Vivaldiのワークスペースとは|何ができて、どこで詰まるか

タブバーの左端に並んだアイコンを押すと、視界のタブが総入れ替えになる。Vivaldiのワークスペースを初めて触った人が最初に受け取る印象はここで、たいていは気持ちがいい。問題はその次に来る。仕事のGmailと個人のGmailを別のワークスペースに置いたのに、どちらも同じアカウントのままだった、という場面だ。この記事では、Vivaldiのワークスペースが何を区切っていて何を区切っていないのかを公式の仕様から確かめたうえで、日々の作業のどこで手が止まるのか、その手前で何を決めておけばよいのかまで整理する。

Vivaldiのワークスペースは、タブに住所を与える仕組み

ワークスペースは、同じウィンドウの中でタブをグループにまとめ、名前とアイコンを付けて呼び出せるようにする機能だ。仕事、調べもの、買い物、学校といった単位でまとめておき、必要なものだけを画面に出す。作るときは、空のワークスペースを新規に作るか、いま開いているタブをそのまま移すかを選べる。

切り替えの経路が多いのがVivaldiらしいところで、公式のヘルプには少なくとも6通りが挙がっている。

  • タブバーのワークスペースボタンから一覧を開いて選ぶ
  • クイックコマンドにワークスペース名や「次のワークスペース」と打ち込む
  • キーボードショートカットを使う。順番が分かっていれば Ctrl+Shift または ⌘⇧ と番号の組み合わせで、3番目なら ⌘⇧3 で直接飛べる
  • ワークスペースボタンにカーソルを重ねてマウスホイールを回す
  • マウスジェスチャーを割り当てる
  • ウィンドウパネルの一覧から、目的のタブを直接ダブルクリックする

ワークスペースの中では、タブスタックもタブタイリングも通常どおり使える。つまりワークスペースは既存のタブ機能を置き換えるものではなく、その上にもう一段の入れ物を足すものだと考えたほうが実態に近い。料金は関係しない。Vivaldiは全機能が無料で、ワークスペースを使うために支払う金額は0円だ。

タブが増えたのは、ブラウザの外で起きた変化の結果

ワークスペースのような機能が各社に増えたのは、流行ではなく事情による。メール、チャット、表計算、設計、顧客管理、経理。かつて個別のアプリだったものが次々とWebに移り、どれもブラウザのタブとして常駐するようになった。常駐するタブは閉じられないため、作業用のタブと合わせて数十枚が当たり前になる。

この状況に対して、ブラウザ側と専用アプリ側の両方から答えが出ている。ブラウザ側の答えがVivaldiのワークスペースやタブグループで、追加費用なしに使える代わりに、区切りはブラウザの内側にとどまる。専用アプリ側の答えはアプリごとに窓や枠を分ける方式で、こちらは月額$7.00前後から有料のものが多い。

この分野は入れ替わりも激しい。Sidekickは2025年8月3日に提供を終了し、公式サイトのアドレスは現在Perplexityの製品へ転送される。Arcは2025年5月以降、新機能の追加を止めて保守のみの状態に移り、開発元は2025年にAtlassianへ買収された。選ぶ前に、価格だけでなく提供が続いているかどうかを確かめる意味はここにある。その点でVivaldiは2015年から自社で開発と提供を続けており、機能が急に消える種類の不確実性は小さい。

分かれるのは景色で、分かれないのはログイン

ここが最も誤解されやすい。ワークスペースは、Cookieやサイトのデータを分ける仕組みではない。分けているのは、いま画面に出ているタブの集合だけだ。

ログイン状態を持っているのはユーザープロファイルの側になる。Vivaldiのユーザープロファイルは、拡張機能、ブックマーク、スピードダイヤル、Cookie、履歴をそれぞれ別に持ち、さらにキーボードショートカットやマウスジェスチャーといった設定まで独立させられる。つまり「別の身分」を作れるのはプロファイルであり、ワークスペースはその身分の内側に置かれる区画にすぎない。

自分がどちらの状態にいるかは、30秒で確かめられる。同じサービスを2つのワークスペースで開き、右上のアカウント表示を見比べればいい。同じ名前が出ているなら、その2つは同じプロファイルを共有している。片方でサインアウトすれば、もう片方も落ちる。

