Arcブラウザの代替を選ぶ基準|窓の数で決める

Arc ブラウザ 代替で検索すると、候補の名前は5つも6つも出てくるのに、どれを選べばよいのかは最後まで決まらない。原因は候補の数ではなく、比べる基準が決まっていないことにある。この記事では、公開されている情報で確かめられる事実だけを並べて、基準を1つに絞るところまで進める。

先に結論を書くと、判断が割れるのは機能の数ではない。毎日の仕事が「1つの窓に全部入っている状態」で回るのか、「アプリごとに窓が分かれている状態」で回るのかという、配置の違いのところで割れる。ここを決めれば候補は自然に半分以下になる。

まず、Arcの現状を公式の掲示で確かめる

代替を探す前に、乗り換え元がいまどういう状態なのかを、伝聞ではなく公式サイトの表示で確かめておく。arc.netのトップページには、いま次の一文が掲示されている。

FYI: Arc receives Chromium updates only. For active security patches and enterprise-grade protection, download Dia instead. 出典: arc.net

同じページは後継としてDiaを案内しており、Diaの側には週次のセキュリティ更新とSOC 2認証が明記されている。Arc自体はMac版もWindows版もダウンロードでき、動作も止まっていない。つまりこれは配布終了の告知ではなく、更新の範囲が土台のChromiumに限定されたという告知だ。

背景も公開されている。Arcを作ったThe Browser Companyについて、Atlassianが2025年9月4日付の自社ブログで買収の合意を発表し、今後はDiaを知識労働者向けのブラウザとして育てる方針を示している。判断材料として大事なのは、この発表がArcの終了ではなく、開発資源の向き先の変更を意味している点にある。

個人のMacで使う分には、土台の更新だけでも当面は成り立つ。一方で、顧客の管理画面や社内システムに入る端末では、アプリ層のセキュリティ更新を誰がいつ出すのかが問われる。乗り換えを急ぐかどうかは、この1点で決まる。

「代替」と言うとき、指しているものが4つに分かれている

掲示板や比較記事で候補がばらつくのは、書き手ごとにArcの別々の部分を指しているからだ。実際に挙がる要望は次の4つに分かれる。

  • スペース。仕事と私用でタブの束を分けて、切り替えて使うこと
  • サイドバー。タブを横並びではなく縦に並べて、画面の左に置くこと
  • コマンドバー。キー1つで開いているタブと履歴と検索をまとめて呼び出すこと
  • プロファイル。ログインしているアカウント自体を分けること

この4つはほとんど別の機能で、片方を解決しても片方は残る。縦型のサイドバーはアカウントを分けないし、コマンドバーはタブの束を整理しない。候補を比べる前に、自分が失って困るのがどれなのかを1つ選ぶ。これをやらないまま候補表を眺めても、どの列を見ればよいかが決まらないので決断できない。

特に混同が多いのが、スペースとプロファイルの違いだ。スペースはタブをまとめる機能で、プロファイルはログイン状態を分ける機能になる。同じサービスに2つのアカウントで同時に入りたいという要望は後者で、前者の機能がいくら優れた製品を選んでも解決しない。

エンジンの違いが、そのまま拡張機能の移植性になる

候補の性格は、土台のエンジンでおおよそ決まる。ここを押さえると、比較表の残りは細部の話になる。

Zenはfirefox系で、オープンソースとして公開されている。公式サイトが掲げる機能はWorkspaces、Compact Mode、Glance、Split Viewの4つで、スペースとサイドバーの要望に正面から当たる。使える拡張機能はFirefoxのアドオンになる。

VivaldiはChromium系で、無料。機能ページはタブ関連が中心で、2階層でまとめるTab Stacking、開いたまま眠らせるTab Hibernation、画面分割のTab Tiling、サイドバーに任意のサイトを置くWeb Panels、そしてWorkspacesが並ぶ。Chromeの拡張機能がそのまま使える。

OrionはWebKit系で、Kagiが開発している。macOS、iOS、iPadOSに正式版があり、Linuxはベータ、Windowsはアルファ版と公式に記載されている。Safari、Chrome、Firefoxの拡張機能に対応すると明記しているのが特徴で、動作を確認した拡張機能を公式が絞って掲載している。本体は無料で、支援のためのOrion+が月5ドル、年50ドル、買い切り150ドルで用意されている。

