Chromeプロファイルとは何か|アカウントを分ける仕組みと限界
chrome プロファイルとは何かを調べる人の多くは、機能の名前を知りたいのではなく、目の前の状況を直したくて調べている。仕事のGmailと個人のGmailが同じ窓の中で混ざる、パスワード管理の拡張機能が仕事のタブでも動いてしまう、リンクを開いたら別のアカウントの画面が出た。そういうときに出てくるのがプロファイルという言葉だ。この記事では、プロファイルがディスクの上で実際に何であるかから始めて、何が分かれて何が共有されるのか、タブ単位で分ける方法と何が違うのか、そしてプロファイルを作っても残る手間がどこにあるのかまでを順に見ていく。
Chromeのプロファイルとは、ディスク上の独立したフォルダのこと
Chromeのプロファイルは、機能というより保存場所の単位だ。Macでは ~/Library/Application Support/Google/Chrome/ の下に、最初のプロファイルが Default、追加したものが Profile 1、Profile 2 という名前のフォルダとして並んでいる。同じ階層にある Local State というファイルが、どのフォルダがどの表示名でどのアカウントに結び付いているかの対応表を持っている。
つまりプロファイルを切り替えるという操作は、Chromeが読み書きするフォルダを切り替える操作にほかならない。この理解があると、後の話がすべて説明できる。あるデータがそのフォルダの中にあるなら分かれるし、フォルダの外にあるなら分かれない。
分かれるのは4種類のデータだ。Cookieとサイトのストレージ(つまりログイン状態)、閲覧履歴と入力候補、ブックマーク、そしてインストールした拡張機能とその設定。加えて、サイトごとの通知やカメラの許可、保存したパスワード、開いていたタブの復元情報もプロファイルごとに持つ。
ここから分かるのは、「タブを分離する」という設定はタブ側には存在しないということだ。分離されているかどうかは、そのタブがどの保存領域に向けて開かれたかで決まっていて、決まる瞬間はタブが生まれた時点にある。だからタブの整理術や拡張機能でこの問題が直らない。それらが扱っているのは表示の側で、原因は保存の側にあるからだ。
分かれないものもはっきりしている。IPアドレス、ネットワーク経路、ブラウザの指紋、そしてChrome本体のバージョンと本体の設定の一部は共通だ。プロファイルは身元を隠す仕組みではなく、ログイン状態を分けるための仕組みだと押さえておく必要がある。
タブで分ける方法と、ウィンドウで分ける方法
「タブごとに別のアカウントでログインしたい」という要求に、ブラウザが用意している答えは2通りある。
ChromeとSafariが採っているのはウィンドウ単位の答えだ。プロファイルはそれぞれ自分のウィンドウで開き、1つのウィンドウの中に別プロファイルのタブを混ぜることはできない。SafariもmacOS Sonoma以降で同じ考え方のプロファイルを持っている。
Firefoxが採っているのはタブ単位の答えで、Mozillaが無料で配布しているMulti-Account Containersという拡張機能がこれにあたる。コンテナごとにCookieの保管場所が分かれ、1つのウィンドウの中に別アカウントのタブを並べられる。タブの上端に色の線が入り、特定のドメインを常に決まったコンテナで開くよう固定もできる。
どちらが優れているかではなく、区切りの単位が違うだけだ。プロファイルは拡張機能まで分かれる代わりに単位が大きい。コンテナは単位が小さい代わりに拡張機能は共有される。同じサービスの2アカウントを横に並べて同時に見たいならコンテナ、仕事と個人で拡張機能ごと切り離したいならプロファイルが噛み合う。
3つの区切り方を横に並べる
| Chromeのプロファイル | Firefoxのコンテナ | サービスごとのセッション | |
|---|---|---|---|
| 区切りの単位 | ウィンドウ | タブ | サービスの1つ1つ |
| Cookieが分かれる | 分かれる | 分かれる | 分かれる |
| 拡張機能が分かれる | 分かれる | 分かれない | 対象外 |
| 同じ窓に2アカウントを並べる | できない | できる | できる |
| 費用 | 無料 | 無料 | 道具による |
