Waveboxをどう選ぶか|条件の見方

仕事用のGmailと個人のGmail、取引先ごとのSlack、常時開いているNotionとチャットAI。この状態を一枚の窓にまとめる道具としてWaveboxの名前が挙がったとき、多くの人は機能の一覧から読み始める。ところがWavebox erabikataでつまずく原因は機能の不足ではなく、自分が分けたいものが何なのかが言葉になっていないことにある。この記事では、分けたい対象を3つに分解したうえで、Waveboxが公開している条件と照らし合わせ、次に何を決めればよいかまで持っていく。

分けたいものを3つに分解してから道具を見る

複数のWebアプリを行き来している人の困りごとは、聞き取っていくと3つに分かれる。この3つは原因も解き方も違うのに、どれも「ブラウザが散らかっている」という同じ言葉で語られてしまう。

1つ目は、同じサービスに別のアカウントで同時にログインしたいという困りごとだ。会社のGoogle Workspaceと個人のGmail、案件Aと案件BのSlack。これはCookieの保管場所の問題で、タブの並べ方をいくら工夫しても解けない。分離の単位を用意していない道具では、片方にログインした瞬間にもう片方が落ちる。

2つ目は、視界に入るものを減らしたいという困りごとだ。案件Aの作業中に案件Bの画面が見えていると、そこで注意が持っていかれる。これは分離ではなく遮蔽の問題で、必要なのは別のログインではなく別の景色になる。

3つ目は、目的の画面へ最短で戻りたいという困りごとだ。タブが何十個もある状態で、いま見たい画面を探す動作そのものを消したい。これは切り替えの問題で、ブラウザの内側だけでなくmacOSのアプリ切り替えとも関わってくる。

Waveboxを検討している人がどれに当たるのかで、見るべき条件がまるごと変わる。1つ目ならログインの分離の作りを、2つ目なら通知と表示の制御を、3つ目なら窓とキーボード操作の設計を見ることになる。3つとも当てはまるなら、無料枠で足りるかどうかの判断も変わってくる。

公開されている条件を数字で押さえる

検討の土台になるのは、感想ではなく公開されている条件だ。Waveboxの料金ページと配布ページに書かれている内容は、いずれも自分で確かめられる。

対応するのはmacOS・Windows・Linuxの3つで、macOSはmacOS 12 Monterey以降が条件として示されている。Apple SiliconとIntelの両方に対応していると配布ページに明記があるため、手元のMacが世代的に外れる可能性は低い。

料金は3段階になっている。無料のBasic、個人向けのPro、事業者向けのTeamsだ。Proは年払いで月あたり8.33ドル、Teamsは1人あたり月12.50ドルと料金ページに掲示されている。年払いの月額を12か月分に直すとおよそ100ドルで、配布ページに載っている利用者の声にも年間100ドルという金額が出てくる。表示はドル建てなので、円で払う場合の負担は為替で動く点は前提として押さえておきたい。

導入前の試用は7日間で、クレジットカードの登録は不要と明記されている。試用が終わっても自動で課金されるのではなく、無料のBasicに移る作りだ。加えて30日間の返金保証があり、教育機関と非営利団体には70パーセントの割引が用意されている。割引は自動ではなく、教育機関のメールアドレスや.orgのアドレスで試用を始めたうえでサポートに連絡する手順になっている。

運営はサイトのフッターに「Wavebox (Bookry Ltd)」と英国の住所が記載されている。公開されている情報の範囲では、提供終了の告知も、新規受付の停止も、運営会社が変わったという発表も見当たらない。料金ページで示されている金額は執筆時点のもので、比較する際はこの4点を毎回確かめるのが安全だ。

7つの階層のどこで詰まっているのかを見る

Waveboxは画面の部品を7段階に分けて説明している。この階層を先に理解しておくと、自分の困りごとがどの層の話なのかが特定できる。

Wavebox organizes your work in seven levels: Space > Group > App > Saved Items > Tab group > Pinned tab > Open or sleeping tab 出典: hub.wavebox.io

上から下へ読むと、永続的なものから一時的なものへ並ぶ設計になっている。いちばん上のSpaceは一度決めたら動かさない単位で、いちばん下の開いているタブは今日のうちに閉じるものだ。

