Gmail複数アカウントを無料で分ける方法|Macでの使い分け
仕事用のGmailと個人用のGmail、会社のSlackと副業のSlack、業務のNotionとメモ用のNotion。アカウントが2つになった瞬間から、ブラウザは「作業する場所」ではなく「いまどのアカウントでログインしているか思い出す場所」に変わる。gmail 複数アカウント無料と検索して出てくる方法はいくつもあるが、どれも同じことをしているわけではない。分かれるものが違う。この記事では、Macに最初から入っている無料の仕組みを順に並べて、それぞれ何を分けていて、何を分けていないのかをはっきりさせる。そのうえで、無料のままだと最後に残る手間がどこにあるのかを示す。
「無料で複数アカウントを使う」には2つの意味がある
同じ言葉で語られているが、読者が困っている状況は大きく2つに分かれる。
1つは、Gmailの受信箱を2つ同時に開いておきたいという話。もう1つは、GmailもSlackもNotionも、それぞれ2アカウントずつあって、全部が1台のMacの中で混ざっているという話だ。前者はGoogleの機能だけで解決する。後者はGoogleの機能では解決しない。この区別を先に付けないと、調べた方法が自分の状況に効かない理由が分からないまま終わる。
技術的に見ると、分かれているかどうかを決めているのはCookieの保管場所だ。ログイン状態はCookieとサイトのローカルストレージに保存されていて、同じ保管場所を共有している限り、同じサイトに別人としてログインすることはできない。「タブを分ければ別アカウントになる」と思われがちだが、タブは表示の枠でしかなく、Cookieはブラウザのプロフィール側が持っている。だから同じプロフィールの中でタブを増やしても、サイトから見れば同じ訪問者のままになる。
無料の方法は、このCookieの保管場所をどこで区切るかで性格が変わる。区切る単位は3種類ある。タブで区切るもの、ウィンドウ(プロフィール)で区切るもの、サービスごとに区切るものだ。
方法1: Googleのマルチログインを使う
Googleは、同じブラウザに複数のGoogleアカウントを同時にサインインさせる仕組みを標準で用意している。右上のアイコンから「別のアカウントを追加」を選ぶだけで、費用はかからない。追加したあとは、URLの中に /u/0/ /u/1/ のような番号が入り、この番号でどのアカウントの画面かが決まる。
手軽さは一番だが、区切りとしては一番浅い。Cookieの保管場所は共有されたままで、番号だけで見分けている状態だからだ。ここから次の3つが起きる。
- ブラウザの外から届いたリンク(Slackのメッセージ、カレンダーの招待、メールの中のURL)は、番号の付いていないURLで開くため、先頭のアカウントで開かれる。開きたかったアカウントと違えば権限エラーになる
- Googleのサービスの中でも、この番号の扱い方が揃っていないものがある。ドライブの共有リンクやドキュメントの直リンクで、意図と違うアカウントに落ちることがある
- GmailやドライブはGoogleの仕組みなので効くが、SlackやNotionのような社外のサービスには一切効かない
つまりマルチログインは、「Gmailの受信箱を2つ開きたい」という前者の悩みには十分に効く。「Webアプリ全体が2アカウントずつある」という後者には、ほとんど何もしていない。
方法2: Chromeのプロフィールを分ける
Chromeのプロフィールは、ディスク上の独立したフォルダそのものだ。プロフィールを分けると、4種類のもの、つまりCookie・履歴・ブックマーク・拡張機能がまとめて分かれる。プロフィールはそれぞれ自分のウィンドウで開き、ウィンドウの右上に区別用のアイコンが出る。
無料で手に入る区切りとしては、これが一番強い。仕事用のパスワード管理拡張が個人用のタブで動くこともないし、個人の検索履歴が仕事の入力候補に出てくることもない。Googleのマルチログインと違い、Slackにも、Notionにも、他のあらゆるサービスに効く。
弱点は「分かれること」ではなく「切り替えること」にある。プロフィールはアイコンのメニューから切り替える形で、macOSから見ればどのプロフィールのウィンドウも同じChromeというアプリのウィンドウでしかない。Command+Tabで選べるのはChromeであって、仕事用のChromeではない。ウィンドウが増えるほど、目的の画面を探す時間はタブを探していたときと変わらなくなっていく。
