ブラウザのタブとウィンドウの違い|Macで効く4つの層

ブラウザのタブとウィンドウの違いを調べる人は、たいてい「どちらでも同じでは」と思いながら検索しています。実際、ページを表示するという一点だけを見れば同じです。違いが出るのは、その外側にある4つの層です。macOSが窓をどう扱うか、ブラウザが内部でどう処理を分けるか、ログイン状態がどこに保存されるか、そして目当てのものを探すときに何を手がかりにするか。この4層を分けて見ると、「タブを増やすべき場面」と「ウィンドウに分けるべき場面」がはっきりします。

同じに見えるのは、持ち主が同じ層にいないから

タブはウィンドウの中に住んでいます。ウィンドウはアプリの中に住み、アプリはmacOSの中に住んでいます。つまりタブとウィンドウは対等な選択肢ではなく、入れ子の親子です。この関係を押さえると、次の非対称がすぐに理解できます。

  • ウィンドウは移動・整列・別画面への追い出しができる。タブはできない
  • ウィンドウはアプリ切り替えの対象になる。タブはならない
  • タブは1つの描画領域を奪い合う。ウィンドウは横に並べられる
  • タブは閉じても再度開ける履歴が残る。ウィンドウを閉じると中のタブがまとめて消える

「どちらが優れているか」ではありません。タブは密度を上げる仕組みで、ウィンドウは距離を作る仕組みです。1日の作業のうち、密度を上げたい対象と、距離を置きたい対象は別々にあります。それを1つの窓に混ぜると、どちらの利点も出ません。

第1の層: macOSから見ると、タブは存在していない

OSが認識しているのはウィンドウまでです。Mission Control、操作スペース、ウィンドウのタイル表示、アプリの切り替え、これらの機能はすべてウィンドウを単位に動いており、タブは対象外です。Appleのユーザガイドは、Mission Controlの役割をこう説明しています。

Mission Controlでは、Macのデスクトップ上で開いているすべてのウインドウが1つのレイヤーに整理されるため、必要なものを簡単に見つけることができます。 出典: support.apple.com

ここで整理されるのはウィンドウです。1つのウィンドウに40個のタブを積んでいる人は、Mission Controlを開いても小さなサムネールが1枚出てくるだけで、その中身は見えません。OSが用意した整理の仕組みを、自分でひとつも使えていない状態になります。

macOSが窓に対して用意しているものは、他にもあります。同じアプリのウィンドウだけを一覧するアプリExposéはOptionキーと下矢印キー、操作スペースの行き来はControlキーと左右の矢印キー、ウィンドウの半分ずつの配置は画面の端へのドラッグかウィンドウ左上の緑のボタンです。操作スペースは16個まで作れるので、案件ごとに面を分けるだけの余地もあります。タブに置いたものは、これらの入口のどこからも掴めません。

第2の層: ブラウザの内側では、タブが処理の単位になる

OSから見えないタブも、ブラウザの内側では明確な単位です。現在のChromiumは、開いているサイトごとに別の処理として動かす作りになっており、1つのサイトの不具合が別のサイトに波及しない設計になっています。The Chromium Projectsがこの設計の代償として挙げているのがメモリで、タブを多く開いてすべてのサイトを分離した状態では、使用量が10〜13%上乗せされると説明されています。この負荷はウィンドウを分けても減りません。ウィンドウを分けたところで、開いているサイトの総数が同じなら処理の数も同じだからです。「ウィンドウに分けると重くなる」という思い込みは、ここを取り違えたものです。

一方で、使っていないタブを眠らせる仕組みは各ブラウザにあります。Chromeのヘルプは、メモリセーバーの動きをこう書いています。

パソコンのメモリを節約して、アクティブなタブがスムーズに動作するよう、使用していないタブを無効にします。アクティブでないタブにアクセスすると、自動的に再読み込みされます。 出典: support.google.com

再読み込みされるという点が重要です。書きかけのフォーム、長い会話ログの途中、読み込みに時間のかかる管理画面。これらを裏のタブに置いておくと、戻ったときに状態が失われていることがあります。ずっと生きていてほしいものは、眠らされにくい前面のウィンドウに出しておくほうが確実です。

