Chromeのプロファイルとは|何ができて、どこで詰まるか

Chromeのプロファイルとは何かを調べている人の多くは、機能の説明そのものを求めていない。仕事用のGmailと個人用のGmail、取引先から渡されたアカウント、常駐しているSlackとNotionを同じ午後に行き来していて、どこかで取り違えが起きたか、起きかけたかのどちらかだ。プロファイルはその取り違えを減らす仕組みだが、守備範囲がはっきり決まっている。この記事は、機能の一覧ではなく、境目がどこにあるかを先に示す。境目を知っていれば、いま詰まっている場所がプロファイルで直るのか、それとも別の層の話なのかを自分で判断できる。

プロファイルが引き受けている範囲

Chromeのヘルプは、プロファイルの役割を1文で説明している。

プロファイルを使用すると、Chrome 上の情報全体(ブックマーク、履歴、パスワードなど)を、プロファイルごとに分離できます。 出典: support.google.com

ここで効いている言葉は「Chrome 上の」になる。分離されるのは、ブラウザが自分で預かっているものに限られる。具体的には、ブックマーク、閲覧履歴、保存したパスワード、自動入力の住所やカード、拡張機能とその設定、サイトごとの許可(カメラや通知の可否)、そしてログイン状態を保持しているCookieになる。

このうち実務でいちばん重いのはCookieだ。Webアプリのログイン状態は、ほぼすべてCookieに置かれている。そしてCookieはタブに属していない。プロファイルに属している。同じプロファイルの中では、タブを100個開こうが窓を5つに分けようが、Gmailは同じアカウントで開く。逆にプロファイルを分ければ、同じサービスに別のアカウントで同時にログインしたままにできる。「タブを分ければ分かれるはず」という期待が外れるのは、分離の単位がタブではないからになる。

拡張機能がプロファイルごとに入る点も、知っておくと判断が変わる。仕事用のプロファイルにパスワード管理の拡張機能を入れても、個人用のプロファイルには入らない。同じ拡張機能を両方で使いたければ両方に入れる。これは面倒に見えて、実際には安全側に働く。取引先から発行されたアカウントを入れたプロファイルに、私用の拡張機能が勝手に入ってこないという意味だからだ。

分離されないものが、そのまま詰まりの原因になる

プロファイルが預かっていないものは、分けても分かれない。ここを取り違えると、対処の方向が丸ごとずれる。

分かれないものは大きく3つある。1つ目はmacOSが持っている情報で、キーチェーン、ダウンロード先として指定した実際のフォルダ、システムの通知設定などがこれにあたる。2つ目はブラウザの外にあるアプリの挙動で、SlackやMailやカレンダーからリンクを押したときに、どこへ渡されるかはChromeの外で決まっている。3つ目はDockとCmd+Tabの世界で、プロファイルをいくつ開いてもmacOSから見ればGoogle Chromeという1つのアプリでしかない。

この3つ目が、Webアプリを常時開いている人にいちばん効く。窓は分かれているのに、アプリ切り替えでは1つにまとまっている。Cmd+Tabで「Chrome」に移った先が、仕事用の窓なのか個人用の窓なのかは押してみるまで分からない。窓が4つあれば、目的の窓に着くまでに何度かCmd+`を押すことになる。プロファイル自体は正しく分かれているのに、たどり着く手間だけが残る形になる。

同じ画面が並ぶことによる見分けのつきにくさも残る。Chromeは窓の右上にプロファイルの写真とテーマカラーを出すが、それはウィンドウがいま手前にあるときの話になる。Mission Controlで縮小された状態や、画面を共有しているときの相手側の見え方では、判別に使えるのは色の帯くらいになる。名前と色を最初に決めておく意味はここにある。

外から来たリンクが、どの窓に落ちるか

プロファイルで最も多く報告される詰まりが、リンクの行き先になる。取引先からSlackで届いたリンクを押すと、私用のアカウントでログインしている窓で開いてしまう。押した先が権限のないページなら、アクセス権の要求画面が出て、要求のメールが相手に届く。

原因は単純で、リンクを渡された側のChromeが「どのプロファイルで開くか」を判断する材料を持っていないからになる。macOSは既定のブラウザにURLを渡すところまでしか面倒を見ない。受け取ったChromeは、直近に使っていたプロファイル、あるいは最後に前面にあった窓で開く。つまり行き先は、リンクの中身ではなく、その直前に何を触っていたかで決まる。

