Chromeのプロファイルをどう選ぶか|条件の見方
Chromeのプロファイルをどう分けるかで迷う人の多くは、いくつ作るかから考え始めています。数を先に決めると、後から新しいアカウントや新しい取引先が増えるたびに例外が生まれ、どこに何があるか分からなくなります。先に決めるべきなのは軸です。何を基準に1枚のカードを切るのかが決まっていれば、増えたときの置き場所も自動的に決まります。ここでは軸の選び方と、軸を決めたあとの判定条件を順に見ていきます。
分ける軸は3つしかない
実際に使われている分け方は、突き詰めると3種類です。
- 人で分ける。1台のMacを家族や同僚と共用していて、相手に自分の履歴やブックマークを見せたくない
- 名義で分ける。同じサービスに仕事用と私用の2つのアカウントがあり、両方に入ったままにしたい
- 仕事の相手で分ける。取引先ごとに別のアカウントを渡されていて、作業中にどこを触っているか取り違えたくない
公式ヘルプが想定しているのは上の2つです。
プロファイルは次のような場合に便利です。パソコンを複数のユーザーと共用する。仕事用と個人用などで別々のアカウントを使用する。 出典: support.google.com
3つ目の「相手で分ける」は公式の想定には出てきませんが、外部の受託を複数抱えている人には最も切実な軸です。そしてこの軸は、増え方が他の2つと違います。人は増えません。名義も仕事用と私用の2つで打ち止めになることが多い。相手だけは、案件が取れるたびに増えます。
軸を選ぶときの判断は、増え方を見るのが早道です。増えない軸で分けているなら、プロファイルは長く安定します。増える軸で分けているなら、増えたときにどうするかを最初に決めておかないと、半年後に整理の時間を取られます。
軸が決まったら、3つの条件で判定する
軸に沿って候補を並べたあと、1つずつ次の3条件を当てます。3つとも該当しないなら、プロファイルを作らないという判断になります。
| 条件 | 該当するとき | 該当しないときの代わり |
|---|---|---|
| 同じサービスに同時ログインが要る | 分ける | 1つのプロファイルで足りる |
| 使う拡張機能の組み合わせが違う | 分ける | 拡張のオンオフで足りる |
| 見分けが付かないと事故が起きる | 分ける | ブックマークバーの中身を変える |
1つ目が最も重い条件です。1つのプロファイルには1つのクッキー保管場所しかないので、同じサイトに2つのセッションを同時に保つことはできません。ここに該当するなら、他の条件を見るまでもなく分ける価値があります。
2つ目は見落とされやすい条件です。仕事でだけ使う権限の強い拡張、たとえば画面の内容を読む種類のものを、私用の閲覧に持ち込みたくない場合が当てはまります。拡張はプロファイルごとに入り、設定もプロファイルごとに持ちます。逆に言えば、拡張の顔ぶれが同じなら、この条件では分ける理由になりません。
3つ目は事故の重さで決まります。取引先の管理画面で操作する内容が、間違えると取り返しがつかない種類のものなら、見分けは分ける理由になります。閲覧するだけの用途なら、色を変える程度の対処で足ります。
名前と色を決めるときの条件
分けると決めたあと、名前の付け方で使い勝手が大きく変わります。判断のたびに考えなくて済む形にしておくのが目的です。
名前には、軸に対応する言葉だけを入れます。相手で分けたなら会社名、名義で分けたならアカウントの用途です。日付やバージョンを入れると、後から意味が分からなくなります。「新しいほう」「一時的」といった名前は、3か月後にはどちらが新しいのか分からなくなります。
色は、使う頻度が高い順ではなく、間違えたときの被害が大きい順に強い色を割り当てます。本番環境を触るプロファイルに目立つ色を置き、閲覧用は落ち着いた色にします。テーマカラーは窓の上部の帯に出るので、前面にある窓がどれかを見分けるときに効きます。ただし選べる色は限られているので、プロファイルが増えるほど似た色が並びます。
写真やアイコンも設定できますが、macOSのウィンドウを重ねている状態では帯の色ほど目に入りません。識別を色に寄せて、アイコンは補助と考えると判断が減ります。
会社から配られたアカウントがある場合
