Slackの複数ワークスペースを行き来する|切り替えで消耗しない置き方
slack 複数ワークスペースで調べる人の状況は、だいたい2つに割れます。自社と客先の2つに呼ばれていて両方を開きっぱなしにしたい人と、すでに何個も入っていて切り替えのたびに集中が切れている人です。前者の答えは短く済みます。同時に入れます。厄介なのは後者で、こちらは機能の問題ではなく置き方の問題なので、設定画面をいくら探しても出てきません。
この記事では、Slackの複数ワークスペースが実際にどこまで分かれているのか、どこから混ざるのかを先に整理します。そのうえで、切り替えのコストを下げるために何を変えればよいのかを、通知・ショートカット・窓の3つに分けて書きます。
「複数ワークスペース」という言葉が指しているものは3つある
同じ言い方で語られている状態が、実際には3種類あります。ここを混ぜると、必要のない管理者権限を探しにいったり、有料プランの契約を検討したりと、手戻りが出ます。
1つ目は、別々の組織のワークスペースに同じ人が参加している状態です。自社と客先、副業先とコミュニティ、といった組み合わせがこれにあたります。それぞれのワークスペースは互いに無関係で、メンバー一覧もチャンネルも権限も完全に別です。読者が探しているのはたいていこれです。
2つ目は、外部の相手と共有チャンネルでつながる仕組みです。相手のワークスペースに参加しなくても、1本のチャンネルの中でだけやり取りができます。参加するワークスペースを増やさずに済むので、取引先が5社10社と増えていく働き方では、こちらのほうが手元は軽くなります。
3つ目は、1つの組織が複数のワークスペースを束ねて運用する形です。大企業向けの上位プランで提供されている仕組みで、部門ごとにワークスペースを分けながら、認証や管理は組織側でまとめます。個人の判断で選べるものではないので、勤務先がその形かどうかは管理者に聞くのが早道です。
自分が欲しいのがどれなのかを決めてから手を動かすと、設定は10分で終わります。逆にここが曖昧なまま「ワークスペースを分けたい」と管理者に相談すると、話が噛み合いません。
1つのメールアドレスで、いくつまで入れるのか
参加できるワークスペースの数に、実務で当たるような上限はありません。同じメールアドレスで複数のワークスペースに参加でき、デスクトップアプリはその全部に同時にサインインした状態を保てます。
Slackアカウントはワークスペースごとに作られます。同じメールアドレスを使っていても、ワークスペースが違えば別のアカウントとして扱われます。 出典: slack.com
ここで押さえておきたいのは、ワークスペースごとに別のアカウントとして扱われるという点です。結果として、次のものはワークスペースごとに別々になります。
- 表示名とプロフィール画像
- ステータス(会議中、休暇中などの表示)
- 通知の設定と、おやすみモードの時間帯
- サイドバーの並び順や、参加しているチャンネル
- アプリ連携と、そこで許可した権限
一方で、次のものは端末側にひとまとまりで持たれます。
- デスクトップアプリそのものの設定(テーマ、フォントサイズ、起動時の挙動)
- macOSの通知許可(アプリ単位でしか出せない)
- Dockのアイコンとバッジ
つまり、中身は分かれているのに、外側の入れ物は1つです。集中が切れる原因の大半はここにあります。客先の未読が自社の作業中に同じアイコンの上へ積み上がり、どちらのバッジなのかは開くまで分かりません。
無料プランで参加している場合は、閲覧できるメッセージ履歴が直近90日分に限られる点も、複数に入るほど効いてきます。過去のやり取りを掘り返す仕事が多いなら、どのワークスペースが無料でどれが有料なのかを把握しておくと、探し物の当てが付きます。
行き来を速くする操作を覚える
デスクトップアプリは、左端の細い列にワークスペースのアイコンを縦に並べます。ここをクリックすれば切り替わりますが、マウスに手を伸ばす動作そのものが1回あたり1秒から2秒を持っていきます。1日に何十回もやるなら、キーボードだけで済ませたほうが確実です。
- ⌘ と数字キーで、並び順のとおりにワークスペースへ飛ぶ