SafariもWebKit系で、macOSに最初から入っている。プロファイルに対応しているので4つの要望のうちプロファイルは満たすが、スペースに相当する機能はない。

候補を同じ表に並べて、費用と得意分野を突き合わせる

公開ページに書かれている内容だけで並べると、候補の性格の違いが見えやすくなる。

候補 エンジン 費用 正面から当たる要望
Zen Firefox系 無料 スペース、サイドバー
Vivaldi Chromium系 無料 サイドバー、タブの整理
Orion WebKit系 無料、Orion+は月5ドルから 拡張機能の幅、プロファイル
Safari WebKit系 無料 プロファイル
Wavebox Chromium系 無料枠あり、Proは年払いで月8.33ドル アプリごとの置き場所
Ferdium Electron系 無料のオープンソース アプリごとの置き場所

注意したいのは、表の上4行と下2行が別の種類の製品だという点にある。上はブラウザで、タブの並べ方を変える。下はWebアプリを1つの窓にまとめる道具で、そもそもタブを使わずアプリごとに場所を割り当てる。どちらが優れているかではなく、冒頭で選んだ要望がどちらの列にあるかで決まる。

費用の条件も性格が違う。Waveboxの無料枠は2グループで各2アプリまで、拡張機能は1つまでと明示されており、Proは年払いで月8.33ドル、チーム向けは1人あたり月12.50ドルと公開されている。Ferdiumは全機能が無料のオープンソースで、アカウントなしでも使えると案内されている。同じ分野の製品を横に並べた整理はWaveboxとの比較Ferdiumとの比較にまとめてあり、無料枠がどこで切られるのかを先に見ておくと、試用の途中で行き止まりにならない。

乗り換えの負担は、機能ではなく移行の手間に出る

候補が決まっても、移行でつまずくと2週間で元に戻る。実際に時間を取られるのは次の4つになる。

1つ目は拡張機能で、これはエンジンで決まる。Firefox系を選ぶならChrome拡張の代わりを探す必要があり、Chromium系ならそのまま動く。Orionのように複数のエンジンの拡張機能に対応する製品もあるが、動作保証は公式が掲載している範囲になるので、業務で外せない2つ3つを名指しで確かめるのが早い。

2つ目はパスワードで、保存先が分散すると事故になる。移行の初日に、ブラウザ内蔵の保管庫を使うのか、外部の管理ツールに寄せるのかを決めてしまう。

3つ目はログイン状態で、二要素認証を入れているサービスはすべてやり直しになる。移行日は、認証アプリが手元にある日を選ぶ。

4つ目が見落とされやすい。前のブラウザを1つのサイトのためだけに残すと、次の週にもう1つ増え、結局2つのブラウザにセッションが割れる。こうなると、目的のタブがどちらの側にあるのか分からず、探す手間は乗り換え前より増える。残してよいサイトを最初に書き出し、その一覧を増やさないと決めておくと、この崩れ方は防げる。書き出す数は3件程度までに抑えたい。それ以上あるなら、その候補は自分の業務に合っていないという判断材料になる。

移行の作業そのものは、慣れる時間が取れる週を選ぶかどうかで体感が変わる。締め切りの直前に始めると、ほんの少しの操作の違いでも中断と感じられ、製品の良し悪しとは関係のない理由で戻ることになる。落ち着いて触れる週に、平日の5日間だけ本番の仕事で使ってみる。この置き方なら、判断に必要な材料は十分に集まる。

候補選びを誤らせる、3つの思い込み

同じ失敗が繰り返し起きるので、先に潰しておく。

1つ目は、見た目が似ている製品を後継だと考えてしまうことだ。縦型のサイドバーと角の丸い枠は、いまや多くの製品が採用している。見た目が近いほど移行は楽に感じるが、続くかどうかを決めるのは外観ではなく、アカウントの分け方と拡張機能の対応範囲になる。試用の初日に見るべきは配色ではなく、業務で使うサービスに2つのアカウントで同時に入れるかどうかだ。