| ブラウザの外でも効く | 効かない | 効かない | 効く |
最後の行が、実際の使い勝手を一番大きく左右する。プロファイルもコンテナも、あくまで特定のブラウザの中の機能だ。SlackやカレンダーやターミナルからURLを開くと、macOSは既定のブラウザに渡すだけで、どのプロファイルで開くかまでは渡さない。分離が効いている範囲は、そのブラウザの内側で完結している。
3列目の「サービスごとのセッション」は、Webサービスをアプリとして扱うデスクトップアプリが採っている方式で、サービスの1つ1つに名前付きの保存領域を割り当てる。無料のオープンソースアプリでもこの方式が使われている。ブラウザの機能ではないため区切りがブラウザの外側にあり、上の表で唯一、最終行が「効く」になる。この方式が普段の作業でどう違って見えるかはFerdiumとの比較で扱っている。
プロファイルを作る前に決めておくこと
プロファイルの作成自体は、右上のアイコンから数十秒で終わる。効果を左右するのは操作ではなく、作る前に決める2点のほうだ。
1つ目は、何を単位にプロファイルを分けるか。サービスで分けると失敗しやすい。「Gmail用」「Slack用」と作っても、GmailにもSlackにも2アカウントあるなら結局中で混ざるからだ。アカウントの持ち主、つまり「会社の自分」「個人の自分」「取引先Aの自分」という単位で切るほうが、あとで破綻しにくい。
2つ目は、どのプロファイルを既定のブラウザにするか。外から届いたリンクは全部そこへ落ちる。使っている時間が長いプロファイルではなく、リンクが届く量が多いプロファイルを既定にするのが正解になる。多くの場合、それは仕事用だ。
作ったあとの運用では、プロファイルのウィンドウをmacOSのデスクトップ(操作スペース)に固定しておくと切り替えが楽になる。Dockのアイコンを長押しして表示されるメニューから、そのウィンドウを特定のデスクトップに割り当てておけば、探す操作がスワイプ1回に置き換わる。ターミナルから開く場合は --profile-directory="Profile 1" のようにフォルダ名を指定する方法もあるが、Chromeがすでに起動しているときは新しいプロセスとして扱わせる必要があるため、素直にウィンドウを開き分けるほうが確実だ。
分離が静かに崩れる4つのきっかけ
プロファイルやコンテナの設定は、壊れるときに音を立てない。エラーも警告も出ないまま、境界としての意味だけが失われていく。よくあるきっかけは次の4つだ。
- サービス名で分けてしまう。「Google用」というプロファイルを作ると、Googleアカウントが2つある時点で中で混ざる。残る名前はいつも人格のほうで、「会社の自分」「個人の自分」「取引先Aの自分」という単位なら、あとから新しいサービスが増えても置き場所に迷わない
- 一度だけ、境界の外でログインしてしまう。急いでいる朝に既定のプロファイルで仕事のアカウントにログインすると、その瞬間からCookieは2か所に存在する。すぐには何も起きないが、数週間後には両方のプロファイルに両方の人格が半分ずつ入った状態になる。壊れてはいないが、境界としては機能していない
- 2アカウントで使うドメインを固定してしまう。Firefoxのコンテナ固定は、ドメインとアカウントが1対1で対応しているから効く。同じドメインを2アカウントで使う場面では、固定した側のセッションに引き込まれるだけになる
- 拡張機能が境界をまたぐことを忘れる。Firefoxのコンテナでは拡張機能が全コンテナで動く。仕事と個人を分けるだけなら許容できても、守秘義務のある取引先どうしを分ける用途では単位が合わない。その場合はコンテナではなくプロファイルが正しい単位になる
4つに共通しているのは、分離そのものは保存領域の性質なのに、境界を保っているのは人間の習慣だという点だ。ログインのたびに判断を求める仕組みは、忙しい日にいつか外れる。外れても警告は出ない。
プロファイルを作っても残る4つの手間
分離そのものは、プロファイルで完全に達成できる。それでも残るものが4つある。どれも分離の失敗ではなく、単位の大きさから来る問題だ。
- リンクの行き先が決められない。既定のブラウザという設定はOSに1つしかなく、プロファイルまでは指定できない。仕事のURLが個人のプロファイルで開けば、権限エラーの画面からURLをコピーし直すことになる。この往復は1日に何度も起きる