これはプロファイルの不具合ではなく、設計上そうなっているという話になる。だから対処も、プロファイルの設定をいじる方向には無い。実務で使われている手当ては3つある。1つ目は、リンクを踏む前に目的のプロファイルの窓を前面に出しておくという運用でしのぐ方法。2つ目は、URLの条件で開き先を振り分ける別のアプリをmacOSの既定ブラウザに据えて、その先でChromeのプロファイルを指定する方法。3つ目は、サービスごとに窓とセッションが最初から固定されている作りの道具に移し、そもそも行き先が動かない状態にする方法になる。どれを選ぶかは、1日に何回その取り違えが起きているかで決まる。

通知が、どのアカウントのものか分からなくなる

2つ目に多いのが通知になる。Webアプリの通知はサイトごとの許可で動いていて、その許可はプロファイルごとに持っている。ここまでは分離されている。ところが、macOSの通知センターに出る時点では送り主が「Google Chrome」にまとめられる。仕事用のSlackからの通知なのか、私用のアカウントに来た通知なのかが、通知の見出しだけでは分からない。

結果として、通知をクリックしてはじめて所属が分かるという流れになる。そして通知をクリックすると、その通知を出したプロファイルの窓が前面に出る。つまり、確認するという行為そのものが、いま作業している窓からの離脱になる。集中が切れる原因を「通知の数」だと考えている人は多いが、数より、確認しないと所属が分からない構造のほうが効いていることがある。

対処の方向は2つに分かれる。プロファイル単位で通知の許可を絞り込み、仕事用のプロファイルには業務のサイトだけを許可する形にするのが1つ。もう1つは、通知の出どころがアプリ単位で分かれる作りに移すことになる。前者は今すぐ無料でできる。後者は道具を変える判断になる。どちらが合うかは、通知を許可しているサイトがいくつあるかを数えてみると見当がつく。仕事用に3サイトしか許可していないなら前者で足りる。

開いた数だけ、機械の側の負担が増える

プロファイルを増やすこと自体は、動いていない限りほとんど負担にならない。効いてくるのは同時に開いている数になる。Chromeはタブやサイトごとにプロセスを分ける作りなので、プロファイルを3つ開けば、常駐しているWebアプリの分だけプロセスが3系統立ち上がる。同じGmailを2つのプロファイルで開いていれば、その分のメモリは単純に2倍払うことになる。

ここで見落とされやすいのが、ディスク側の話になる。プロファイルはそれぞれ独立したフォルダを持ち、その中にキャッシュ、拡張機能の実体、保存したデータが入る。使い込んだプロファイル1つで1.9GBまで育っていることもあれば、作っただけでほとんど触っていないものは7.5MB程度で止まっている。差は実際の使用量そのままで、増えるのは使っているプロファイルだけになる。「とりあえず作っておく」分のコストが低いのはこのためだ。

一方で、動かしている数が増えると体感は確実に落ちる。目安として、常時開いておくプロファイルは3つあたりが上限になりやすい。それを超えると、どの窓に何があるかを覚えておく負荷が、分けたことで得た安心を上回りはじめる。分ける単位を細かくしすぎたときに起きるのが、この逆転になる。

削除だけは取り返しがつかない

整理のためにプロファイルを消すときは、消える範囲を先に見ておく必要がある。Chromeのヘルプはこの点をはっきり書いている。

Chrome からプロファイルを削除すると、そのプロファイルのブックマーク、履歴、パスワードなどの設定がパソコンから削除されます。 出典: support.google.com

消えるのはそのMacの中にあるものになる。Googleアカウントにログインして同期していたプロファイルなら、ブックマークやパスワードはアカウント側に残っているので、別の端末や作り直したプロファイルから戻せる。逆に、ログインせずに使っていたプロファイルは、消した時点で手元から完全に無くなる。同期していないプロファイルほど気軽に作られ、気軽に消される傾向があるので、順番が逆になっている。

もう1つ、共有端末で誤解されやすい点がある。同じヘルプは、デバイスを使う人は設定されている他のどのプロファイルにも切り替えられると書いている。プロファイルはログインの壁ではなく、あくまで情報の置き場所を分けるものになる。人ごとに中身を守りたい場合は、Chromeのプロファイルではなく、macOS側のユーザアカウントを分けるのが本来の層になる。