- ⌘ と Shift と ] で次のワークスペース、[ で前のワークスペース
- ⌘ と K で、ワークスペースをまたいだ移動先の検索
- ⌘ と / で、いま使えるショートカットの一覧
数字キーの割り当ては、左端の列の並び順そのものです。並び順はドラッグで変えられるので、いちばん使うワークスペースを上に置くと、指の動きが短くなります。ここを整えないまま数字キーを覚えると、業務委託先が上に来ていて自社が5番目、といった状態が固定されます。
検索については、複数に入っている人ほど落とし穴があります。検索はいま開いているワークスペースの中だけを見ます。「あの資料をどこかで見た」という記憶は、ワークスペースの区別まで覚えていないことが多く、見つからないときは探す場所そのものが違います。相手の名前で当たりを付けてから、そのワークスペースに移って検索し直すほうが速く終わります。
使っていないワークスペースを畳む
行き来のコストを下げる方法として、いちばん見落とされているのが「減らす」です。案件が終わった客先、半年前に呼ばれたきり発言していないコミュニティ、試しに作って放置した検証用。これらは並び順の中に居座り、数字キーの割り当てをずらし、たまに通知を出します。
畳むときの選択肢は3つあります。
- サインアウトする(アカウントは残り、招待も有効なまま。戻るときは再度サインインする)
- アカウントを解除して退出する(データは残るが、自分の参加は終わる)
- そのままにして通知だけ切る(履歴を見に行く用事が残っている場合)
案件が終わった直後は3番目を選び、請求と納品が完全に終わったところで1番目に移す、という運用が現実的です。退出してしまうと過去のやり取りを自分から確認できなくなるため、証跡として見返す可能性があるうちは残しておくほうが安全です。
数を絞ったあとに、並び順をもう一度組み直します。上から順に、毎日使うもの、週に数回のもの、月に数回のもの。この順番で並べておくと、数字キーの1と2に日常が集まり、指の移動が短くなります。並び替えは端末ごとに保持されるので、仕事用と自宅用でMacが分かれている場合は両方で揃えておくと迷いません。
もう1つ、参加の形そのものを見直す余地もあります。取引先とのやり取りが1つのプロジェクトに閉じているなら、相手のワークスペースに入るのではなく共有チャンネルで足りることが多く、その場合は左端の列が増えません。相手側に提案する手間はかかりますが、今後も同じ形の取引が続くなら、最初の1回で聞いておく価値があります。
通知を全部受け取ると、どれも見なくなる
複数ワークスペースの運用が崩れるのは、たいてい通知の設計を後回しにしたときです。全部のワークスペースで既定のまま「すべてのメッセージ」を受け取ると、1日の通知はワークスペースの数だけ増えます。増えた通知は無視されるようになり、そのうち本当に必要な連絡も同じ扱いになります。
ワークスペースごとに、次の3つを先に決めておくと崩れにくくなります。
- 自分あてのメンションだけ通知するのか、キーワードも拾うのか
- おやすみモードの時間帯を、そのワークスペースの就業時間に合わせるか
- モバイルへ転送するかどうか
客先のワークスペースはメンションだけ、自社は特定のチャンネルだけ、コミュニティは通知なしで自分から見にいく、といった具合に濃淡を付けます。全部を同じ強さにしないことが要点です。
macOSの側では、通知の許可はアプリ単位でしか出せません。ワークスペース単位で「これは音を鳴らす、これは鳴らさない」を分けたい場合、アプリの中の設定で調整するか、そもそもアプリの入れ物を分けるかのどちらかになります。後者は次の節の話です。
誤爆は、切り替えの操作そのものから生まれる
同じ画面の同じ位置に、違う組織のチャンネルが表示される。この構造がある限り、送り先を間違える事故は一定の確率で起きます。実際に起きやすいのは次の場面です。
- ⌘ と数字で切り替えた直後に、切り替わったことに気づかないまま入力を続ける
- チャンネル名が似ている(どちらにも「general」「雑談」「開発」がある)
- 複数の窓を開いていて、手前にある窓がどちらなのか一目で分からない
