chromeのプロファイルとは何か|中身はディスク上のフォルダ
Chromeのプロファイルという言葉は、画面の右上に出ている丸いアイコンを指していることもあれば、そこにログインしているGoogleアカウントを指していることもあります。この2つを同じものとして扱っていると、「プロファイルを分けたのに履歴が混ざる」「消したらパスワードまで消えた」といった食い違いが起きます。プロファイルの正体はディスク上のフォルダで、そこに何が入っていて何が入っていないかを見れば、プロファイルで直せる不便と直せない不便がはっきり分かれます。
プロファイルの実体はフォルダひとつ
macOSのChromeは、ユーザライブラリのApplication Supportの下にプロファイルを置いています。最初に作られたプロファイルのフォルダ名は Default で、そのあとに追加したものは作られた順に Profile 1、Profile 2 という名前になります。
このフォルダの中を開くと、プロファイルという言葉が急に具体的になります。ログイン状態を保っているクッキーのデータベース、閲覧履歴のデータベース、保存したパスワードのファイル、ブックマークのファイル、すべての設定をまとめたPreferencesというファイル、拡張機能の入ったディレクトリ、住所やカード情報の入力補助に使うデータ。この一式がプロファイルであって、それ以上でも以下でもありません。
ここから2つのことが分かります。1つは、プロファイルを増やすというのは、この一式をもうひと組作るという意味だということ。もう1つは、それぞれのプロファイルがキャッシュも履歴も拡張機能も独立して抱えるので、ディスクの使用量はプロファイルの数だけ増えるということです。共用されるのは実行中のChrome本体だけで、データは共用されません。
画面に出ている名前と、フォルダの名前は別物
プロファイルの表示名を「仕事」に変えても、ディスク上のフォルダ名は変わりません。表示名はLocal Stateという別のファイルに、プロファイルごとの短い記録として書かれています。フォルダ名は作られたときのまま固定です。
つまり、画面で「仕事」と表示されているプロファイルの実体が Profile 7 というフォルダである、という状態はごく普通に起きます。バックアップを取るときや、コマンドで特定のプロファイルを直接開こうとしたときに、この食い違いでつまずく人が多い場所です。表示名とフォルダ名は別の層にある、と覚えておくと迷いません。
なお、Googleアカウントでログインすると表示名は自動的にアカウント名になります。名前を自分で決めたい場合は、ログインしたあとに改めて変更する必要があります。
分かれているのは「ブラウザが預かっているもの」
Chromeのヘルプは、プロファイルの役割をこう説明しています。
プロファイルを使用すると、Chrome 上の情報全体(ブックマーク、履歴、パスワードなど)を、プロファイルごとに分離できます。 出典: support.google.com
実際に分かれているのは、次のものです。
- クッキーとサイトのストレージ。ログイン状態を保っているのはここで、実務上いちばん効くのはこの1点
- 保存したパスワード、住所、カード情報などの入力補助データ
- 閲覧履歴と、アドレスバーが履歴から出してくる候補
- ブックマークとブックマークバー
- インストールした拡張機能と、その設定や権限
- カメラ・マイク・通知・位置情報といったサイトごとの許可
- 既定の検索エンジン、起動時に開くページ、テーマ
クッキーがタブ単位ではなくプロファイル単位で保存されている、という一点が重要です。同じドメインに対して2つのログイン状態を同時に持てるのはこのためで、タブをいくら並べ替えても解決しない問題が、プロファイルを分けると解決するのはここに理由があります。
分かれていないものは、ブラウザの外にある
分離はブラウザの内側で止まります。外に出た瞬間から先は共通です。
ダウンロードしたファイルは、どのプロファイルで取得しても同じフォルダに落ちます。仕事用で落とした資料と私用で落とした画像が同じ場所に並び、ファイル側にはどちらから来たかの手がかりが残りません。ここを分けたい場合は、プロファイルごとに保存先を変える設定を自分で入れる必要があります。
