複数 アカウント アプリ 共有|3つの困りごとの見分け方

複数のアカウントとアプリの共有をまとめて検索している人は、実際には性質のまったく違う3つの状況のどれかにいる。1人が同じサービスの複数のアカウントを持っている状況、チームが1つのIDを回している状況、1台のMacを複数の人が使っている状況だ。どれも「複数」と「共有」で説明できてしまうが、手当ての場所は3つとも違う。片方の答えをもう片方に当てると、状況が悪くなることさえある。

同じ言葉で呼ばれている3つの状況

1つ目は使い分けの困りごとになる。勤務先のアドレス、取引先から発行されたアドレス、個人のアドレスが同じサービスにあり、同じ午後に全部必要になる状況だ。他人と何かを共有しているわけではない。詰まっているのは、リンクを踏んだときにブラウザがどのセッションを差し出すか、という一点だけになる。

2つ目は管理の困りごとになる。有料の席が1つ、パスワードが1つ、必要な人が4人。ここでは誰もアカウントを切り替えていない。全員が同じものを使っているからだ。困りごとが表に出るのは後日で、誰かが辞める日か、2段階認証の確認が休暇中の人の携帯に届いた瞬間になる。

3つ目は端末の困りごとになる。1台のMacに複数のユーザーアカウントがあり、同じアプリを全員が使いたい状況だ。これは3つの中で最も痛みが小さく、macOS側に正式な答えが用意されている。

見分け方は1つの質問で足りる。「アカウントの中身を、自分以外の人も見る必要があるか」。いいえなら1つ目、はいなら2つ目、共有しているのがアカウントではなく机の上の1台なら3つ目になる。

1人で複数のアカウントを持っている場合

サービス側がアカウントの同時ログインを用意していることがある。Googleはその代表で、しかも境目がどこで崩れるかをヘルプに正直に書いている。

設定はアカウントごとにできますが、デフォルトのアカウントの設定が適用される場合もあります。 出典: support.google.com

この一文の裏側が実用的な情報になる。同じヘルプには、複数のアカウントにログインしていると、どのアカウントを使っているかGoogleが判断できない場合があると書かれている。例として挙がっているのは、新しいブラウザウィンドウを開いたときで、その場合はウェブとアプリのアクティビティや広告のカスタマイズといった、デフォルトのアカウントの設定が適用されることがある。Google Playの国もデフォルトのアカウントの支払い情報で決まるため、異なる国のアカウントを併用していると、意図しない側の内容が表示されることがある。

そしてデフォルトのアカウントは、多くの場合いちばん最初にログインしたアカウントになる。規則はそれだけだが、これが分かりにくい挙動をひととおり説明する。昨日まで正しく動いていたのに、ブラウザを再起動して入る順番が変わっただけで結果が変わる、という現象がそれになる。

アカウント切り替えを持っていないサービスのほうが、実は厄介になる。ログイン状態はCookieに入っていて、Cookieはタブではなくブラウザのプロファイルに属している。つまり分ける手段はブラウザ側にしかない。プロファイルを増やすか、サービスごとに窓とセッションを分けるブラウザを使うか、選択肢はその2つになる。後者の分類の中でも製品ごとに考え方が違う点はWaveboxとの比較にまとめてある。

チームで1つのIDを回している場合

パスワードを配るやり方は、始めるのが速くて、畳むのが高い。しかも費用の出方には順番がある。

最初に壊れるのは2段階認証になる。確認コードが1人の携帯に届く形だと、他の全員がその人の起床と応答を待つことになる。認証アプリに移しても、共有の秘密鍵を全員が取れる場所に置くことになるので、同じ問題が一段下にずれるだけになる。

次に消えるのが記録になる。サービス上のすべての操作が1つのアカウントの行いとして残るため、消えたデータも、送られたメッセージも、変更された設定も、誰がやったのか分からない。道具の側に答えがないので、記憶をたどって再構成することになり、それが必要になる場面はたいてい急いでいる。

