chromeのプロファイル固定から、Webサイトをデスクトップアプリとして使う

chrome プロファイル固定という言い方で探されているものは、実際には1つではない。起動したときに毎回同じプロファイルを開きたい場合もあれば、特定のサービスだけを決まったアカウントに縛りつけたい場合もある。前者はブラウザの起動の話で、後者はWebサイトをデスクトップアプリとして扱う話になる。狙いが違うので、使う仕組みも変わる。ここでは3つの層に分けて、どこを固定すると何が起きるかを整理する。

固定したいものが、起動なのか窓なのか

同じ「固定」でも、詰まっている場所は大きく2つに分かれる。

1つは起動の話になる。Chromeを開いたときに、前回使っていた別のプロファイルが出てくるのが煩わしい、という状態を指す。これはブラウザの起動オプションや起動時の設定で扱う層になる。

もう1つは窓の話になる。Gmailは会社のアカウント、Slackは取引先のアカウント、Notionは個人のアカウントというように、サービスごとに使う身元が決まっている状態を指す。この場合に固定したいのはブラウザではなく、サービス1つ1つの入り口になる。

業務で使う道具がこの10年でブラウザの中へ移った結果、後者で困る人のほうが多くなった。以前はメールソフトも表計算も個別のアプリだったので、アイコンごとに身元が分かれていた。いまは同じ1つのブラウザの中に、身元の違うものが積み重なっている。固定の相談がプロファイルの話になりやすいのは、身元を分ける仕組みがそこにしか無いように見えるためだ。

実際には、窓の側を固定する方法が用意されている。

Chromeで固定できる3つの層

Chromeで「固定」に効く手段は3つある。層が違うので、併用しても衝突しない。

  • 起動オプションで固定する層。--profile-directoryにフォルダ名を渡してChromeを起動する。ショートカットやAutomatorで作った小さなアプリから呼び出す形になる
  • サービス単位で固定する層。ページをアプリとして入れ、そのプロファイルのCookieを持つ専用の窓を作る
  • OS側で固定する層。macOSのシステム設定で既定のブラウザを決める。他のアプリから開かれたリンクの行き先はここで決まる

3つ目は見落とされやすい。メールソフトやカレンダーからリンクを踏んだときに、想定と違うアカウントの窓が開くのは、たいてい既定のブラウザの設定が原因になる。1つ目と2つ目をどれだけ丁寧に作っても、外から飛んでくるリンクはこの設定に従う。

なお、起動オプションで指定するのは画面に表示されている名前ではなく、ディスク上のフォルダ名になる。目的のプロファイルの窓でchrome://versionを開けばパスが出るので、そこから写すのが早い。存在しない名前を渡してもChromeは止まらず、その名前で空のプロファイルを作ってしまう。ログアウトした画面にしか見えないため、書き間違いだと気づくのに時間がかかる。

固定の実体は、ディスク上のフォルダにある

プロファイルは画面の中だけの概念ではなく、実体を持っている。macOSでは~/Library/Application Support/Google/Chrome/の下に、DefaultProfile 1Profile 2という名前のフォルダとして並んでいる。最初に作られたものだけがDefaultという名前を持ち、あとは作った順に番号が振られる。

それぞれのフォルダは、CookiesHistoryLogin DataExtensionsPreferencesといったファイルを自分の分だけ抱えている。固定が効く単位はここになる。あるプロファイルで通したログインは、そのフォルダのCookiesにしか書き込まれないため、隣のプロファイルの窓からは最初から見えない。機能拡張も同じで、片方に入れたものが自動でもう片方に現れることはない。

画面に出ている表示名は、フォルダの中ではなく1つ上の階層にあるLocal Stateというファイルに、別で記録されている。フォルダ名と表示名が対応していないのはこのためで、「仕事用」と名付けたプロファイルの実体がProfile 7だった、ということが普通に起きる。起動オプションに渡すのは表示名ではなくフォルダ名のほうなので、ここを取り違えると空のプロファイルが1つ増える。

言葉の使い方で誤解が生まれやすい点も、ここに置いておく。プロファイルは分離であって、施錠ではない。同じMacの同じユーザーで作業している限り、どのフォルダも読める場所にあり、窓を切り替えるだけで中身に手が届く。分けることで守られるのは、サービスから見た身元が混ざらないことであって、他人に見られないことではない。人に貸すMacで持ち物を分けたいなら、プロファイルではなくmacOS側のユーザーアカウントを分ける。

よく似た2つの項目を取り違えると、窓はできない

窓ごと固定する手段は、Chromeの右上のその他アイコンから「キャスト、保存、共有」に入った先にある。気をつけたいのは、名前の似た項目が2つ並んでいることになる。

  • 「ショートカットを作成...」は、名前を決めるダイアログが出るだけで終わる。開いても普通のタブになり、身元は既定のブラウザとそのとき前面にあったプロファイルに従う。実質はブックマークで、固定には効かない
  • 「ページをアプリとしてインストール」のほうが、専用の窓を持つアプリになる。入れた時点のプロファイルに紐づき、以後その窓はそのフォルダのCookieで開く