「人で分ける」から「役割で分ける」に置き換える

プロファイルはもともと、1台のパソコンを複数の人で使う状況を想定して説明されることが多い。しかし実際に複数プロファイルを抱えているのは、1人で複数の役割を持っている人のほうが多い。この読み替えをすると、分ける単位の決め方が変わる。

人で分けると、単位は「自分」「家族」になって2つで足りる。役割で分けると、「勤務先」「取引先A」「個人」のように、アカウントの発行元ごとに分かれる。後者のほうが取り違えを防ぐ効果は高いが、数が増えやすい。増えた結果、先ほどの上限に当たる。

そこで実務的な落としどころは、分ける軸を2つ同時に使わないことになる。アカウントの発行元で分けるなら、その中を用途でさらに割らない。逆に用途で分けるなら、同じ用途の中に複数のアカウントを入れない。軸が混ざった瞬間に、どの窓を開けばよいのか自分でも説明できなくなる。

なお、ゲストモードとシークレットウィンドウはプロファイルとは別の仕組みになる。どちらも痕跡を残さないことが目的で、常用するアカウントを置く場所ではない。使い分けの話に出てくると混乱しやすいので、別枠として覚えておくほうが早い。

境目の外側にある選択肢

ここまでの詰まりを並べ直すと、共通点が1つ見えてくる。プロファイルはブラウザの内側をきれいに分けるが、ブラウザの外側との接点を分けていない。リンクの行き先も、通知の出どころも、Dockでの見え方も、すべて外側の話になる。だから、外側まで分けたい場合は、ブラウザの内側の設定では届かないことになる。

その外側まで含めて分ける作りの道具が、Webアプリを1つの窓にまとめて使うブラウザと呼ばれている分類になる。サービスごとにセッションを固定し、窓や区画を分けたまま切り替える考え方で、ワークスペースがその単位にあたる。何を単位に分けられるのか、どこまでが個別の設定になるのかはできることに整理されている。対応しているサービスの範囲は使えるアプリで確認できる。

この分類の中でも、製品によって考え方は違う。窓を増やす方向の設計もあれば、1つの窓の中を区画で割る設計もある。常駐させるサービスの数に上限を置く製品もある。同じ言葉で説明されていても中身が違うので、比較のページを横に並べて見たほうが早い。設計の違いが分かりやすいのはWaveboxとの比較Ramboxとの比較で、常駐と通知の扱いの差はShiftとの比較に出ている。

判断の順番としては、まず「詰まっているのは内側か外側か」を決める。ブックマークと履歴とログイン状態が混ざっているだけなら、プロファイルを分ければ終わる。リンクの行き先と通知の所属で毎日つまずいているなら、それは外側の話なので、プロファイルを増やしても回数は減らない。この見分けがついた時点で、次に何を変えるかは自動的に決まる。

よくある質問

Chromeのプロファイルを分ければ、同じサービスに2つのアカウントで同時にログインできますか?

できます。ログイン状態を持っているCookieはプロファイルごとに分かれているため、プロファイルAとプロファイルBで同じサービスに別々のアカウントでログインしたまま置いておけます。ただし同時に開いておく分だけメモリを使うので、常時開くのは3つ程度が目安になります。

プロファイルはいくつまで作れますか?

Chromeのヘルプに作成数の上限は示されていません。実際に20個以上を1台に置いている例もあります。制約になるのは数そのものではなく、同時に開いておける数と、どの窓に何があるかを覚えていられる数のほうです。

リンクを押すと違うプロファイルで開いてしまうのはなぜですか?

macOSは既定のブラウザにURLを渡すところまでしか決めておらず、どのプロファイルで開くかはChrome側が直近に使っていた窓で判断するためです。プロファイルの設定では変えられないので、開き先を振り分けるアプリを挟むか、サービスごとに窓が固定される作りの道具に移すかの選択になります。

プロファイルを削除すると、Googleアカウントの中身も消えますか?

消えません。削除されるのはそのMacに保存されていたブックマーク、履歴、パスワードなどの設定です。Googleアカウントにログインして同期していた場合、アカウント側のデータは残るため、別の端末や新しいプロファイルから戻せます。同期していなかった場合は手元から完全に消えます。

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