- 通知の許可を何度も出すことになる。通知はプロファイルごと、サイトごとに許可する仕組みなので、プロファイルが3つあれば同じサイトに3回許可を出す。届いた通知にサイト名は出るが、どのアカウント宛かは出ない
- ウィンドウが増える。プロファイルはウィンドウを生むため、タブを探していた手間がウィンドウを探す手間に移る。Mission Controlを開いて目で探している時点で、解決したのは分離だけだったことになる
- 再起動すると並びが消える。プロファイルの設定は残るが、どのウィンドウにどのタブを開いていたかという配置は残らない。毎朝、同じ形を手で組み直すことになる
設定を終えたら、判断する前に一度だけ確認しておくとよい。各アカウントの主要なサービスを開き、画面の隅に出ているアカウント表示が、意図したプロファイルと一致しているかを見る。「いま正しいタブが開いているから正しい」状態と、「閉じて開き直しても正しい」状態は別物だからだ。確かめ方は簡単で、ブラウザを完全に終了してから開き直し、固定したサイトがどのアカウントに戻るかを見ればいい。ここで想定と違う結果が出るなら、分離ではなく既定のプロファイルの選び方に原因がある。
これらは秒数で見れば小さい。それでも効くのは、時間ではなく注意の連続性を切るからだ。5秒の中断が1日に何十回も起きる状態は、合計の秒数以上のものを削っていく。
タブやウィンドウが単位として合わなくなるとき
見分け方は簡単で、繰り返しがあるかどうかだ。毎朝、同じ3つのサービスを同じ3つのプロファイルで開き直しているなら、そのタブはもうタブとして使われていない。ブラウザの中で描かれているだけのアプリを、毎日手で組み立て直していることになる。
その段階では、区切りの単位をタブやウィンドウから、サービスと案件の側へ移すほうが素直だ。アプリごとに独立したワークスペースを持たせると、アカウントごとに固定の置き場所ができ、再起動しても配置が残り、サービス単位ではなく案件単位でまとめられる。「取引先Aのメールとチャットと資料を1つの場所に」というまとめ方は、プロファイルの発想には無いものだ。この案件単位のまとめ方はワークスペースで、ブラウザ側に残す機能と窓の中に持ってくる機能の線引きはできることで説明している。どのサービスが独立したセッションを持てるかは使えるアプリに一覧がある。
一方で、すべてをプロファイルから移す必要はない。調べ物や一度きりのログインは、タブのままが一番速い。判断の線は使う頻度にある。開いたら閉じるものはタブ、毎日開いて閉じないものはすでにタブではない、という切り分けで十分に足りる。
よくある質問
Chromeのプロファイルとシークレットウィンドウは何が違いますか?
シークレットは最後のウィンドウを閉じた時点でCookieを捨てる仕組みで、一度きりのログイン確認に向いています。プロファイルはディスク上のフォルダとしてCookieも履歴も拡張機能も残り続けるため、毎日使う2つ目のアカウントを置く場所になります。開いているシークレットウィンドウ同士はセッションを共有するので、シークレットで2アカウントを保つことはできません。
プロファイルを削除するとデータはどうなりますか?
そのプロファイルのフォルダごと消えるため、履歴、ブックマーク、保存したパスワード、拡張機能の設定がまとめて失われます。Googleアカウントで同期を有効にしていた項目はサーバー側に残りますが、同期していなかった項目は戻りません。削除の前に、ブックマークの書き出しと同期の状態を確認しておくのが安全です。
プロファイルを分ければ会社に見られなくなりますか?
なりません。プロファイルが分けているのはCookieとサイトのデータだけで、IPアドレスも通信経路もブラウザの指紋も共通です。会社が管理しているMacやネットワークからは同じように通信が見えます。プロファイルはアカウントを分けるための仕組みであって、匿名性のための仕組みではないと考えてください。
プロファイルはいくつまで作れますか?
上限で困ることはまずなく、実際に効いてくるのはメモリと見分けやすさです。開いているプロファイルはそれぞれブラウザのプロセスを持つためメモリを使い、閉じているものはディスクを使うだけです。見分けやすさの限界のほうが先に来ることが多く、アイコンや色が5つを超えたあたりから、切り替えにかかる時間が分離の利点を上回りはじめます。