勤務先や取引先からGoogleアカウントを渡されている場合、そのプロファイルは自分の裁量だけで決められません。組織の管理者は、管理対象のプロファイルに対して設定を配布できます。拡張機能の許可、同期の可否、閲覧履歴の扱いなどが該当します。
このとき重要なのは、管理対象のアカウントでログインしたプロファイルと、自分のアカウントのプロファイルを混ぜないことです。1つのプロファイルに組織のアカウントでログインすると、そのプロファイル全体が組織の設定の対象になり得ます。私用のブックマークが入ったプロファイルで会社のアカウントにログインするのは、この観点から避けられます。
配布された設定の中身は、アドレスバーに chrome://policy と入力すると一覧で確認できます。何が効いているか分からないまま拡張機能が入らない、同期がオフのまま戻らない、といった状況は、多くの場合ここに答えがあります。
数が増えたときに、何が起きるか
分ける条件を満たしたものだけを作っていっても、相手で分ける軸を選んだ人はいずれ数が増えます。増えたときに起きることは決まっているので、先に知っておくと判断が変わります。
まず、起動時の一覧が選ぶ画面ではなくなります。2つや3つのうちは押す先が分かっていますが、6つを超えたあたりから名前を読む時間が入ります。押す前の一瞬の停止が、1日に何度も発生します。
次に、拡張機能の管理が枚数分になります。同じ拡張を5つのプロファイルに入れているなら、権限の変更を確認する場所が5か所です。作業そのものは難しくありませんが、1回分の手間が枚数倍になります。
そして、パスワードが散らばります。仕事用のプロファイルに保存した資格情報は私用の窓からは見えないので、すでに保存済みのパスワードを再発行する事態が起きます。理由の分からないログイン要求は、セッション切れではなくこれであることが少なくありません。
分けても分かれないものを、先に把握しておく
選ぶ前に知っておくべきなのは、プロファイルを分けても分離されない部分です。ここを知らないまま枚数を決めると、分けたはずなのに取り違えが起きて、原因が分からないまま枚数だけが増えます。
まず、Macの既定のブラウザはアプリ単位で1つです。メールソフトやSlackのアプリ版から開いたリンクは、名義を選んで開くことはできません。Chromeが前面に持っている窓のうち、直近に使ったものが受け皿になります。取引先の管理画面のリンクを踏んだら私用の名義で開いていた、という取り違えの大半はここで起きます。リンクを踏む前に、目的の名義の窓を前面にしておくという手順が要ります。
次に、Dockのアイコンも1つです。アプリを切り替えるキー操作はアプリ単位で働くので、プロファイルの違いでは切り替えられません。同じアプリの窓を順に送るキー操作で回ることになり、枚数が増えるほど目的の窓に着くまでの回数が増えます。色を強めに振っておくと効くのはこの場面です。
拡張機能も、実体はプロファイルごとに入りますが、同じGoogleアカウントでログインした2枚には同期で同じものが戻ってきます。分ける目的が拡張機能の分離なら、2枚を別々のアカウントにするか、片方をログインしない状態で使う判断が要ります。
そして、プロファイルの選択画面はパスワードを尋ねません。公式ヘルプにも、そのデバイスを使う人は設定されている他のどのプロファイルにも切り替えられると書かれています。見られたくない相手がいる場面では、プロファイルは分離の道具になりません。その条件が入るなら、選ぶ対象はmacOSのユーザーアカウントに変わります。
決める前に数えておく2つの数字
枚数を決める材料は2つの数字に絞れます。どちらも数えるだけで出ます。
1つ目は、同じサービスに名義が重なっている数です。サービスの総数ではありません。Gmailが仕事用と私用の2つ、Notionが1つ、Slackが取引先ごとに3つなら、重なっているのはGmailの2つとSlackの3つです。同時ログインのために要る最小の枚数は、この重なりの最大値で決まります。Slackが3つあるなら、どう工夫しても3枚は要ります。逆に、重なりがどこにも無いなら、枚数を増やす理由は同時ログイン以外の条件からしか出てきません。