高くつくのは退職や交代の場面になる。1人のアクセスを止めるにはパスワードを変えるしかなく、変えれば全員がログアウトする。本来なら管理画面の1操作で済むはずのものが、全員の予定を合わせる行事になる。先延ばしにしたくなるのはこのためで、辞めた人の手元に生きた認証情報が残るのもこのためになる。

初日から出る小さな不具合もある。多くのWebアプリは1つのアカウントに1つのセッションを前提にしているため、同時編集で後から保存したほうが黙って勝つ、新しいログインが古いログインを追い出す、といった動きになる。既読の印も、在席の表示も、通知のバッジも意味を失う。存在しない1人の人物について、サービスが説明し続けている状態になるからだ。

料金の面も無視できない。多くのサービスは席の数で値段が決まり、認証情報の扱いは利用規約に書かれている。規約は製品ごとに違い、改定もされるので、確かなのは「いま契約しているプランの、いまの規約を読む」ことだけになる。

パスワードを配らずに権限だけ渡す方法

これのために用意された仕組みを持つサービスは多く、できることも思ったより広い。上限が公開されているGmailの委任が分かりやすい例になる。

代理人とは、アカウント所有者に代わってアカウント内のメールを閲覧、送信、削除できるユーザーのことです。代理人があなたのアカウントからメールを送信すると、代理人のメールアドレスが表示されます。 出典: support.google.com

公開されている上限は、個人用のgmail.comアカウントで最大10人、仕事用または学校用のアカウントで最大1,000人になる。一般的な使い方であれば、同時にアクセスできる代理人は40人とされている。代理人はパスワードを変更できず、チャットも使えない。そして送信したメールには代理人自身のアドレスが出る。パスワードを配ると失われる記録が、ここでは残る。

設定するときに知っておきたい実務的な点が2つある。代理人に届く招待は1週間で期限が切れる。そして権限を付けてから実際に使えるようになるまで、最長で24時間かかることがある。必要になった朝に設定して、動かないから壊れていると判断してしまう例がこれになる。

委任のほかにも、チーム向けの製品には2つの形がよくある。1つは権限の段階で、同じ場所に入れるが操作できる範囲を狭める形になる。もう1つはゲストや外部の共同作業者で、アカウント全体ではなく特定のチャンネルや案件だけに招く形だ。どちらも席を1つ増やすより安く設定されていることが多く、誰の操作かという記録も残る。

やり方 サービスが記録する行為者 1人だけ外すとき 2段階認証の届き先
パスワードを共有 アカウント(個人は不明) パスワード変更で全員ログアウト 1台の端末に集中
権限の委任 委任された本人 その人の委任だけ解除 所有者の端末のまま
席を分ける 各自 その席を停止 各自の端末

どの仕組みも無いサービスでは、パスワード管理ツールの共有の保管庫が次善の策になる。配布と定期変更は楽になるが、記録は残らない。サービスから見えているのは相変わらず1つのアカウントだからだ。

どの製品にその道が用意されているかを見分ける手がかりは単純で、設定画面に「端末」ではなく「人」を並べる欄があるかどうかになる。メンバー、共同編集者、代理人、ゲストといった見出しでまとめられていることが多い。その欄があるなら正規の道はそこにあり、後片付けの手間まで含めれば、認証情報を配るより結局は安く済む。サポートに問い合わせる場面でも差が出る。窓口はアカウントに登録されたアドレスとやり取りし、本人確認もその1人に向けて行われるため、共有しているアカウントの本人確認に誰も答えられない、という時間の掛かる展開になりやすい。

1台のMacを複数のユーザーで使う場合

3つ目には、はっきりした答えがある。アプリケーションフォルダの直下に入れたアプリは、そのMacの全ユーザーアカウントから使える。ホームフォルダの中のアプリケーションフォルダに入れたものは、そのユーザーだけのものになる。インストーラの既定はたいてい前者なので、意識しないまま共有できていることが多い。

一方で、アプリがユーザーごとに保存するものは引き継がれない。環境設定、ログイン状態、ブラウザのプロファイル、キーチェーンの項目は、それぞれのホームフォルダの中にある。つまり同じアプリでも、2人が起動すれば実質2つの別インストールとして動く。ライセンスが端末ではなく人に紐づいている場合、この違いが有効化をもう1つ必要とするかどうかを決める。