以前は1つの項目が両方を兼ねていたため、古い手順書は「ショートカットを作成」でアプリができると書いている。そのとおりに操作したのに専用の窓が現れない、という詰まり方をしたときは、たいていこの取り違えになる。

一部のウェブアプリには、オフラインでコンテンツを閲覧するための追加のストレージ、通知、ファイルシステムへのアクセス、アイコンバッジなどの追加機能が含まれています。 出典: support.google.com

入れたあとの管理はchrome://appsに集まっている。この一覧で右クリックすると「起動時に開く」を選べるので、Macにログインした時点で開いた状態にできる。デスクトップやメニューへのショートカットも同じ場所から作れる。

固定したはずの中身が、あとから書き換わる場面もある。ウェブアプリの名前とアイコンはサービス側の更新で変わることがあり、そのときChromeは窓の右上に知らせを出して、承認するか、無視するか、削除するかを聞いてくる。ヘルプは、身に覚えのない改名や他のアプリに似せたアイコンへの変更を、悪意のある変更として扱うよう案内している。アイコンの絵柄で身元を見分ける運用にしているなら、この知らせは読み飛ばさないほうがよい。

Safariの窓は、プロファイルを引き継がない

固定の考え方は、もう1つある。Safariで作る窓は、Chromeのようにプロファイルを引き継がない。

Webアプリは、Safariとは別に機能します。閲覧履歴、Cookie、Webサイトデータ、設定情報はSafariと共有されません。 出典: support.apple.com

固定の単位が、プロファイルではなく窓そのものになる、と読み替えるとよい。作った直後に1回だけログインを求められ、そこで通した身元がその窓に残り続ける。プロファイルを増やさずに身元を分けたい場合は、こちらのほうが管理する対象が少なくて済む。使えるのはmacOS Sonoma 14以降になる。

代わりに、プロファイルの側で作り込んだものは何も付いてこない。機能拡張も、保存したパスワードも、そこには無い。起動オプションで丁寧に環境を作ってきた人ほど、この空っぽさに戸惑うことになる。

3つの層の使い分け

起動オプション Chromeのウェブアプリ SafariのWebアプリ
固定される対象 起動するプロファイル インストール時のプロファイル その窓だけの独立した身元
開くもの タブのあるブラウザの窓 専用の窓 専用の窓
作るのに必要なもの コマンドかAutomator Chromeの操作のみ macOS Sonoma 14以降
あとから身元を変える オプションを書き換えれば可 作り直しが必要 窓の中でログインし直す
向いている使い方 複数のページをまとめて開く 毎日使うサービスを縛る ブラウザ側と完全に切り離す

選ぶ基準は、固定したい対象が何個あるかで決まる。プロファイルが2つで、その中身をまるごと呼び分けたいだけなら起動オプションで足りる。プロファイルは1つのまま、その中の特定のサービスだけを縛りたいならウェブアプリになる。プロファイルという単位そのものを増やしたくないならSafariの側に寄せる。3つは別の層なので、同時に使っても打ち消し合わない。

自分で包んでアプリにするという選択肢

検索の途中で、WebサイトをElectronやTauriで包んでアプリにする、という話に行き当たることがある。これは配布する側の手段であり、自分1人が使うための固定とは費用の桁が違う。

Electronは、Chromiumと実行環境をアプリの中に同梱する形になる。描画の仕組みを持ち歩くので、どの環境でも同じ見た目になり、ファイルの読み書きやメニューバーへの常駐といったOS側の機能も使える。代わりに配布物の大きさが増え、動かしている間はアプリごとにブラウザを1つ抱えることになる。Tauriは逆の取り方で、OSが持っている描画の仕組み(macOSではWKWebView)を使うため配布物は小さいが、環境ごとの描画の差を見ておく必要がある。

費用として見落とされやすいのは、作った後のほうにある。macOSで自分以外の人に配るなら、開発者向けの署名と、Appleによる公証の手続きが要る。どちらも無いと、受け取った側の環境では起動そのものが止まる。さらに、Webサイトはサーバー側が更新されれば新しくなるが、包んだアプリは自動では新しくならない。更新の経路を用意しないと、見た目は動いているのに中身だけが古い状態になる。

判断の基準ははっきりしている。ファイルの読み書き、常駐、どこからでも呼び出せるキー割り当てのように、ページの外側の機能が必要ならば包む意味がある。必要なのが専用の窓とアイコンだけなら、ブラウザに入っている機能で同じ結果が手に入り、要らなくなったときに1回の操作で戻せる。