対策は3つあります。1つ目は、ワークスペースごとにアイコンの見た目を変えることです。管理者権限がなくても、自分の並び順は変えられるので、少なくとも位置は固定します。2つ目は、テーマの色をワークスペースごとに変えることです。サイドバーの色が違えば、入力を始める前に気づけます。3つ目が、窓そのものを分けることです。
3つ目がいちばん効きます。ワークスペースを別々の窓に出しておけば、切り替えは窓の切り替えになり、画面上の位置と見た目が別々になります。Slackのデスクトップアプリでも、チャンネルを別窓に出す操作は用意されています。ただしこのやり方は窓が増えるほど管理が難しくなり、macOSのアプリ切り替えでは同じアプリの窓としてまとめられてしまいます。
複数のWebアプリを行き来している人は、Slackだけの問題ではない
ここまではSlackの中の話ですが、実際の1日を思い返すと、行き来しているのはワークスペースだけではありません。メール、ドキュメント、タスク管理、生成AIの画面。それぞれが別のタブか別のアプリにあり、そのどれもが通知を出します。ワークスペースの切り替えを速くしても、その外側で同じ回数の切り替えが起きているなら、体感は変わりません。
この構造に対する解き方は、道具の数を減らすことではなく、置き場所を固定することです。仕事の相手ごとに窓をひとまとめにして、その窓の中に必要なアプリだけを置く。窓を切り替えれば、開いているアプリの組み合わせごと切り替わる。この考え方はワークスペースの解説で扱っている整理の仕方で、Slackの複数ワークスペースを別々の入れ物に分けたい場合にもそのまま当てはまります。
Webアプリを1つの窓にまとめて使うブラウザは、同じ考え方を製品にしたものです。Slackを含む各サービスをアプリとして登録して、それぞれを独立した領域で動かします。同じサービスに複数のアカウントで同時にサインインしたまま保てるのは、領域が分かれているからです。どのサービスが登録済みかは使えるアプリで確認できます。
この分野には先行する製品がいくつもあり、それぞれ設計が違います。通知の扱い、メモリの使い方、対応するOS、料金の形が製品ごとに異なるので、Waveboxとの比較やFerdiumとの比較のように、実際の項目を並べて見比べたほうが判断は早く付きます。無料で自分で動かす選択肢もあれば、月額を払って手間を買う選択肢もあります。
何から変えるかを1つだけ決める
複数ワークスペースの運用で最初に手を付けるべきは、通知です。設定を開いて、いま入っている全部のワークスペースについて、メンションだけにするか、キーワードも拾うかを1つずつ決め直します。これだけで、切り替えの回数そのものが減ります。
切り替えの回数を減らしても画面がまだ混ざるようなら、次は入れ物を分ける段階です。ワークスペースやアカウントを別々の領域で動かせる道具を検討する価値があるのは、この順番を踏んだあとです。判断の材料になる項目は料金とよくある質問に並べてあります。
よくある質問
同じメールアドレスで複数のワークスペースに参加できますか?
できます。ワークスペースごとにアカウントが作られる仕組みなので、同じメールアドレスを使っていても別々のアカウントとして扱われます。表示名やプロフィール画像、通知設定はワークスペースごとに設定し直す必要があります。
ワークスペースを切り替えるショートカットはありますか?
デスクトップアプリでは、⌘ と数字キーで左端の並び順どおりに移動できます。次のワークスペースへは ⌘ と Shift と ]、前へは [ です。いちばん使うワークスペースを並び順の先頭に置いておくと、指の動きが短くなります。
参加できるワークスペースの数に上限はありますか?
実務で当たるような上限はありません。ただし数が増えるほど通知とバッジが1つのアイコンに集まり、どのワークスペースの未読なのかが開くまで分からなくなります。数の上限より、通知の設計のほうが先に限界を迎えます。
取引先ごとにワークスペースに参加するのと、共有チャンネルを使うのはどちらがよいですか?
やり取りが1つのプロジェクトに閉じているなら共有チャンネルのほうが手元は軽く済みます。相手側の複数チャンネルを日常的に見る必要がある場合や、相手のファイルや検索にアクセスしたい場合は、ワークスペースに参加する形が向いています。