2つ目は、1日に境界を越える回数です。朝は自分の案件、午後は別の取引先という入れ替わり方なら、越える回数は少なく、切り替えの重さは問題になりません。一方、1時間のうちに何度も往復する働き方では、切り替えの操作そのものが仕事の一部になります。
| 境界を越える頻度 | 向いている単位 | 理由 |
|---|---|---|
| 半日に1回程度 | macOSのユーザーアカウント | 越える回数が少なければ、強い分離の重さが問題にならない |
| 1日に何度か | Chromeのプロファイル | 切り替えは数クリックで済み、分離も保たれる |
| 1時間に何度も | 窓を固定する | 切り替えの操作をなくし、置き場所で見分ける |
2つの数字が出れば、枚数と単位は機械的に決まります。重なりの最大値が枚数の下限、越える頻度が単位の選択です。迷いが残るとしたら、たいていは数えていないだけです。
数え終えたあとに、もう1つだけ確かめておく点があります。重なっている名義のうち、どれが本当に同時である必要があるかです。同じサービスに2つの名義があっても、片方を月に数回しか開かないなら、その分だけで1枚を常設する価値は薄くなります。常設せず、必要なときにログインし直すという運用でも成り立ちます。枚数の下限を出したあと、この観点で1枚ずつ見直すと、実際に作る枚数はさらに減ることが多いです。
窓を単位にするという別の選び方
数が増えたときの対処として、分ける単位そのものを変えるという選択肢があります。名義ごとに1枚という考え方をやめて、アプリごとに1つの窓を持つ形です。メールはメールの窓、チャットはチャットの窓と決めておくと、名義は場所の結果として決まります。選ぶという操作が1段階なくなるのが、この形の利点です。
アプリごとに独立したワークスペースを持つブラウザは、この考え方で作られています。窓の作り方はワークスペースのページに、通常のブラウザとの機能の違いはできることのページにまとめられています。開発の作業を同じ窓の中で完結させたい場合の仕組みはターミナルのページで説明されています。
選ぶときの条件は、プロファイルを選ぶときと同じ順番で考えられます。同時ログインが要る名義の数を数え、次に置きたいサービスがその製品で扱えるかを使えるアプリの一覧で確認し、最後に費用を料金のページで見ます。他社製品との違いを先に知りたい場合はShiftとの比較やSidekickとの比較のページが該当します。細かい挙動の疑問はよくある質問にまとまっています。
軸を決め、条件で判定し、増え方を見る。この順番を守ると、プロファイルの枚数は必要な分だけに収まります。迷ったときは、そのプロファイルが同時ログインのために存在しているのかどうかだけを確認してください。そこに該当しないものは、たいてい別の方法で代用できます。
よくある質問
Chromeのプロファイルはいくつまで作れますか?
明示された上限は案内されていません。実務上の限界は動作ではなく管理側にあり、名前を読まないとどれか分からなくなる段階が実質的な上限です。拡張機能の設定やパスワードがプロファイルの枚数分に散らばるため、同時ログインが必要な名義の数に絞るのが現実的です。
仕事用と私用は同じプロファイルにログインを切り替えて使ってはいけませんか?
同時に使わないなら1つで足ります。分ける理由になるのは、両方に入ったままにしたい場合と、使う拡張機能の組み合わせが違う場合です。どちらにも当てはまらないなら、プロファイルを増やさずログインを切り替えるほうが管理は軽くなります。
会社から配られたアカウントでログインすると何が変わりますか?
組織の管理者が配布した設定が、そのプロファイルに適用される場合があります。拡張機能の許可や同期の可否が該当します。何が効いているかはアドレスバーに chrome://policy と入力すると確認できます。私用のブックマークが入ったプロファイルで組織のアカウントにログインするのは避けたほうが安全です。
プロファイルの名前と色はどう決めると迷わなくなりますか?
名前には分ける軸に対応する言葉だけを入れます。相手で分けたなら会社名、名義で分けたなら用途です。色は使用頻度ではなく、操作を間違えたときの被害が大きい順に目立つものを割り当てると、前面の窓を見た瞬間に判断できます。