通信も共通です。どのプロファイルから出ても同じ回線を通り、同じグローバルIPアドレスとしてサイトから見えます。画面の大きさ、OSのバージョン、入っているフォントといった、いわゆるフィンガープリントに使われる情報も同じです。プロファイルを分けることは、サイトから見て別人になることではありません。
そして、アクセスの制限もありません。Chromeのヘルプは次のように注意しています。
デバイスは信頼できるユーザーとだけ共用してください。デバイスを使用するユーザーは、そのデバイスに設定されている他のどの Chrome プロファイルにも切り替えることができます。 出典: support.google.com
プロファイルにパスワードはかかりません。切り替えは2回のクリックで済み、認証は一度も求められません。プロファイルは整理のための境界であって、セキュリティの境界ではない。ここを取り違えると、人に貸したMacで意図しない画面が開かれる事故につながります。
ゲストとシークレットは、名前が似ているだけの別の仕組み
会話の中では3つとも「プロファイル」と呼ばれがちですが、動きはまったく違います。
ゲストは、閉じた時点で中身が破棄される空のセッションです。ブックマークも拡張機能も履歴も持たず、同じMacにある他のプロファイルのデータには一切触れません。人にMacを数分貸すための仕組みです。
シークレットウィンドウは、いま使っているプロファイルから開かれ、そのプロファイルに属したままです。開いた時点ではクッキーを引き継がず、閉じるとディスクに何も残しませんが、同じプロファイルから開いた複数のシークレットウィンドウは1つのセッションを共有します。2つ目のアカウントを常時開いておく用途には向きません。
| 仕組み | ブックマークと拡張機能 | 再起動後も残る | 他のプロファイルとの分離 |
|---|---|---|---|
| プロファイル | 持つ | 残る | ブラウザのデータは分離 |
| ゲスト | 持たない | 残らない | 分離される |
| シークレット | 拡張機能は許可すれば動く | 残らない | 元のプロファイルに属する |
そもそも、なぜこの仕組みがあるのか
プロファイルは、ブラウザを売るために後から足された便利機能ではありません。Webの作りから必然的に出てきたものです。クッキーはサイトごとに紐づき、ブラウザの保存領域1つにつき1組しか置けません。だから、保存領域が1つしかなければ、1つのサイトに保てるログインは1つだけになります。Chromeのプロファイルも、Firefoxのコンテナも、2つ目のブラウザを入れる回避策も、やっていることは全部同じで、2つ目の保存領域を用意しているだけです。
もともと想定されていたのは、家庭で1台のパソコンを共有する状況でした。家族の検索候補が自分のアドレスバーに出てこないようにする。プロファイルはその問題を解くために生まれたもので、設定画面の言葉づかいにも名残があります。項目は「ユーザー」として並び、追加は「他のユーザーを追加する」という言い方になっています。
いま多いのは、それとは違う使われ方です。1人、1台、複数の役割。Chromeはこの状況のために設計されたわけではないので、噛み合わない部分がそのまま残っています。リンクにはどの役割のものかという情報が付いていませんし、通知にもどのプロファイルから出たかは書かれていません。1日に何度も切り替えている人は、家庭内共有のために作られた仕組みを別の目的に流用していることになります。日々感じる引っかかりの正体は、この設計と用途のずれです。
どの窓がどのプロファイルかを見分ける
見分け方はいくつかあり、それぞれ答えてくれることが違います。窓の右上のアイコンは、いまのプロファイルの画像と色を示します。いちばん速い確認方法ですが、似た色を選んでしまうといちばん間違えやすい方法でもあります。
Macに複数のプロファイルがある状態では、ウインドウのタイトル部分にプロファイル名が出ます。色より確実です。ターミナルを使う人であれば、動いているChromeのプロセスには起動時に指定されたプロファイルのフォルダ名が残っているので、表示名ではなくフォルダ名で確認できるのはこの方法だけです。
作った時点で色をはっきり離しておくこと、そしてChromeが自動で入れるメールアドレスのままにせず短い名前を付けておくことで、迷いの大半は習慣になる前に消せます。
macOSのユーザアカウントとは範囲が違う
似た話として比べられがちですが、扱う範囲がまったく違います。macOSのユーザアカウントは、ファイルシステム、アプリケーション、キーチェーン、デスクトップ、動いているプロセスまで含めて丸ごと分けます。切り替えるにはログアウトが必要で、Mac全体がついてきます。
