Waveboxの代わりになるもの|手放してよい機能
複数のGmail、複数のSlack、取引先ごとの管理画面。全部に同時にログインしたままにしておける状態に慣れると、そこから戻るのは難しい。それでも代わりを探す人がいるのは、たいてい理由が3つのどれかに当てはまるからだ。年額の負担、常駐させたときの重さ、そして使っていない機能の多さ。この記事では、Waveboxの料金と機能の範囲を公開情報から確かめたうえで、代替候補がそれぞれ何を差し出すことになるのかを並べる。判断の材料を揃えることが目的で、どれを選ぶべきかは書かない。
代わりを探す前に、いま何に払っているのかを数える
出発点は自分の請求額ではなく、公開されている料金表の構造だ。Waveboxの料金は3段で、無料のBasic、個人向けのPro、組織向けのTeamsに分かれている。
- Basicは無料。グループが2つ、それぞれに入れられるアプリが2つ、拡張機能が1つ、ダッシュボードが1つ
- Proは年払いで月あたり$8.33。スペース、グループ、アプリが無制限になり、すべての拡張機能とクラウド同期が付く
- Teamsは1人あたり月$12.50。Proの内容に加えて共有ダッシュボードや請求の一本化が付く
年に直すとProは約100ドルになる。新規のアカウントはProの機能を7日間試せて、クレジットカードの登録は求められない。試用が終わったあとの扱いについて、公式の料金ページはこう書いている。
Once your trial has ended you can continue to use Wavebox Basic with two groups and two spaces. 出典: wavebox.io
つまり、試用が切れても使えなくなるわけではなく、枠の小さい無料プランに落ちる。30日間の返金保証も明記されている。教育関係と非営利団体には70%の割引があり、該当する場合は試用を始めてからサポートに連絡する手順になっている。学校や団体のアドレスを持っている人は、代わりを探す前にこちらを確かめる価値がある。
「代わり」という言葉が指しているものは、人によって違う
同じ検索語でも、探しているものは分かれる。費用を下げたいのか、動作を軽くしたいのか、機能を減らしたいのか。混ぜたまま候補を比べると、乗り換えた先で同じ不満が再現する。
費用が理由なら、比べる相手は無料プランの枠になる。軽さが理由なら、比べるのはアプリの設計であって料金表ではない。機能の多さが理由なら、そもそも同じ分類の製品に乗り換えても解決しない。ブラウザに内蔵された機能やmacOS側の仕組みまで候補に入れることになる。
判断を鈍らせるのは、機能表の見た目がどれも似ていることだ。どの製品も「複数アカウント」「ワークスペース」「通知」と書いてある。違いが出るのは、その機能がどのプランに入っているかと、同時にいくつ動かせるかのほうにある。次の節の表は、その位置を確かめるために作ってある。
軽さを理由に探している場合は、比べる対象がそもそも料金表ではない。この分類の製品はいずれもChromiumを土台にしており、常駐させたアプリの数だけ描画の単位が増える。効いてくるのは、使っていないアプリを眠らせる仕組みがあるかどうかと、それが自動で働くかどうかだ。休止の機能は無料プランの側に置かれていることが多く、ここは価格差が出にくい。重さの原因が製品ではなく常駐数にある場合、乗り換えても数字は変わらない。
候補ごとに、何を差し出すことになるか
いずれも公式の料金ページと機能ページで確認できる範囲だけを並べている。金額はすべて公開されている表示価格で、通貨はドルだ。
| 候補 | 無料で使える範囲 | 有料の価格 | 差し出すもの |
|---|---|---|---|
| Wavebox | グループ2つ、各2アプリ、拡張機能1つ | Pro 月$8.33(年払い)、Teams 1人月$12.50 | 無料のままでは枠が小さい |
| Rambox | アプリ数は無制限、1アプリあたり2インスタンスまで | Pro 月$7.00、年$70.00、Teams 1人月$14 | ワークスペースと多重ログインは有料側 |
| Shift | スペース5つ、1スペースあたり10アプリ | Advanced 年$199.99 | 上位プランの価格が高め |