切り替えのたびにログアウトする必要はない。Appleはファストユーザスイッチについてこう説明している。

1台のMacを複数のユーザが使用している場合、管理者は、ファストユーザスイッチをオンにして、同時に複数のユーザがログインしているときに素早くアカウントを切り替えられるようにできます。 出典: support.apple.com

設定はシステム設定のメニューバーの項目から行い、メニューバーとコントロールセンターのどちらにも置ける。代償はメモリで、両方のセッションが読み込まれたままになる。ファイルを行き来させたい場合は、それぞれのホームフォルダではなく共有フォルダを経由することになる。相手のホームフォルダは既定では覗けないため、置き場所を先に決めておかないと、ファイルの受け渡しのたびに手が止まる。

なお、macOSのユーザーアカウントを分けると、ブラウザのセッションも完全に分かれる。1つ目の使い分けの困りごとに対しても効くが、切り替えのたびにパスワードを入れ直し、反対側に開いていた窓を置き去りにすることになる。重いやり方であることは押さえておきたい。

どこを直すかを決める

ここまでを踏まえると、手を入れる場所は状況ごとに決まっている。

自分以外が中身を見る必要がないなら、直す対象はブラウザになる。アプリごとに窓とセッションを分けておけば、いまどのアカウントが手前にあるかが目で見て分かる。名前の付いた集まりとしてアプリを束ねる考え方はワークスペースに整理してある。

自分以外が中身を見る必要があるなら、ブラウザの設定では1ミリも解決しない。委任、席の追加、権限の段階のどれかで、サービス側に手を入れることになる。ブラウザにできるのは、どの認証情報を送るかを決めることだけで、誰がキーボードの前に座っていたかを記録することはできない。

共有しているのがアカウントではなく1台のMacなら、macOSのユーザーアカウントとファストユーザスイッチで足りる。追加のソフトウェアは要らない。

手元の3つか4つのサービスを紙に書き出して、使い分け・管理・端末のどれかを横に書いていくと、たいてい行き先は割れる。管理と書いた行が、今週のうちに委任か席の追加へ移すべきものになる。使い分けと書いた行に対しては、アプリごとに独立したワークスペースを持つ道具が効く。何ができるようになるかはできることに、費用の目安は料金に書いてある。

よくある質問

1つのアプリのアカウントをチームで共有してもよいですか?

可否は製品と契約しているプランによって決まり、規約は改定されるため、いま契約しているプランの現在の規約を読むのが唯一確実な答えになります。規約とは別に実務上の問題もあります。2段階認証が1台の端末に集中し、誰が操作したかの記録が残らず、1人を外すためにパスワードを変えると全員がログアウトします。

パスワードを渡さずに他の人に使ってもらう方法はありますか?

サービス側に委任や権限の仕組みがあれば使えます。Gmailの場合は代理人を追加でき、個人用のアカウントで最大10人、仕事用または学校用で最大1,000人まで設定できます。代理人が送ったメールには代理人自身のアドレスが表示され、パスワードの変更はできません。招待は1週間で期限切れになり、使えるようになるまで最長24時間かかります。

1台のMacで別のユーザーアカウントからも同じアプリを使えますか?

アプリケーションフォルダの直下にインストールしてあれば使えます。ただし環境設定、ログイン状態、キーチェーンはユーザーごとに保存されるため、それぞれのアカウントで改めてログインすることになります。ライセンスが端末ではなく人に紐づいている場合は、もう1つ分の有効化が必要かどうかを確認してください。

複数のアカウントに同時ログインすると設定が混ざりますか?

混ざる場合があります。Googleは、複数のアカウントにログインしているとどのアカウントを使っているか判断できない場合があり、ウェブとアプリのアクティビティや広告のカスタマイズなどでデフォルトのアカウントの設定が適用されることがあると説明しています。デフォルトは多くの場合いちばん最初にログインしたアカウントなので、入る順番が変わると挙動も変わります。

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