Chromeのプロファイルが分けるのはブラウザの中の状態だけです。メールアプリにもFinderにも、同じMacに入っている別のブラウザにも影響しません。2人でMacを共有するなら分けるべきはOSのユーザアカウントで、1人が2つのログインを同時に持ちたいだけならブラウザのプロファイルで足ります。目的に対して道具の大きさを合わせる、という選び方になります。
削除は取り消せない
プロファイルを削除する操作は、そのフォルダごと消す操作です。ヘルプにも、削除するとブックマーク・履歴・パスワードなどの設定がパソコンから削除される、と明記されています。ゴミ箱に入るわけではないので、あとから戻すことはできません。
ただし、消えるのはローカルのデータです。そのプロファイルにログインしていたGoogleアカウント自体は残りますし、同期が有効になっていたブックマークやパスワードはアカウント側に残っています。新しいプロファイルを作って同じアカウントでログインすれば戻ってきます。逆に言えば、同期をオフにしたまま使っていたプロファイルを消すと、本当に何も残りません。削除の前に確認すべきはこの一点です。
プロファイルが3つを超えたあたりで、問題がすり替わる
プロファイルという考え方は2つまでは素直に効きます。仕事と私用、あるいは会社支給のアカウントと個人のアカウント。ここまでは切り替えの回数も少なく、どの窓が何かも見分けがつきます。
3つ、4つと増えたところで、困りごとの性質が変わります。ログインが混ざる問題は解決しているのに、今度は窓が多すぎて目当てのものが見つからない。通知はどのプロファイルから来たか分からないまま届く。メールやチャットのリンクを踏むと、直前に触っていた窓で開いてしまう。これらはプロファイルを1つ増やしても直りません。分ける単位がアカウントのままだからです。
ここで効いてくるのが、分ける単位をアカウントではなくアプリに置き換える考え方です。GmailはGmailの窓、SlackはSlackの窓、という持ち方にすると、アプリごとに独立したワークスペースが保たれ、切り替えは「どの窓を選ぶか」ではなく「どの仕事をするか」に戻ります。用途ごとに独立した領域を持つ考え方はワークスペースで整理されていて、実際に何ができるかはできることにまとまっています。同種の道具として先行しているものとの違いを確かめたい場合はWaveboxとの比較が判断材料になります。
まず手を付けるなら、いま存在するプロファイルを全部開いて、それぞれが何を抱えているかを確かめるところからです。多くのMacでは、実際に毎日使っているのは1つか2つで、残りは一度きりの用事のために作られてそのまま放置されています。切り替えではなく窓探しに時間を使っているなら、増やすべきはプロファイルではなく、窓の持ち方そのものです。
よくある質問
Chromeのプロファイルを削除するとGoogleアカウントも消えますか?
消えません。削除されるのはMac上のフォルダで、そこに入っていたブックマーク・履歴・保存パスワード・設定が消えます。Googleアカウントはそのまま残り、別のプロファイルで再びログインできます。同期が有効だったデータはアカウント側に残っているので、ログインし直せば戻ってきます。
プロファイルを分ければ他の人に中身を見られませんか?
見られます。プロファイルにパスワードはかかっておらず、そのMacを使える人はクリック数回でどのプロファイルにも切り替えられます。プロファイルは整理のための区切りであって、セキュリティの区切りではありません。人と本当に分けたい場合はmacOSのユーザアカウントを分けてください。
プロファイルの表示名を変えたのに、フォルダ名が変わりません。
仕様どおりです。表示名はLocal Stateという別ファイルに記録され、フォルダ名は作成時のまま Default や Profile 1 で固定されます。バックアップやコマンドから特定のプロファイルを開くときは、表示名ではなくフォルダ名で指定する必要があります。
プロファイルはいくつまで作れますか?
Chromeが公表している上限はなく、20を超える数を運用している例もあります。実際の上限はディスクの容量と、窓を見分けられるかどうかです。3つか4つを超えたあたりから、目当ての窓を探す手間のほうが、分けて得られる利点より大きくなっていきます。