なお、Chromeのシークレットウィンドウはこの用途には向かない。シークレットは閉じたときにCookieを捨てる仕組みで、毎日使うアカウントを置く場所ではないからだ。しかも開いているシークレットウィンドウ同士はセッションを共有するため、シークレットで2つ目のアカウントを保つこと自体ができない。
方法3: SafariとFirefoxが用意している仕組み
Safariには、macOS Sonoma(バージョン14)からプロフィールが入った。Cookie、履歴、拡張機能、タブグループがプロフィールごとに分かれる。考え方はChromeのプロフィールと同じで、すでにSafariで仕事をしている人にとっては追加の導入がいらない選択肢になる。
Firefoxには、Mozillaが無料で配布しているMulti-Account Containersという拡張機能がある。これはタブ単位でCookieの保管場所を分ける仕組みで、1つのウィンドウの中に、別アカウントのタブを並べて置ける。タブの上端に色の線が付き、特定のドメインを常に決まったコンテナで開くよう固定もできる。「同じ窓の中で、同じサービスの2アカウントを同時に見たい」という要求に、無料で正面から答えているのはこの方法だけだ。
ただしコンテナが分けているのはCookieとストレージだけで、拡張機能はコンテナをまたいで共有される。IPアドレスやブラウザの指紋も共通なので、匿名性の道具ではない。あくまでアカウントを分けるための仕組みとして見るのが正しい。
無料の方法を横に並べて比べる
| 方法 | 費用 | Cookieが分かれる | アカウントごとに窓が分かれる | 拡張機能が分かれる |
|---|---|---|---|---|
| Googleのマルチログイン | 無料 | 分かれない | 分かれない | 分かれない |
| Chromeのプロフィール | 無料 | 分かれる | 分かれる | 分かれる |
| Safariのプロフィール | 無料(macOS Sonoma以降) | 分かれる | 分かれる | 分かれる |
| Firefoxのコンテナ | 無料 | 分かれる | 分かれない | 分かれない |
| ブラウザを2つ使い分ける | 無料 | 分かれる | 分かれる | 分かれる |
| Ferdium | 無料(オープンソース) | サービスごとに分かれる | 1つの窓に集まる | 対象外 |
下から2行目の「ブラウザを2つ使い分ける」は、この分野で一番古く、一番確実な方法でもある。仕事はChrome、個人はFirefoxと決めてしまえば、Dockのアイコンが2つになり、Command+Tabの行き先も2つになる。設定は何もいらない。破綻するのはアカウントが3つ4つと増えたときで、インストールするブラウザの数が笑えなくなる地点が必ず来る。
最終行のFerdiumは、無料で使えるオープンソースのデスクトップアプリで、複数のWebサービスを1つのウィンドウの中に並べ、サービスごとに独立したセッションを持たせる。アカウントの分離という点では十分に働く。一方で全部が1つのウィンドウに集まるため、「探す手間」の解き方が他とは違う。この違いがどこに出るのかはFerdiumとの比較で具体的に扱っている。
無料で分けるときの順番
どの方法を選ぶかより、どの順番で手を付けるかのほうが結果を左右する。無料の設定が長続きしない原因は、たいてい境界の引き方にある。
- サービスではなく人格で分ける。「Gmail用」「Slack用」と分けても、どちらも2アカウントあるなら中で混ざる。「会社の自分」「個人の自分」「取引先Aの自分」という単位で切れば、あとから新しいサービスが増えても置き場所に迷わない
- 動かすのは個人側から。仕事側のプロファイルには保存済みのパスワード、会社が入れた拡張機能、何年分かのブックマークが溜まっている。新しいプロファイルを作って、量の少ない個人側をそこへ移すほうが速く、月曜の朝に何かが壊れる確率も低い
- 既定のブラウザを意識して決める。ブラウザの外から届いたリンクは全部そこへ落ちる。長く使っているほうではなく、リンクが多く届くほうを既定にする
- 1対1で対応するドメインだけ固定する。Firefoxのコンテナ固定は、ドメインとアカウントが1対1のときに効く。同じドメインを2アカウントで使う場面では効かないと知っておくと、設定に時間を溶かさずに済む
- ウィンドウに居場所を与える。macOSではDockのアイコンを長押ししたメニューから、ウィンドウを特定のデスクトップに割り当てられる。これをやっておくと、切り替えが探す操作からスワイプ1回に変わる