同じサービスに2つのアカウントで同時に入りたいなら、ワークスペースを増やしても解決しない。プロファイルを分けるか、別の仕組みを使うことになる。逆に、ログインは1つでいいから視界を減らしたいだけなら、ワークスペースはそのために作られた機能なので素直に効く。自分の困りごとがどちらなのかを先に言葉にしておくと、設定をやり直す回数が減る。

1つのワークスペースは、同時に1つのウィンドウにしか置けない

見落とされやすい制約がもう1つある。公式のヘルプにはこう書かれている。

ワークスペースは、一度に1つのブラウザウィンドウで開くことができます。別のウィンドウで開いているワークスペースに切り替えると、現在のウィンドウでワークスペースを開くのではなく、選択したワークスペースが既に開いているウィンドウにフォーカスが移動します。 出典: help.vivaldi.com

この仕様が効いてくるのは、画面を2つ並べて使いたい場面だ。左に案件Aのチャット、右に同じ案件Aの資料、という配置を作ろうとしても、同じワークスペースを2つの窓に分けて出すことはできない。並べたい場合は、タブタイリングで1つの窓の中を分割するか、案件Aのワークスペースを2つに割るか、そもそもワークスペースを使わずに窓を2つ立てるかになる。

裏を返せば、この仕様は迷子を防いでもいる。同じワークスペースが複数の窓に散らばると、どちらの窓にどのタブがあるのかが分からなくなる。フォーカスを移動させる挙動は、その散らばりを起こさせないための設計だと読める。並べて使う運用が中心なら、区切りの単位をタブではなく窓の側に置く道具を検討したほうが早い。

タブスタック、セッション、ウィンドウとの違いを並べる

Vivaldiには似た役割の機能が複数あり、名前だけでは区別しにくい。何を区切るのかで並べると輪郭がはっきりする。

仕組み 区切る対象 ログインは分かれるか 再起動後に戻るか
タブスタック 数枚のタブのまとまり 分かれない 戻る
ワークスペース 窓の中に出すタブの集合 分かれない 戻る
セッション保存 名前を付けたタブの一式 分かれない 呼び出せば戻る
ウィンドウ 画面上の領域 分かれない 配置は戻らない
ユーザープロファイル Cookie、履歴、拡張機能 分かれる 戻る

表にすると分かるとおり、ログインを分けられる行は1つしかない。ワークスペースを増やしても、この列は変わらない。逆に、窓の配置を保存できる行も存在しない。左右に並べた位置関係はどこにも記録されないため、再起動のたびに手で並べ直すことになる。

ワークスペースルールは、置き場所を決める作業を肩代わりする

ワークスペースが散らかる原因の多くは、タブを開いた瞬間に置き場所を決めていないことにある。Vivaldiはここに自動化を用意していて、設定のタブからワークスペースのルールを追加できる。

  • 設定の「タブ」から「ワークスペース」を開く
  • 新しいルールを追加する
  • 条件を決める。公式の例は「URLにbbc.comが含まれるならNewsで開く」という形
  • 移動先のワークスペースを選ぶ

条件に合うタブは、別のワークスペースで開いても自動的に指定先へ移る。取引先のドメイン、社内ツール、調べもの用の検索サイトなど、行き先が決まっているものから登録していくと効果が出やすい。逆に、行き先が状況によって変わるURLをルールにすると、意図しない移動が起きて探す手間が増える。迷う条件は登録せず、手で動かすほうが結果的に速い。

タブをまとめて別のワークスペースへ移す操作も用意されている。ウィンドウパネルで移動元と移動先のフォルダーを開いてドラッグするか、タブを右クリックして移動先のワークスペース名を選ぶ。ShiftキーやCtrlキー、⌘キーで複数のタブを選んでから実行すれば、一度にまとめて動かせる。開いたままのタブを後から仕分ける作業は、この2つの経路のどちらかで済む。

メモリ対策も別に用意されている。ワークスペースを右クリックして休止状態にすると、その中のタブがまとめてスリープする。ただしこれはメモリのための機能であって、注意のための機能ではない。休止していても通知は届き、タブの枚数そのものは減らない。

削除の挙動には注意がいる。ワークスペースを削除すると、その中のタブもすべて閉じられる。残したいタブがあるなら、削除の前に別のワークスペースへ移しておく。閉じてしまった場合は、最近閉じたタブの一覧から拾い直せる。

