Firefoxのコンテナで仕事のアカウントを分けきれるか

Firefoxのコンテナを調べ始める人は、たいてい同じ場所で詰まっています。仕事用と取引先用のGoogleアカウントを同時に開いたままにしたい、Slackを2つのワークスペースで並べたい、それだけのことが、タブを並べ替えても解決しない。コンテナはその用途に対して正しい道具ですが、分けてくれる範囲がはっきり決まっていて、そこを知らずに組むと数週間で使わなくなります。ここではコンテナが実際に分けているものを公式の記述で確かめ、タブグループとプロファイルとの担当範囲を並べて、どれを選べばよいかを決められる状態にします。

コンテナ・タブグループ・プロファイルは、同じ問題を解いていない

Firefoxには似た顔をした仕組みが3つあります。コンテナ、タブグループ、プロファイルです。名前が近いので入れ替えて語られがちですが、担当している層はまったく別です。

  • コンテナは、クッキーとサイトの保存領域を分ける。同じサイトに別々のアカウントで同時にログインしたままにできる
  • タブグループは、開いているタブを名前と色で束ねる。ログイン状態は分かれない
  • プロファイルは、ブックマーク・タブ・履歴を丸ごと分ける。窓そのものが別になる

この3つは互いの代わりになりません。アカウントを分けたい人がタブグループを作っても、同じクッキーを共有しているので、2つ目のアカウントでログインした瞬間に1つ目からログアウトします。逆に、単にタブが散らかっているだけの人がプロファイルを増やすと、窓が増えるだけで探し物は減りません。

自分がどれを必要としているかは、直近で作業が止まった場面を思い出すと決まります。ログインし直しが原因ならコンテナ、資料を探し回ったならタブグループ、仕事と私用が混ざって気が散るならプロファイルです。ここを取り違えたまま設定を作り込むのが、Firefoxの使い分けが続かない最大の理由になっています。

コンテナが分けるのは、クッキーとサイトの保存領域だけ

Multi-Account Containersは、Firefox自身が公開している拡張機能です。アドオンの配布ページには、何を分けているかが技術的な言葉で明記されています。

Under the hood, it separates website storage into tab-specific Containers. Cookies downloaded by one Container are not available to other Containers.(内部的には、サイトの保存領域をタブ単位のコンテナに分けています。あるコンテナが受け取ったクッキーは、ほかのコンテナからは利用できません) 出典: addons.mozilla.org

書かれているのは、クッキーとサイトの保存領域の分離です。ここだけを分けるので、同じGmailに仕事用と取引先用の2つのアカウントで同時にログインしたままにできます。タブの色が変わり、タブの下に細い線が入るので、いまどちらのアカウントで見ているかも一目で分かります。

同じページで、この拡張の利用者数は403,827人、評価は8,059件のレビューで4.6と公開されています。個人が作った実験的な拡張ではなく、Firefoxの名前で配布され、相応の規模で使われている道具だと判断できます。

一方で、書かれていないものが分離の対象外です。ブックマーク、保存したパスワード、履歴、ほかの拡張機能の設定は、コンテナをまたいで共有されます。コンテナを8つ作っても、パスワードマネージャは1つですし、ブックマークバーも1つです。「ブラウザを丸ごと分けている」という感覚で使うと、共有されている側で事故が起きます。取引先の環境を完全に隔離したい場合に必要なのはコンテナではありません。

タブグループは新しい機能で、分離は担当していない

Firefoxのタブグループは、多くの人が思っているより新しい機能です。Firefox 137で段階的に提供が始まり、公開は2025年4月1日でした。リリースノートには、タブを別のタブの上に重ねると作成できること、名前と色を付けられること、常に保存されるので閉じても開き直せることが書かれています。

ここで重要なのは「常に保存される」の部分です。閉じたグループが消えないので、案件ごとに束ねておいて必要なときだけ開く、という使い方ができます。散らかったタブを片付ける目的なら、拡張機能を入れる必要はなくこれで足ります。

