仕事用と私用のブラウザを分ける選び方|条件の見方

仕事用と私用のブラウザを分ける erabikata を調べていると、方式の名前は次々に出てくるのに、どれが自分向きなのかは最後まで書かれていない記事によく当たります。理由ははっきりしていて、向き不向きを決めるのは方式の性能ではなく、読む人の条件だからです。ここでは、自分の状況を5つの条件に分解して、そこから向いている分け方を機械的に決める手順を示します。数えるのは10分もかかりません。

選び方を間違える原因は、条件を数えていないこと

分け方の記事を読んで決められないとき、たいてい起きているのは比較のしすぎです。仕切りの強さ、切り替えの速さ、費用、拡張機能の扱い。どれも一長一短なので、並べれば並べるほど決まらなくなります。

決まらない状態を抜けるには、比較する前に自分の条件を確定させるのが早道です。条件が決まれば、選択肢は自動的に2つか3つに減ります。減ったところで初めて、費用や好みで選べばよい。順番が逆になっている限り、何時間読んでも同じ場所を回ります。

数える条件は、アカウントの数、端末の持ち主、画面を見せる相手、通知の受け方、切り替えの頻度です。この5つ以外の要素は、あとから調整が効きます。

条件1: アカウントは何個あって、同時に何個開くか

最初に数えるのは、同じサービスに複数のアカウントを持っているかどうかです。仕事用と私用のメールが別々にある、チャットのワークスペースが3つある、といった状況を、サービスごとに書き出します。

ここで重要なのは「持っている数」ではなく「同時に開いておきたい数」です。持っているだけで月に数回しか開かないアカウントは、切り替えで十分です。同時に開いておきたいものが2つ以上あるサービスが1つでもあるなら、その時点で、ログイン状態を分けられる方式が必須になります。単純にブラウザの新しいウィンドウを開くだけでは足りません。

同時に開きたいものが3つ以上あるなら、条件はさらに厳しくなります。切り替えのたびに画面が入れ替わる方式では、比べながら作業ができません。並べて置ける作りの道具が要る、という判断がここで確定します。

数え方の具体例を挙げます。会社のメール、個人事業のメール、私用のメールで3つ。チャットが会社のワークスペースと取引先のワークスペースで2つ。ドキュメント共有が会社の管理下のものと自分のもので2つ。合計7つですが、同時に開いておきたいのは会社のメール、会社のチャット、取引先のチャット、自分のドキュメントの4つだけ、という形になるのが普通です。この4という数字が、以降の判断で使う数になります。持っている7ではありません。

書き出すときは、サービス名とアカウントの種類を必ず並記してください。「メール」とだけ書くと、あとで数が合わなくなります。

条件2: 端末は誰のもので、管理されているか

次に見るのは、そのMacが会社から貸与されたものか、自前のものかです。貸与された端末には、情報システム部門が管理の仕組みを入れていることが多く、入れられるアプリや同期の可否が制限されている場合があります。

  • 貸与された端末で、指定のブラウザ以外を入れられない場合は、そのブラウザの中で分ける方式しか選べません
  • 自前の端末で業務を行っている場合は、逆に、退職や契約終了のときに業務データを消せる形にしておく必要があります
  • 家族と1台を共用している場合は、仕切りの強さが最優先の条件になります

3つ目に該当する人は、ここで方式がほぼ決まります。ブラウザの中の仕切りは、他人から中身を隠す仕組みではないからです。切り替えられてしまう以上、家族が同じ端末を触る前提なら、macOSのユーザーアカウントを分けるところまで踏み込む必要があります。

自前の端末で業務を行っている人は、契約や就業規則で条件が決まっている場合もあります。業務データを私用の環境に置かないことが求められているなら、それは好みの問題ではなく要件です。分け方を選ぶ前に、取り決めの文面を一度読み直してください。あとから方式を変えるより、最初から要件に合う形で組むほうが手間が少なくて済みます。