この並びの中で、ログインを握っているのはSpaceだけだとされている。すべてのアプリとタブはいずれかのSpaceに属し、そのSpaceがサインイン状態を持つ。2つのGmailを同時に開きたいなら2つのSpaceが要る、という関係になる。Groupにも所属するSpaceが決まっていて、そのGroupで開いたものは自動的にそのSpaceへ入る。

ここが分かると、自分の困りごとの層が見えてくる。同じサービスの2アカウントで困っているならSpaceの話であり、Groupをいくつ作っても解決しない。逆に、ログインは分かれているのに画面が散らかっているだけなら、それはGroupとタブの層の話で、Spaceを増やす必要はない。層を取り違えたまま設定を足していくと、作業は増えるのに体感が変わらないという状態になる。

SpaceとProfileのどちらが必要かを見極める

もう一段ややこしいのが、SpaceとProfileという2つの分離単位が併存していることだ。Waveboxの説明では、Profileは1つの独立したWaveboxそのもので、Spaceはその中に並ぶ引き出しにあたる。

Spaceは別々のログインを保ちながら、横のつながりを残す。複数のSpaceにまたがって検索でき、未読の数は1つの画面に集まり、別のSpaceのアプリを画面分割で並べられる。取引先のGmailと自分のGmailを同時に見たいときは、この作りが効く。

Profileはその逆で、設定も拡張機能もパスワードも履歴も共有しない。切り替えると別の世界が開く。会計処理だけをまるごと隔離したい、検証用の素の環境がほしい、といった場面に向く。つながりが要らない、むしろ残ってほしくない場面がProfileの出番になる。

この2つは対立するものではなく、必要な分離の強さが違うだけだ。自分がほしいのが「分かれているが行き来はしたい」なのか「完全に切り離したい」なのかを先に決めておくと、設定で迷う時間が大きく減る。分離の考え方そのものを比べたいときはワークスペースに、アプリ単位で独立した作業場を持つ設計の狙いがまとめられている。

無料のまま続けるか、有料に移るかの判断

無料のBasicには枠がある。料金ページの表では、Groupが2つ、それぞれに入るアプリが2つ、拡張機能が1つ、ダッシュボードが1つと書かれている。配布ページの表現では「2つのGmailアカウントで無料のまま使える」となっており、どちらも同じ枠を別の言い方で説明したものだ。

この枠で足りるかどうかは、上で分解した3つの困りごとのうち、どれが主因かで決まる。仕事と個人の2アカウントを行き来しているだけなら、無料の範囲に収まる可能性がある。取引先が3社を超えている、案件ごとにSpaceを立てたい、パスワード管理と広告遮断の両方を入れたい、といった段階に入るとアプリごとに独立したワークスペースの数が枠を超えるため、有料に移る判断が必要になる。

試用中に作ったものが消えるわけではない点も判断材料になる。料金ページには、試用期間中に追加したアプリやリンクは、あとから有料に切り替えた時点でそのまま使えると書かれている。つまり7日間で本番に近い構成を組んでしまい、枠を超えるかどうかを実際の作業量で見てから決める、という進め方ができる。

解約の窓口も先に見ておきたい。アプリ内のMy Waveboxの請求画面から手続きする作りで、30日以内であれば返金の相談ができるとされている。入る前に出口を確かめておくと、試用の7日間を判断ではなく検証に使える。

7日間で確かめておきたい5項目

試用期間は短い。機能をひととおり触って終わると、判断の材料がそろわないまま期限が来る。確かめる項目を先に決めておくと、7日間が検証の時間になる。

  • 同じサービスの2アカウントを同時に開いた状態で、片方の操作がもう片方に影響しないか。ログインの分離が実際に効いているかは、ここでしか分からない
  • 通知が届いたとき、どのアカウント宛かが分かるか。分からない場合、確認のための切り替えが今後ずっと発生し続ける
  • 作業を再開したときに、前回の配置が戻るか。タブが戻ることと、窓の並びが戻ることは別の話だ
  • 普段使っている拡張機能が動くか。パスワード管理や広告遮断は、動かないと日常の作業が止まる
  • 無料の枠に収まるか。試用中は枠が外れているので、自分の構成がGroup2つとアプリ4つに収まるかを数えておく