それでも残る3つの詰まりどころ

ワークスペースを正しく組み、ルールまで設定しても、消えない摩擦がある。不具合ではなく、Vivaldiが1つのアプリケーションであることから来る性質だ。

1つ目は通知だ。届く知らせに書かれているのはサイトの名前であって、どの身分宛てなのかは分からない。読む価値があるかを判断するためだけに、ワークスペースを切り替える操作が1回発生する。

2つ目はアプリの切り替えだ。macOSは⌘Tabでアプリ単位に移動するため、行き先は「Vivaldi」になる。そこからワークスペースの一覧を開き、目的の区画を選び、タブを探す。1手で終わっていた操作が3手に増える。

3つ目は窓の配置だ。タブは復元されるが、左に作業用、右に資料用という並びは復元されない。前の節で触れたとおり、この情報はどこにも保存されていない。

いずれも1回あたりは数秒の話でしかない。それでも軽く見られないのは、削られているのが時間ではなく注意だからだ。切り替えの回数が1日に何十回もある人ほど、この差が積み上がる。

区切る単位をアプリ側へ動かすと、何が変わるか

ここまでの整理を踏まえると、判断の分かれ目は「区切りをブラウザの中に置くか、外に置くか」になる。タブの見え方を整えたいだけならワークスペースで足り、追加の費用もかからない。ログインの分離、通知の出どころ、窓の配置まで含めて解きたい場合は、区切る単位をアプリの側へ移す考え方になる。

サービス単位ではなく案件単位で窓をまとめる発想はワークスペースにまとめてある。ブラウザの機能のうち何を窓の中に取り込み、何を取り込まないのかという線引きはできることで説明している。Gmail、Slack、Notionのように常駐させる前提のサービスがどこまで用意されているかは使えるアプリで確かめられる。

同じ考え方の道具を横に並べるなら、価格帯と機能の広さの違いはWaveboxとの比較、無料のオープンソースとの線引きはFerdiumとの比較にある。費用の側から先に切りたい場合は料金を、導入前に引っかかりやすい点はよくある質問を先に見ておくと、比較の順番を間違えにくい。

最初に手を付けるべきなのは、ワークスペースを増やすことではない。自分がいくつの身分でWebを使っているかを書き出すことだ。会社の自分、個人の自分、取引先ごとの自分。この一覧は、たいてい作ってあるワークスペースの数より短くなる。終わった案件の区画が残っているためだ。身分の数が3つ以下で、同じサービスを2アカウントで同時に開く場面がないなら、Vivaldiのワークスペースだけで収まる。そうでないなら、プロファイルを足すか、区切る単位そのものを窓の側へ移すかの二択になる。

よくある質問

ワークスペースを分ければ、Gmailのアカウントも分かれますか?

分かれません。ログイン状態を持っているのはユーザープロファイルの側で、ワークスペースはその内側でタブをまとめる区画です。同じプロファイルにある2つのワークスペースは同じCookieを共有するため、片方でサインアウトすればもう片方も落ちます。2つのアカウントを同時に使いたい場合は、プロファイルを分ける必要があります。

ワークスペースを使うのに料金はかかりますか?

かかりません。Vivaldiは機能に応じた有料プランを設けておらず、ワークスペース、タブスタック、タブタイリング、ユーザープロファイルはいずれも無料で使えます。有料なのは、同じ目的を専用アプリで解く製品のほうで、そちらは月額7ドル前後から用意されているものが多くなっています。

同じワークスペースを2つの窓に並べて表示できますか?

できません。1つのワークスペースは同時に1つの窓でしか開けず、別の窓で開いているものに切り替えると、その窓へフォーカスが移動します。並べて使いたい場合は、1つの窓の中をタブタイリングで分割するか、ワークスペース自体を2つに分けるか、ワークスペースを使わずに窓を2つ立てることになります。

ワークスペースを削除すると、中のタブはどうなりますか?

一緒に閉じられます。残したいタブがある場合は、削除する前に別のワークスペースへ移動させてください。誤って閉じてしまったときは、最近閉じたタブの一覧から復元できます。タブを減らす目的なら、削除ではなく休止状態にする操作のほうが安全で、メモリの使用量も抑えられます。

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