2つ目は、機能の数が多いほど良いと考えてしまうことだ。Vivaldiのように設定項目を豊富に持つ製品は、使いこなせば強い一方で、初期設定に時間を取られる。設定に費やした時間は取り戻さないと元が取れないので、毎日5分浮く見込みがないなら、機能の少ない製品のほうが合っている場合がある。

3つ目が最も高くつく。開発が止まった製品から乗り換えるとき、同じ規模の小さな会社が作る製品を次に選ぶと、数年後に同じ判断をもう一度することになる。これは小さな会社の製品を避けろという話ではない。避けられないなら、ブックマークとパスワードを外部に持ち出せる形で保管しておき、次の移行を半日で終えられるようにしておく、という備え方の話になる。公式ページに書き出し機能の有無が明記されているかどうかは、試用の段階で確認しておきたい項目の1つだ。

この3つを外すだけで、候補の絞り込みはかなり速くなる。残るのは、冒頭で選んだ4つの要望のうちどれを解決したいのか、という1点だけになる。

窓の数で考えると、候補が1つに絞れる

ここまでの整理を、判断の基準として1本にまとめる。タブが増えて困っているのか、アカウントと通知が混ざって困っているのか。この2つは症状が似ていて、原因が違う。

タブの本数が問題なら、縦型タブとスペースを持つブラウザで解決する。ZenやVivaldiが当たるのはこの層になる。一方、仕事用と私用のアカウントが同じ窓にあり、片方の通知でもう片方の作業が切れるなら、タブをどう並べ替えても残る。必要なのはアプリごとに独立したワークスペースで、アプリに固定の置き場所を与えて、窓の側で分ける考え方になる。この配置の違いはワークスペースで図解しており、タブの束を切り替える方式との差がそこで確認できる。

判断を早くする測り方が1つある。2週間、切り替えのたびに「タブを探していたのか、アカウントを切り替えていたのか」を数える。前者が多ければブラウザの乗り換えで足り、後者が多ければ配置を変える道具が要る。感覚ではなく回数で決めれば、候補の名前に振り回されずに済む。

どちらの道具を選ぶ場合でも、毎日開くサービスが対応しているかどうかは先に確かめておきたい。使えるアプリに対応サービスの一覧があり、料金には無料で使える範囲が書かれている。候補を試す順番は1つずつでよい。順番は、費用のかからないものから当たるのが安全だ。同時に2つ入れると、どちらの何が効いたのか分からなくなり、結局どちらも残らない。

よくある質問

Arcはもう使えなくなるのですか?

arc.netでは今もMac版とWindows版がダウンロードでき、動作も続いています。公式の掲示は、Arcが受け取る更新が土台のChromiumのものに限られるという内容で、配布終了の告知ではありません。個人の端末なら当面は使えますが、業務端末でアプリ層のセキュリティ更新が求められる場合は、移行の検討時期に入っていると考えるのが妥当です。

無料の候補だけで乗り換えは完了しますか?

候補の多くは無料で使えます。ZenとFerdiumはオープンソースで無料、VivaldiとSafariも無料、Orionは本体無料で支援用のOrion+が月5ドルからです。Waveboxのような有料プランがある製品も無料枠を用意しており、2グループ各2アプリという上限の範囲であれば費用は発生しません。毎日開くサービスの数が上限に収まるかどうかで判断できます。

拡張機能はそのまま引き継げますか?

エンジンによって変わります。Chromium系のVivaldiならChromeの拡張機能がそのまま使え、Firefox系のZenはFirefoxのアドオンになります。OrionはSafari、Chrome、Firefoxの拡張機能に対応すると明記していますが、動作を保証しているのは公式が掲載している範囲です。仕事で外せない2つか3つを名指しで先に確認するのが確実です。

候補を試す期間はどのくらい必要ですか?

2週間を目安にすると判断がぶれません。最初の3日は目新しさで良く見えるため、その後の1週間で本来の使い方に戻ったときの感触を見ます。期間中は、切り替えのたびにタブを探していたのかアカウントを切り替えていたのかを数えておくと、次の候補を選ぶときの基準がそのまま手元に残ります。

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