設定したら、判断する前に1週間そのまま使う。最初の2日は前より不便に感じる。習慣が古いウィンドウを向いているだけで、それは設定の問題ではない。
無料のままだと残る手間は4つ
無料の方法はどれも、アカウントを分けること自体には失敗しない。残るのはもっと小さい4つで、これが積み上がる。
- リンクの行き先。Slackやカレンダーから届いたURLは、macOSの既定のブラウザで、最後に使っていたプロフィールで開く。仕事用のアカウントが必要なURLなら、権限エラーの画面を見てからURLをコピーし、プロフィールを切り替えて貼り直すことになる。既定のブラウザという設定はOSに1つしかなく、プロフィールまでは指定できない
- 通知の許可。Webの通知はプロフィールごと、サイトごとに許可する仕組みなので、プロフィールを3つ作れば同じ許可を3回出すことになる。しかも通知にはサイト名は出るが、どのアカウント宛かは出ない
- ウィンドウの散らかり。プロフィールはウィンドウを生む。タブを探していた手間が、ウィンドウを探す手間に移動しただけ、という状態になりやすい
- 再起動のあと。プロフィールやコンテナの設定は残るが、並べ方は残らない。どのウィンドウにどのタブを開いていたかは、毎回手で作り直すことになる
1つずつは数秒の話だ。それでも軽視できないのは、これが時間ではなく注意力に効くからだ。5秒の中断が1日に何十回も起きる状態は、合計の秒数よりずっと大きなものを削る。
切り替えの回数から選び直す
どの方法を選ぶかは、アカウントの数ではなく、1日に何回アカウントをまたぐかで決めたほうが外れにくい。またぐ回数が少ないなら、Chromeのプロフィールを1つ足すだけで足りる。回数が多く、しかも同じサービスの2アカウントを同時に見る場面が多いなら、Firefoxのコンテナが効く。回数が多く、扱うサービスの種類そのものが多いなら、区切る単位をタブやウィンドウからサービス側へ移すほうが筋がいい。
サービス側で区切るという考え方は、Webサービスをアプリとして扱い、アプリごとに独立したワークスペースを与えるやり方に近い。アカウントごとに固定の置き場所ができ、再起動しても並びが残り、サービス単位ではなく案件単位でまとめられる。この案件単位のまとめ方はワークスペースで説明している。ブラウザ側に残す機能と、窓の中に持ってくる機能の線引きはできることにまとまっている。
無料と有料の違いは、分離の精度ではない。Chromeのプロフィールは、精度という意味では十分に分離できている。違いは、分けたあとの運用を人間の規律で持たせるか、道具に持たせるかにある。週に数回しか使わない2つ目のアカウントなら、無料のままでいい。1日に何十回も行き来しているなら、費用はすでに払っている。請求書に載らない形で払っているだけだ。判断に必要な金額の側は料金に、導入前に迷いやすい点はよくある質問にまとめてある。
よくある質問
Gmailの複数アカウントを無料で同時に開くだけなら、何を使えばいいですか?
Googleのマルチログインで足ります。右上のアイコンから別のアカウントを追加すると、URLの /u/0/ /u/1/ という番号で切り替わり、費用はかかりません。ただしCookieの保管場所は共有されるため、外部から届いたリンクは先頭のアカウントで開かれます。そこが困るならChromeのプロフィールを分ける方法に移るのが確実です。
シークレットウィンドウで2つ目のアカウントを使い続けられますか?
日常的な用途には向きません。シークレットは最後のウィンドウを閉じた時点でCookieを捨てる仕組みなので、毎回ログインし直すことになります。さらに開いているシークレットウィンドウ同士はセッションを共有するため、シークレットの中で2つの別アカウントを保つこともできません。一度きりのログイン確認用と考えるのが実態に合います。
プロフィールを増やすとMacは重くなりますか?
増やしただけでは重くなりません。負荷がかかるのは開いているプロフィールの数で、閉じているプロフィールはディスクを使うだけです。メモリに余裕がないMacでは、1つのウィンドウの中でタブを閉じるより、使っていないプロフィールのウィンドウごと閉じるほうが効き目が大きくなります。
無料のオープンソースアプリで十分で、有料の道具は要りませんか?
アカウントを分けるという目的だけなら、無料のオープンソースアプリで足りる場合が多いです。有料の道具を検討する理由は分離の精度ではなく、窓の並べ方や案件単位のまとめ方、再起動後に配置が残るかどうかといった運用側にあります。1日の切り替え回数が少ないうちは無料で始めて、手間の内訳が見えてから判断すると外しにくくなります。