを減らす3つの習慣

どの構え方を選んでも効く準備があります。

  • 外からのリンクがいちばん多く届くアカウントを、最初にログインして既定にする。仕事のチャット経由が大半なら既定は勤務先のアカウントにして、個人のほうを意識的な切り替えが要る側に置く
  • アカウント番号を含むURLをブックマークしない。正しいプロファイルの中からブックマークするか、アプリケーション自体がアカウントに属している形にする
  • 押す前に身元が見えるようにする。プロファイルのアイコン、窓の色、名前を付けた作業空間。右上のアイコンを確かめないと分からない状態をやめる

3つ目は、Webアプリを1つの窓にまとめるブラウザなら既定でそうなっています。サービスごと、そして同じサービスのアカウントごとにアプリごとに独立したワークスペースが用意され、セッションもそこに属します。同じメールサービスを3つのアカウントで並べても、どれかが別のどれかを追い出すことがありません。その空間の中で開いたリンクは外へ出ないので、既定のアカウント問題は管理するのではなく消えます。何がどこまで分かれるのかはできることにまとまっており、同種の道具との違いはRamboxとの比較、費用の考え方は料金で確認できます。

判断の材料は、1日数えるだけで足ります

まず1日だけ、リンクが意図しないGoogleアカウントで開いた回数を数えてください。3回未満なら、既定のアカウントを正しく置いた複数ログインで足りていて、新しく何かを組む必要はありません。それを超えるなら、1つのセッションに仕事をさせすぎています。そのときに検討すべきなのは切り替えを速くする工夫ではなく、アカウントごとに独立した置き場所を持たせることです。

よくある質問

Googleアカウントは同時に何個までログインできますか?

Googleは1つのブラウザセッションで複数アカウントの同時ログインに対応しており、通常の利用で明示された上限は公開されていません。実際の限界は技術的な上限より先に訪れます。アカウントが増えるほど、リンクが既定のアカウントで開いてしまう確率が上がるためです。

なぜリンクがいつも別のアカウントで開くのですか?

アカウントの情報が付いていないリンクは、既定のアカウントで開くためです。既定は多くの場合、最初にログインしたアカウントになります。切り替えると再読み込みが起きます。確実に止めるには、1つのセッションに1つのアカウントだけを置く形にします。

/u/1 を含むURLをブックマークすれば固定できますか?

固定できません。URLの番号はログイン中の一覧における位置であり、アカウントを指す固定の識別子ではありません。ログインし直して順番が変わると、同じブックマークが別のアカウントを開きます。正しいプロファイルの中からブックマークするほうが安定します。

Chromeのプロファイルは取引先のデータを扱っても安全ですか?

クッキー・履歴・拡張機能・パスワードは分かれますが、Googleのヘルプには端末を持っている人は別のプロファイルへ切り替えられると書かれています。プロファイルは分離であって施錠ではないため、保護が必要ならmacOS側のユーザーアカウントやディスクの暗号化を併せて使ってください。

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