条件3: 画面を人に見せる場面があるか

会議で画面を共有する、出社して隣に人が座る、こうした場面の有無は、必要な分離の深さを変えます。

見せる場面がある人にとって問題になるのは、Cookieよりも履歴とお気に入りです。アドレスバーに数文字打った瞬間に、私用で見ていたページの候補が出る。ブックマークバーに私用のサービスが並んでいる。事故はここで起きます。逆に言えば、Cookieだけを分ける方式は、この条件を満たしません。

Appleのサポート情報では、Safariのプロファイルで何が分かれるのかが列挙されています。

Each profile has separate history, cookies, website data, extensions, Tab Groups, and favorites. 出典: support.apple.com

履歴とお気に入りが分離の対象に入っている点が、この条件では効いてきます。分け方を選ぶときは、各方式の説明文に履歴とお気に入りが含まれているかを、そのまま照合してください。含まれていなければ、画面共有の事故は防げません。

照合のときに見落としやすいのが、検索の入力欄です。ブラウザの履歴を分けても、検索サービス側に残った履歴は、ログインしているアカウントに紐づいて出てきます。つまり、アカウントを分けずに履歴だけを分けても、検索欄の候補には私用の内容が出ます。画面共有の事故を本当に防ぐなら、ログインするアカウントごと分ける必要がある、という点まで確認してください。

見せる場面が年に数回しかない人は、共有の直前だけ別の環境を開く、という運用でも足ります。条件として重く数えるかどうかは、頻度ではなく、その場に誰がいるかで判断するのが実際的です。

条件4: 通知をどこで受けたいか

分離を強くするほど、通知は届かなくなります。仕事の時間に私用の連絡を遮断したい人にとってはこれが利点ですが、副業や個人事業をしている人にとっては欠点になります。

数えるのは、仕事時間中に見逃したくない私用の連絡があるかどうか、その1点です。あるなら、両方を同時に生かしておける方式に絞られます。ないなら、切り替え型の強い分離が使えます。

ここを曖昧にしたまま強い分離を選ぶと、結局どちらの環境も開きっぱなしにして、分けた意味がなくなります。実際に多いのは、通知は仕事側だけで受け、私用はスマートフォンで受ける、という分担です。この形にすると、Mac側は分離を強くできます。端末で役割を分けるという発想を入れると、条件の数が一気に減ります。

もうひとつ見ておきたいのが、通知を切ったときに何が起きるかです。チャットは通知を切っても、相手からは切っていることが見えません。返事が遅れたときに困るのは自分ではなく相手なので、通知を切る対象を決めるときは、返事の速さを期待されている相手が誰かを先に洗い出してください。取引先からの連絡だけは通知を残し、社内の共有チャンネルは切る、といった粒度まで決めておくと、分離を強くしても実務が止まりません。この整理ができていれば、道具の側に高度な通知の制御を求める必要も薄くなります。

条件5: 1日に何回切り替えるか

最後に数えるのが頻度です。切り替えが1日5回までなら、多少手間のかかる方式でも耐えられます。20回を超えるなら、切り替えの速さが最優先の条件になります。

頻度は自己申告だと外れます。実際には、チャットの通知を見るたびに切り替えているので、思っているより多いことがほとんどです。1日だけ、切り替えるたびに紙に線を引いて数えてみると、選ぶべき方式が変わることがあります。数えるのは午前中の3時間だけでも構いません。その数を3倍すれば、おおよその一日分になります。

回数が多い人は、切り替えではなく並置を検討する段階に来ています。アプリごとに独立したワークスペースを持たせて、仕事のチャットと私用のチャットをそれぞれ別の場所に置いたままにする作りなら、切り替えという操作自体が減ります。単位ごとに何が分かれるのかの整理はワークスペースのページにまとまっています。

5つの条件から方式を決める

数えた結果を、次の表に当てはめます。上の行から順に見て、最初に該当したものが候補です。

該当する条件 向いている方向
家族と1台を共用している OSのユーザーアカウントを分ける
画面共有や出社があり、履歴も分けたい 履歴とお気に入りまで分かれるプロファイル方式
同じサービスを2つ以上同時に開く ログイン状態を分けられる方式が必須
切り替えが1日20回を超える 切り替えではなく並置できる作り
上のどれにも当たらない いまのブラウザのプロファイルで足りる