固定が外れる場面

固定は作った瞬間が完成ではない。外れる場面は決まっているので、運用に乗せる前に一度試しておくと事故が減る。

  • シングルサインオンの経由で、ログインの途中で既定のブラウザへ飛ばされる。飛ばされた先で通った認証は、そちらのフォルダのCookiesに書かれる
  • 他のアプリから踏んだリンクが、既定のブラウザの普段のプロファイルで開く。専用の窓は使われない
  • パスワードの変更や強制的な再認証のあと、窓の中のログインが切れる。同じサービスの窓が複数あると、どれが切れたのかが分かりにくい

もう1つ、端末をまたいだ瞬間に固定は消える。プロファイルの並びも、入れたウェブアプリも、その1台のディスクの上にしか無い。同期で運ばれるのはブックマークやパスワードといった中身のほうで、窓の作り方や起動オプションは付いてこない。Macを2台使っているなら、同じ組み立てを2回することになる。

機能拡張で固定を補おうとしている場合は、前提そのものが変わった点にも注意がいる。旧来の仕様(Manifest V2)で作られた拡張は、2025年7月24日のChrome 138ですべての利用者に対して無効化され、2026年8月31日にウェブストアからも取り下げられた。数年前の記事が勧めているアカウント切り替え用の拡張は、いま入れようとしても入らないものが混ざっている。

確認の手順は簡単で、作った窓の中で一度ログアウトし、入り直すだけになる。最後まで窓の中で完結するなら固定は保たれている。途中で別のブラウザが立ち上がるなら、そのサービスは窓ではなくプロファイルの側で扱ったほうが安定する。

固定より、窓の持ち方が効く場面

固定の仕組みを整えても、対象が増えると別の問題が出てくる。プロファイルが4つ、そこにウェブアプリが数個ずつぶら下がる形になると、固定した数だけ独立した入れ物が常駐することになる。

ここで効いてくるのが、分離の値段になる。Chromiumはサイトごとに処理を分ける仕組みを持っていて、身元が混ざらないのはこの分離のおかげでもあるのだが、資料には次のような見積もりが書かれている。

On desktop in Chrome 67, this is about 10-13% when isolating all sites with many tabs open. 出典: chromium.org

固定を増やすことは、身元の混ざらない入れ物を増やすことでもある。窓の数が10を超えたあたりから、目で追う対象と常駐する入れ物が同時に増えていく。

この段階で効くのは、身元をさらに細かく固定することではなく、まとまりの単位を変えることになる。仕事はサービス単位では動いていない。取引先ごと、案件ごと、その日の担当ごとに動いていて、1つの文脈の中で同じサービスを別のアカウントで使う。アプリごとに独立したワークスペースを持たせて、文脈ごとに窓の組を切り替える考え方はワークスペースで説明されている。毎日使っているサービスがその形で開けるかは、対応済みのものを並べた使えるアプリで先に確かめておくとよい。

乗り換える前に確かめる点は3つになる。ログインの置き場所がブラウザの外へ移るので、二段階認証の受け皿を一度作り直すことになる。プロファイルに入れてきた機能拡張は、同じようには持ち込めない。そして、この種の道具は月額の有無や対応OSで性格が変わるため、料金まで含めて別の製品と並べたWaveboxとの比較のような資料を先に読んでおくと、条件が合うかどうかを短い時間で判断できる。

進め方としては、いちばんよく開くサービスを1つだけ専用の窓にして、残りはタブのまま1週間使うのが確実になる。1週間後に困りごとが「どのプロファイルで開くか」から「どの窓に何が入っているか」へ移っていたら、直すべき層は固定ではなく、窓の持ち方のほうにある。

よくある質問

Chromeを常に同じプロファイルで起動する設定はありますか?

設定画面の項目としては用意されていません。起動オプションで--profile-directoryにフォルダ名を渡す方法が実質的な手段になります。フォルダ名は表示名とは別物で、目的のプロファイルの窓でchrome://versionを開くと確認できます。存在しない名前を渡すと、その名前で空のプロファイルが作られます。

プロファイルのフォルダ名は、どこを見れば分かりますか?

macOSでは~/Library/Application Support/Google/Chrome/の下に、DefaultProfile 1のような名前で並んでいます。最初に作ったものだけがDefaultで、以降は作った順の番号になります。画面に出ている表示名は同じ階層にあるLocal Stateというファイルに別で記録されているため、「仕事用」という表示名とProfile 7というフォルダ名が対応していることがあります。迷ったときは、その窓でchrome://versionを開くのが確実です。

メールソフトから開いたリンクだけ、違うアカウントで開いてしまいます。

既定のブラウザの設定が原因である場合がほとんどです。他のアプリから開かれたリンクの行き先はmacOSのシステム設定で決まるため、ブラウザ側で固定していても、外から飛んでくるリンクはその設定に従います。既定のブラウザと、普段そこにログインしているアカウントを確認してください。

デスクトップアプリ化すれば、オフラインでも使えるようになりますか?

なりません。専用の窓にしてもページを取得する先は同じサーバーで、オフラインで動くかどうかはサービス側の作りに依存します。オフライン用の仕組みを持っているサービスならある程度動きますが、持っていないサービスは窓にしても同じように動きません。

記事一覧へ戻る