同時に、リリースノートに書かれていないことがあります。ログイン状態の分離です。グループはタブから作られ、最後までタブのままなので、同じ窓の同じセッションの中にいます。取引先Aのグループと取引先Bのグループを作っても、両方が同じGoogleアカウントでGmailを開きます。タブグループは整理であって、分離ではありません。

この2つを重ねると相性はよくなります。コンテナでアカウントを分け、その上でタブグループを使って案件ごとに束ねる。コンテナが縦の境界、タブグループが横の束ね方を担当する形です。

プロファイルは壁が厚く、切り替えの手数も大きい

Firefoxのプロファイル管理は、タブグループの次のバージョンで作り直されました。Firefox 138、公開は2025年4月29日です。名前・アバター・配色を付けて区別できるようになり、ブックマーク・タブ・履歴がプロファイル間で完全に分かれることが説明されています。

コンテナとの差は、分離の範囲です。プロファイルは拡張機能もパスワードも履歴も分けるので、取引先から特定の拡張機能の導入を求められたときに、その範囲をそのプロファイルの中だけに閉じ込められます。コンテナではこれができません。

代わりに払うのは切り替えの手数です。プロファイルを切り替えるということは、macOSでは別の窓に移るということです。仕事用のプロファイルで開いたリンクは仕事用のプロファイルで開き、そのアカウントが入っているもう一方の窓には飛びません。1日に40回もまたぐ境界に対して使うと、切り替えそのものが仕事になります。

プロファイルが向くのは、めったにまたがない境界です。仕事と私用、本業と副業のように、片方に入ったら数時間そこにいるような分け方なら、プロファイルのほうが安全で分かりやすくなります。

3つの担当範囲を1つの表で見る

仕組み 分けるもの 分けないもの 切り替えの手数
コンテナ クッキー、サイトの保存領域 ブックマーク、パスワード、履歴、拡張機能 同じ窓の中でタブを開くだけ
タブグループ 何も分けない(見た目の束ね方) ログイン状態そのもの 同じ窓の中で1クリック
プロファイル ブックマーク、タブ、履歴、拡張機能、パスワード 窓の置き場所、通知の出方 別の窓に移る

読むときは、左の列ではなく真ん中の列から読むほうが判断が速くなります。3つとも説明どおりに動くので、選ぶ基準は「何ができるか」ではなく「何が分かれないことを受け入れられるか」です。

同じ理由で、3つを全部入れるのは得策ではありません。コンテナとタブグループ、あるいはプロファイルとタブグループのように2つまでに抑えて、どちらが何を担当するかを1行で決めておくほうが長持ちします。担当を決めずに重ねると、同じサービスに到達する経路が3通りできて、どれが正しい入口なのか自分でも分からなくなります。経路が分からなくなった設定は、結局使われなくなります。

コンテナを実際に組むときの手順と、つまずく場所

コンテナは導入が軽い代わりに、最初の設定を飛ばすと効果が出ません。作業は10分程度で終わります。

1つ目に、拡張機能を入れて、コンテナの数を決めます。最初から多く作らず、同時にログインしたままにしたいアカウントの組み合わせの数だけにします。4つを超えると、どのコンテナで開くかを毎回選ぶ手間のほうが大きくなります。

2つ目に、サイトをコンテナに割り当てます。ここが要です。割り当てをしておくと、どこでクリックしたリンクでも、そのサイトは決めたコンテナで開きます。割り当てを飛ばして毎回手で選ぶ運用にすると、選び間違いが積み重なって、結局ログインし直すことになります。

3つ目に、つまずきやすい点を先に把握しておきます。コンテナは拡張機能なので、プロファイルの中に住んでいます。プロファイルを2つ使っているなら、それぞれに拡張機能を入れて、割り当てを2回作ることになります。片方で割り当てを直しても、もう片方には反映されません。層を増やすたびに設定の重複が増えるという点は、コンテナに限らずこの手の仕組みに共通します。

3つを組み合わせても、窓の層は空いたまま

ここまでの3つは、どれもタブの中で完結しています。前提にあるのは「Webアプリはタブである」という考え方で、Firefoxの仕組みはどれもこの前提を動かしません。