最後の行に当たる人が一定数います。条件を数えた結果、分ける必要がなかったというのは正しい結論で、無理に道具を増やすほうが損をします。

複数の行に当たった場合は、上の行を優先してください。仕切りの強さは後から足せませんが、切り替えの速さは運用の工夫である程度補えるからです。

数えるときに外しやすい3点

条件の数え方には、結果をひっくり返してしまう誤りが3つあります。

1つ目は、将来の予定を条件に入れてしまうことです。来年から副業を始めるかもしれない、といった仮定を入れると、必要以上に強い分離を選ぶことになります。条件はいまの状態だけで数えてください。状況が変われば数え直せばよく、そのときの移し替えは初回ほど大変ではありません。

2つ目は、道具の名前で先に絞ってしまうことです。あの製品は評判がよい、この製品は高い、という情報から入ると、条件を満たさない方式を検討に残してしまいます。順番は条件が先で、製品名は最後です。

3つ目は、いちばん困っている場面ではなく、いちばん頻度の高い場面で数えてしまうことです。事故が起きるのは、月に一度の画面共有や、たまに家族にMacを貸す場面です。頻度が低くても損害が大きい場面は、条件として重く数えてください。分離の要件は、平均ではなく最悪の場面で決まります。

決めたあとに確認する3点

方向が決まったら、実際の道具を選ぶ前に3つだけ確認します。1つ目は、毎日常駐させたいWebサービスがその道具で扱える形になっているかです。対応の一覧は使えるアプリで確認できます。2つ目は、無料で使える範囲がどこまでかです。分ける単位の数に上限がある道具があり、条件1で数えたアカウント数が上限を超えていると、最初から有料が前提になります。価格の考え方は料金にまとまっています。

3つ目は、いまのブラウザから何を引き継げるかです。拡張機能、パスワード、ブックマークのうち、どれが移せてどれが移せないかを先に確認しておくと、移し替えの初日に手が止まりません。他の道具と条件を並べた整理としては、同居できるアプリ数や月額の考え方が異なるWaveboxとの比較、常駐と通知の扱いに差があるShiftとの比較、キーボード操作や検索の作りが異なるSidekickとの比較が参考になります。条件を先に数えてから読むと、どの行を見ればよいかが分かるので、比較表の前で止まらずに済みます。細かい条件はよくある質問にも整理されています。

よくある質問

条件を数えた結果、分けなくてよいという結論になることはありますか?

あります。同じサービスに複数のアカウントを持っておらず、画面を人に見せる場面もなく、切り替えの頻度も低いなら、いまのブラウザのプロファイル1つで足ります。この場合に道具を増やすと、管理する場所が増えるだけで得るものがありません。分ける必要がないという結論も正しい結論です。

会社から貸与されたMacでは、選べる方式が限られますか?

限られる場合があります。情報システム部門が管理の仕組みを入れていると、追加できるアプリや同期の可否が制限されていることがあります。指定されたブラウザ以外を入れられない環境では、そのブラウザの中でプロファイルを分ける方式が現実的な選択になります。導入前に管理部門に確認してください。

切り替えの頻度はどうやって数えればいいですか?

1日だけ、切り替えるたびに紙に線を引いて実際に数えてください。自己申告では少なく見積もられるのが普通で、チャットの通知を見るたびの切り替えが数に入っていないことがほとんどです。1日20回を超えるようなら、切り替えを速くする方向ではなく、並べて置ける作りを検討する段階に来ています。

複数の条件に当てはまったときはどれを優先しますか?

仕切りの強さに関わる条件を優先してください。家族との共用や画面共有のように、分離が足りないと事故になる条件は、あとから運用で補うことができません。逆に切り替えの手間は、常駐させるサービスを絞る、通知の受け先を端末ごとに分ける、といった工夫である程度吸収できます。

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