第3の層: ログイン状態は、タブにもウィンドウにも属していない

ここが最も誤解の多い層です。同じアカウントで別のウィンドウを開いても、ログインは分かれません。ログイン状態を保っているCookieは、タブでもウィンドウでもなく、プロファイルと呼ばれる保存領域に属しているからです。Chromeのヘルプはプロファイルをこう説明しています。

プロファイルを使用すると、Chrome 上の情報全体(ブックマーク、履歴、パスワードなど)を、プロファイルごとに分離できます。 出典: support.google.com

同じサービスに2つのアカウントで同時に入りたいなら、必要なのは2つ目のウィンドウではなく、2つ目の保存領域です。逆に言えば、保存領域を分ければウィンドウは自動的に分かれます。SafariもChromeも、プロファイルの切り替えは新しいウィンドウを開く操作として実装されています。プロファイルが変わればウィンドウが変わる、という順番であって、その逆ではありません。

注意したいのは、この分離が施錠ではないことです。Chromeのヘルプは、同じパソコンを使う人は他のプロファイルへ自由に切り替えられると明記しています。分離は取り違えを防ぐためのものであり、他人から中身を守る仕組みではありません。守る必要があるならOSのユーザーアカウントを分けるのが筋です。

第4の層: 探すときの手がかりが、まったく違う

タブが増えると、まず失われるのは文字です。タブの幅は本数に反比例して縮み、10本を超えたあたりで見えるのはファビコンだけになります。同じサービスのタブが5本並んでいれば、そこから目当ての1本を選ぶ手がかりは何もありません。

ウィンドウは違います。位置、大きさ、どの操作スペースにいるか、どの画面にいるか。これらは全部、記憶に残る手がかりになります。「左の画面の下半分にあるやつ」は、探さなくても手が伸びます。人が場所で物を覚えるのは、机の上でも画面の中でも同じです。

タブ ウィンドウ
増やしたときのコスト 幅が縮んで名前が読めなくなる 画面の面積を取り合う
macOSの整理機能 対象外 Mission Control・操作スペース・タイル表示
手がかり 文字とファビコン 位置・大きさ・面
同時に見る できない 並べれば見える
眠らされるか 眠る(戻ると再読み込み) 前面なら起きたまま

タブに置くか、ウィンドウに分けるかの判断基準

層ごとの性質が分かれば、置き場所の判断は機械的に決められます。次の4つのどれかに当てはまるものは、タブから出してウィンドウにします。

  • 1日に何度も戻るもの。メール、チャット、課題管理。1日に50回戻るものをタブに置くと、探す数秒がそのまま50回分の損失になります
  • 別のものと並べて見るもの。仕様書と実装、請求書と明細、原稿と資料。同じウィンドウのタブでは、原理的に並べられません
  • 状態を持っているもの。書きかけのフォーム、走らせている処理、長い会話。再読み込みで消えるものは前面に置きます
  • 別アカウントで入るもの。これはウィンドウを分けるだけでは足りず、保存領域から分ける必要があります

反対に、調べ物のために開いた検索結果、参照して閉じるドキュメント、1回きりのリンクは、タブのままで構いません。これらは密度を上げてよい対象です。作業の終わりにウィンドウごと閉じれば、まとめて片付きます。

切り替えにかかる操作の数を、実際に数えてみる

判断基準を体で納得するには、切り替え1回にかかる操作を数えるのが早道です。

タブの場合、左から数えて9番目までは⌘と数字キーで直接飛べますが、10番目以降に直接の入口はありません。⌘とoption と左右の矢印キーで隣に移るか、マウスで細い帯の中を探すことになります。タブが30本あるとき、目当ての1本に届くまでの操作は、位置を覚えていなければ数回では済みません。