この前提が生む詰まりは1つです。タブには決まった置き場所がありません。朝は左から4番目にあったSlackが、夕方には11番目にいます。開くたびにタイトルかファビコンを読んで探すので、1回あたり数秒の探索が1日に何十回も積み上がります。これは片付けの問題ではなく、置き場所が決まっていないことの問題です。

別の系統の道具は、逆の前提から始まります。Webアプリごとに常設の窓を1つ与え、その窓に独立した保存領域を持たせ、窓のまとまりごと切り替える。アカウントの分離と置き場所の固定を同時に扱う考え方です。サービスごとに独立した窓を持たせるという設計が実際にどう動くかはワークスペースに整理されていて、タブを束ねる発想とは出発点が違うことが分かります。窓を常設したときに一緒に移る通知の扱いや起動時の状態の復元についてはできることにまとまっています。

同じ系統の製品どうしの違いは、たいていアカウントの分け方と費用の形に出ます。代表的な製品との差はWaveboxとの比較に、オープンソースで運用する選択肢との差はFerdiumとの比較にあり、無料で使える範囲がどこで切れるかは料金で確かめられます。比較表を開く前に、自分が詰まっているのがアカウントの層なのか置き場所の層なのかを1文で書いておくと、必要のない機能の多さで選ばずに済みます。

切り替えの回数を数えてから、次の一手を決める

判断の材料は感覚ではなく回数で取れます。1営業日、サービスを切り替えるたびに印を付けて、その横に理由を3種類のどれかで書き分けます。ログインし直しが必要だった、ページを探した、窓を探した、の3つです。

ログインし直しが多いなら、必要なのはコンテナです。同時にログインしたままにしたい組み合わせを書き出し、その数だけ作って、サイトの割り当てまで済ませます。ページを探した回数が多いなら、必要なのはタブグループで、これは1つのプロファイルの中で完結します。窓を探した回数が多いなら、3つのどれもその層を担当していないので、窓を常設する仕組みを持つ道具を見る段階です。

翌日に同じ数え方をすると、手を入れた層の数字だけが落ちているかどうかで効果が分かります。3つとも変わらなければ、直した層が原因ではなかったということで、これも十分な情報です。ブラウザの設定は勢いで作り直しやすく、あとから評価しにくいので、数えた2日分の記録が判断を一度で終わらせてくれます。

よくある質問

Firefoxのコンテナを使えば、仕事用と取引先用のGoogleアカウントを同時に開けますか?

開けます。コンテナはクッキーとサイトの保存領域をタブ単位で分けるので、別のコンテナで開いたGmailは別のアカウントとして扱われます。ただし分かれるのはクッキーと保存領域だけで、ブックマーク・保存したパスワード・履歴はコンテナをまたいで共有されます。完全に隔離したい用途にはプロファイルを使ってください。

コンテナとタブグループは、どちらを先に整えるべきですか?

コンテナが先です。コンテナはログイン状態を分ける層、タブグループは同じログイン状態の中でタブを束ねる層だからです。順番を逆にすると、アカウントを分けた時点でグループを作り直すことになります。同時にログインしたままにしたい組み合わせを書き出すところから始めてください。

コンテナはいくつまで作ってよいですか?

毎日使うものが4つを超えると、どのコンテナで開くかを選ぶ手間のほうが大きくなります。数を抑えたうえで、よく使うサイトはコンテナへの割り当てを設定しておくと、どこでクリックしても決めたコンテナで開くので選ぶ操作自体が不要になります。週に1回程度しか使わないものは、コンテナを増やさない判断もあります。

コンテナを使っても切り替えが面倒なままなのはなぜですか?

足りていないのが窓の層だからです。コンテナもタブグループもプロファイルも、画面上のどこにそのサービスを置くかは管理しません。設定をどれだけ整えても、サービスを開く操作が「窓を探す、タブを探す、クリックする」の3手のままなら、Webアプリごとに常設の窓を持たせる仕組みを検討する段階に来ています。

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