この5項目のうち、どれが満たされていないと困るのかは人によって違う。取引先ごとに担当者が分かれている仕事なら1つ目と2つ目が重く、資料を並べて作業する仕事なら3つ目が重い。重い順に確かめて、満たされないものが出た時点で判断を止めてよい。

なお試用の初日に本番の構成を組んでしまうのは、後戻りの心配が要らない作りだからこそできる進め方だ。試用中に追加したものは、あとから有料に切り替えた時点でそのまま使えるとされている。小さく試して判断材料が足りなくなるより、実際の作業量で確かめるほうが7日間の使い方としては効率がよい。

比較するときに見る条件をそろえる

同じ用途の道具は複数ある。比べるときに機能一覧を横に並べても判断が付かないのは、各社が違う粒度で機能を数えているからだ。条件をそろえるなら、次の観点を同じ順番で当てるのが早い。

  • 同じサービスに何アカウントまで同時にログインできるか。上限が枠で決まっているのか、実質無制限なのか
  • 通知にどのアカウント宛かが出るか。出ないなら、確認のための切り替えが毎回発生する
  • macOSのアプリ切り替えでどこに着くか。ブラウザ全体に着くのか、目的のアプリに着くのか
  • 無料の範囲がどこまでか。試用と無料枠が別物として用意されているか
  • 設定の持ち出しができるか。端末を替えるときに作り直しになるか

この5点を各社の公開ページで埋めていくと、機能の数ではなく自分の困りごとに対する当たり外れで並ぶ。Waveboxとの比較では、ログインの分離と通知の扱いを同じ軸で並べた表を置いている。同じ形式でRamboxとの比較も用意しているので、複数社を同じ物差しで見たいときの下敷きに使える。

内部の利用状況から見える判断の傾向

複数のWebアプリをまとめる道具の資料を見に来る読者が、どのページを先に開くかには傾向がある。料金を先に見る読者は、すでに道具の必要性を判断し終えていて、あとは負担額だけを確かめている。この層は無料枠の有無よりも、年額と解約条件を見ている。

一方で比較ページから入る読者は、まだ自分の困りごとを言葉にできていないことが多い。この層ができることのような機能一覧を先に読むと、項目の多さで判断が止まりやすい。分解の順番としては、機能一覧より先に、上で挙げた3つの困りごとのどれに当たるかを決めたほうが速い。

判断を早める材料として実務的なのは、金額そのものよりも、枠を超えるのがいつかを見積もっておくことだ。取引先が1社増えるたびにSpaceが1つ要る作業であれば、無料枠を超える時期はかなり正確に読める。料金のページで年額と機能の対応を確かめ、超える時期が3か月以内なら最初から有料前提で組んだほうが、設定をやり直す手間は減る。

よくある質問

Waveboxの無料プランだけで使い続けられますか?

料金ページでは、無料のBasicはGroupが2つ、それぞれにアプリが2つ、拡張機能が1つ、ダッシュボードが1つと示されています。仕事と個人の2アカウントを行き来する程度であれば、この枠に収まる可能性があります。取引先が3社以上ある、案件ごとに作業場を分けたいという段階になると枠を超えます。

Waveboxの試用期間はどれくらいで、カード登録は必要ですか?

Proの試用は7日間で、開始時にクレジットカードの登録は不要と明記されています。試用が終わると自動で課金されるのではなく、無料のBasicに移る作りです。試用中に追加したアプリやリンクは、あとから有料に切り替えた時点でそのまま使えるとされています。

macOSのどのバージョンから使えますか?

配布ページにはmacOS 12 Monterey以降と書かれており、Apple SiliconとIntelの両方に最適化されているとされています。WindowsとLinux向けも同じページから配布されています。導入前に、手元のMacのバージョンをアップルメニューのこのMacについてで確認しておくと確実です。

SpaceとProfileはどちらを使えばよいですか?

別々のログインを保ちつつ横断検索や画面分割で行き来したいならSpace、設定も拡張機能もパスワードも一切共有したくないならProfileが対応します。Profileは切り替えると別の環境が開く作りで、両者は分離の強さが違うだけです。迷ったときは、行き来したいかどうかで決めると判断が早くなります。

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