ウィンドウの場合は数え方が変わります。同じアプリのウィンドウは⌘とバッククォートで巡回でき、枚数が2枚なら1回、3枚なら最大2回で目的地に着きます。別のアプリなら⌘とtabで直接移れます。ここに操作スペースの割り当てを足すと、Controlと左右の矢印キーで面ごと移動できるようになります。

この差は1回では小さく見えますが、行き来の回数を掛けると効いてきます。1日200回切り替える人にとって、1回あたり2秒の差は1日で400秒、ひと月で3時間近くになります。タブに置いたまま我慢するか、窓に出して回数を減らすかは、この掛け算で決めるのが合理的です。

タブをまとめる機能は、ブラウザごとに性格が違う

タブのまま整理したい場合、各ブラウザはまとめる機能を用意しています。ただし、その性格は同じではありません。

Chromeのタブグループは、名前と色を付けたまとまりを作れます。注意したいのは、このまとまりが同じアカウントの他の端末とも同期される点です。自宅のMacでグループを削除すると、会社のMacからも消えます。整理のつもりの操作が、別の端末に対する削除として届きます。

Safariのタブグループは、サイドバーにタブを縦に並べて表示します。縦なら本数が増えても文字が残るため、探す手がかりが消えにくい形です。Firefoxも縦のタブ表示を標準で持つようになりました。Edgeのワークスペースはタブのまとまりを扱う機能ですが、Edge 144以降、新しく作ったワークスペースでは共有と参加がサポートされない案内が出ています。

いずれの機能も、まとまりの中身を同時に見られるようにはしません。並べて見たいなら、やはりウィンドウを分けることになります。

窓の数を仕事の数に合わせるという考え方

4つの層を通して見ると、タブとウィンドウの違いは「表示の仕方」ではなく「その対象をOSに認識させるかどうか」の違いだと分かります。認識させれば、Mission Controlも操作スペースもタイル表示もキーボードショートカットも使えます。認識させなければ、ブラウザの中の細い帯の上で自力で探すしかありません。

この考え方を突き詰めると、毎日使うWebアプリは1つずつ独立した窓を持つべきだ、という結論になります。Webアプリを1つのアプリにまとめる種類のブラウザは、まさにその形を最初から採っています。アプリごとに独立したワークスペースを持つ作りでは、Gmailは常にGmailの窓、Slackは常にSlackの窓に居続けるため、探す手間そのものが発生しません。何が窓の単位になるのかはできることで整理されており、案件や役割ごとに面を切り替える仕組みはワークスペースにまとまっています。どのサービスが窓として扱えるかは使えるアプリで確認できます。

同じ発想の道具は他にもあり、それぞれ設計が違います。作業の重心が通知の整理にあるのか、複数アカウントの取り違え防止にあるのかで選ぶ相手は変わるため、Waveboxとの比較Ferdiumとの比較のような比較で、自分の詰まりに近いほうを見ておくと判断が早くなります。

よくある質問

ウィンドウを分けると、タブより重くなりますか?

開いているサイトの数が同じなら、処理の数もメモリも大きくは変わりません。ブラウザはサイトごとに処理を分ける作りになっており、その単位はウィンドウではないためです。重さの原因はウィンドウの数ではなく、同時に生かしているページの数です。

別のウィンドウを開けば、別のアカウントでログインできますか?

できません。ログイン状態はプロファイルという保存領域に属しており、同じプロファイルの中では何個ウィンドウを開いても同じログインが共有されます。同じサービスに2つのアカウントで入るには、プロファイル自体を分ける必要があります。

タブが何本を超えたらウィンドウに分けるべきですか?

本数で決めるより、タブの文字が読めなくなった時点を目安にしてください。名前が見えなくなると探す手がかりがファビコンだけになり、同じサービスのタブが並んだ瞬間に区別できなくなります。1日に何度も戻るものから順に外していくのが効きます。

裏のタブが再読み込みされて入力が消えるのを防げますか?

Chromeの場合はパフォーマンス設定で、特定のサイトを非アクティブにしない対象として登録できます。ただし確実さを求めるなら、書きかけのものや走らせている処理は前面のウィンドウに出しておくほうが安全です。

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