| Ferdium | すべて無料。有志による開発 | 無し | 商用のサポート窓口が無い |
| Vivaldi | すべて無料。ワークスペースを内蔵 | 無し | ログインの分離はプロファイル側の作業 |
Ramboxは無料のBasicでもアプリの数に制限がなく、通知、集中モード、休止が使える。一方で、ワークスペース、セッション管理、多重ログイン、拡張機能はProの側に置かれている。1つのアプリで動かせるインスタンスはBasicが2つまでで、Proで無制限になる。新規アカウントは30日間のPro試用から始まる。
Shiftは無料プランを永続で提供していて、スペースが5つ、1スペースあたりのアプリが10個まで使える。上位のAdvancedは年$199.99で、スペースとアプリが無制限になる。無料の枠は3社の中では広いほうだが、有料へ上がったときの金額差は大きい。
Ferdiumは有志が開発しているオープンソースで、料金は発生しない。サービスの追加、ワークスペース、同じサービスの複数登録、休止による省メモリが揃っている。アカウントを作らずに使うこともでき、その場合データは手元にとどまる。差し出すのは、商用のサポート窓口と、更新の時期が読めることだ。
手放してよい機能と、手放すと戻れない機能
乗り換えの成否を分けるのは、機能表の広さではなく、自分が実際に使っている機能が移せるかどうかだ。棚卸しの対象は5つに絞れる。
- 同じサービスに同時ログインしているアカウントの数。これが最も移しにくい
- 常駐させているアプリの数。無料枠に収まるかどうかがここで決まる
- 拡張機能。無料プランは本数に制限があることが多い
- リンクを開く先を決めるルール。設定した数が多いほど移行に時間がかかる
- 画面分割や統合検索のように、日に何度も使う操作
このうち、手放しても運用で吸収できるのは後ろの2つであることが多い。画面分割はmacOS側の機能やウィンドウの並べ方で代えがきき、統合検索は検索する場所を1つに決めておけば実害が小さい。反対に、同時ログインのアカウント数と常駐アプリの数は、足りない状態に慣れることができない。ここが無料枠に収まらないなら、費用を理由にした乗り換えは成立しにくい。
拡張機能の扱いは製品ごとに差が大きい。Waveboxは20以上を内蔵したうえでChromeウェブストアの拡張機能も使える形を取っており、無料プランで使えるのは1つまでとされている。Ramboxは拡張機能をProの機能として案内している。手元で数えて3つ以上を常用しているなら、候補の絞り込みはここから始めたほうが速い。
もう1つ、機能表には出てこない項目がある。同期の扱いだ。登録したアプリの一覧やワークスペースの構成を複数の端末で共有したい場合、その同期が無料プランに入っているかどうかで運用が変わる。Waveboxはクラウド同期をProの側に置いている。Ferdiumはアカウントを作れば同期でき、作らずに使えばデータは手元にとどまる。Macとノートを行き来する人は、この行を先に見ておくと選択肢が絞れる。
記録を取らずに乗り換えると、同じ形に戻る
棚卸しを飛ばして乗り換えると、移行先でも同じ数のアプリを同じように並べることになる。不満の原因が製品ではなく常駐数のほうにあった場合、これで改善する余地はない。移行を決める前に、1週間だけ実際に開いたアプリを記録しておくと、登録しているだけで使っていないものが出てくる。多くの場合、その数は想像より多い。
終了した製品と、更新が止まった製品を候補から外す
この分野は入れ替わりが早い。比較記事の見出しに残っていても、すでに提供が終わっているものがある。料金だけを見ていると見落とすので、候補に挙げた時点で提供状況を確かめておく。
Sidekickは2025年8月3日に提供を終了した。開発チームは同年5月にPerplexityに移り、公式サイトのアドレスは現在、同社の製品へ転送される。この記事の執筆時点でアクセスすると、301の転送が返る。
Arcは2025年5月以降、新機能の追加を止めて保守のみの状態になった。配布とセキュリティ更新は続いている。開発元のThe Browser Companyは、2025年9月にAtlassianによる買収が発表され、同年10月に手続きが完了した。買収後の発表は新しい製品に軸足があり、Arcの今後についての約束は含まれていない。
確かめる項目は4つでいい。提供が続いているか、新規の受付が止まっていないか、運営会社が変わっていないか、料金が改定されていないか。どれも公式サイトと発表で分かる範囲の話で、数分で済む。乗り換え先が半年後に終わると、棚卸しからやり直しになる。
無料の枠に収まるかどうかを、数で判定する
ここまでの材料があれば、判定は数え上げで済む。手元で次の3つを数える。
常駐させているアプリの数。これが2つならWaveboxの無料プランに収まる。5つ前後ならShiftの無料プランの範囲に入り、数が多く1アプリあたり1アカウントで足りるならRamboxのBasicが候補になる。
同じサービスに同時ログインしているアカウントの数。1つなら選択肢は広い。2つならRamboxのBasicでも足りる。3つ以上を同時に使っているなら、無料プランの範囲から外れる製品が多くなる。
有料に払ってよい上限額。年に100ドル前後までなら選択肢は複数あり、それを下回るなら無料の製品か、ブラウザ内蔵の機能に寄せる方向になる。
数え終えると、たいていは選択肢が2つか3つに絞られる。機能表を隅から隅まで比べる作業は、その後でいい。数が境界線の上に乗ってしまった場合だけ、無料プランのまま1か月使ってみて、足りない場面が実際に何回起きるかを見てから決めればいい。試用の期間内に判断しきれなくても、枠の小さいプランに落ちるだけで、登録した内容が消えるわけではない。
乗り換える前の1週間でやること
移行を決める前に、1週間だけ記録を取る。切り替えの回数、同時に開いているアプリの数、実際に使った機能。この記録があると、無料枠に収まるかどうかを推測ではなく数で判定できる。
候補を横に並べて確かめたい場合、価格帯と機能の範囲の違いはWaveboxとの比較にまとめてある。無料のオープンソースとの線引きはFerdiumとの比較、プランごとに機能が分かれる製品との違いはRamboxとの比較、無料枠の広さで選ばれることが多い製品との違いはShiftとの比較にある。
機能の側から見たい場合は、ブラウザの機能のうち何を窓の中に取り込むのかという線引きができることにまとまっている。案件単位で窓をまとめるアプリごとに独立したワークスペースの考え方はワークスペースに、常駐させる前提のサービスがどこまで用意されているかは使えるアプリにある。費用から先に絞りたい場合は料金を、判断に迷う点はよくある質問を見ておくと、比べる順番を間違えにくい。
最後に1つ。乗り換えの目的が「安くする」ことだけなら、移行にかかる時間も費用として数えたほうがいい。アカウントの再ログイン、ルールの再設定、通知の許可の出し直し。年に100ドルを浮かせるために半日を使うかどうかは、時間単価の問題になる。
よくある質問
Waveboxの無料プランだけで使い続けられますか?
使い続けられます。試用が終わってもアカウントが止まるわけではなく、グループが2つ、それぞれにアプリが2つ、拡張機能が1つという枠のBasicに移ります。常駐させているアプリが2つまでで、拡張機能も1つで足りているなら、無料のまま運用できます。枠を超えた分は、有料プランに上げるまで追加できません。
Waveboxと同じことを無料でできる製品はありますか?
用途によります。アプリの数だけが必要なら、Ramboxの無料プランはアプリ数に制限がなく、1アプリあたり2つまでのインスタンスを扱えます。Ferdiumはオープンソースで全機能が無料です。ただしRamboxはワークスペースと多重ログインが有料側にあり、Ferdiumには商用のサポート窓口がありません。
乗り換え先を選ぶとき、料金以外に何を確かめるべきですか?
提供が続いているか、新規の受付が止まっていないか、運営会社が変わっていないか、料金が改定されていないかの4点です。この分野は入れ替わりが早く、比較記事に載っていても終了している製品があります。Sidekickは2025年8月に提供を終了し、Arcは2025年5月以降に新機能の追加を止めています。
移行の作業はどのくらいかかりますか?
登録しているアプリの数と、設定してあるルールの数に比例します。アカウントの再ログイン、リンクを開く先のルールの再設定、サイトごとの通知許可の出し直しが主な作業です。常駐アプリが5つ程度なら数時間で終わりますが、取引先ごとの管理画面まで含めて数十のアプリを登録している場合は、半日から1日を見ておくほうが安全です。