Biscuitブラウザは今も使えるのか、代わりはあるか

biscuit ブラウザを調べている人は、だいたい2つのうちどちらかの状況にいる。Macに Gmail と Slack と Notion と取引先の管理画面が合わせて20タブ開いていて、もう少し軽い置き方を探しているか。あるいは以前から入れていて、端末を入れ替えたら設定の半分が戻ってこなかったか。この2つは別の問題で、前者だけがインストールで片付く。この記事では、公開されている資料をもとに、このアプリが今どういう作りになっているのか、どこまで足りて、どこから代わりを探すことになるのかを整理する。

結論を先に置くと、毎日使うサービスを費用をかけずにまとめたいだけなら、確かめることはほとんど無い。確かめる項目が増えるのは、複数アカウント、複数の端末、取引先ごとの分離、この3つが絡んだときになる。

配布の条件は今どうなっているか

Biscuitは、ページではなくWebアプリを単位に組み立てられたデスクトップ向けのブラウザになる。サイドバーにグループとアプリが並び、タブバーには今選んでいるアプリに属するタブが並ぶ。アプリの中で開いたリンクは、そのアプリにひもづいたまま残る。

配布の条件は、この分野としては珍しく単純になる。公開ページでは、macOSのIntel版とAppleシリコン版、Windows版、Linux版が配られていて、無料、トラッキングなし、登録不要と明記されている。プランの表も、試用期間の残り日数も、席数の指定も無い。ページは日本語、英語、ドイツ語で用意されていて、フッターには2026年のBiscuit Projectの表記がある。

つまり、料金で迷う要素が最初から存在しない。5個か6個のサービスを毎日開いていて、それを1つの窓にまとめたいだけなら、入れて、アプリを追加して、それで終わる。

比較を始める前に、作りの前提を2つ押さえておくとよい。1つは、整理の単位がタブではなくアプリであること。もう1つは、設定をまとめて保持するサーバ側のアカウントが存在しないことになる。後者は、外部に情報を預けないという利点であると同時に、端末をまたいだときの持ち運びやすさの面では制約になる。

セッションの分け方が中心にある

同じサービスに3つのアカウントでログインしたい、というのが普通のブラウザを離れる最大の理由で、この製品の答えははっきりしている。

標準では、アプリ同士はサインインの状態を共有しない。アプリごとに独立したセッションを持つので、あるアプリでログインしても、別のアプリには広がらない。公開ページでは、同じサービスのアカウントを複数並べたまま、切り替えずに使える、という形で説明されている。

例外の仕組みもある。グループに対して共有セッションを有効にすると、そのグループの中のアプリが、1つのブラウザプロファイルのようにふるまう。ヘルプに添えられている注意書きが実務では重要で、共有セッションを有効にするとアプリへの再ログインが必要になる。セッションの持ち方そのものが変わるためになる。

ここから手順の順番が決まる。アプリを15個追加してから分け方を決めるのではなく、分け方を決めてから追加する。取引先ごとにグループを作り、分離は標準のまま切らない、という形が、あとから増えても崩れにくい。共有セッションを使うのは、同じ提供元の複数のサービスを1つのログインで通しているような、密接につながった組み合わせに限られる。

保存したパスワードの置き場所も、この節に含まれる。ログインフォームを送信したあとにユーザー名とパスワードを保存するか確認が出て、保存したものは製品内のパスワード管理画面から見直せる。ヘルプには、保存パスワード、Cookie、ログイン状態は端末ローカルに残る、と明記されている。この分野では珍しくない作りだが、次の節につながる前提になる。

クラウド同期が運ぶもの、運ばないもの

評価が分かれるのがここで、公開されている説明をそのまま読むのが早い。

同期されるもの: 最上位のタブ構造、通知設定、ショートカット設定など、端末非依存のワークスペース設定です。同期されないもの: 認証情報、Cookie、保存パスワード、ログイン状態、ローカルな子タブ URL などの端末固有データです。 出典: eatbiscuit.com

冒頭の「端末を入れ替えたら設定の半分が戻ってこなかった」という状況に、この説明をそのまま当てるとよい。構成の形は戻ってくる。ログインは戻ってこない。

個人のアカウントを2つ使っているだけなら、これは20分の手間になる。取引先4社分、サービス4種類、合わせて12個のアカウントを持っていて、それぞれに二段階認証が付いているなら、ほぼ1日仕事になる。しかも端末を替えるたびに繰り返すことになる。

近い仕組みは2つ用意されている。バックアップを保持していて一覧から復元できること、そしてアプリとタブの設定を書き出して別のマシンへ読み込めることになる。どちらも構成を運ぶ。時間がかかるほうは運ばない。ヘルプ自体も、認証状態やセッションまで持って行きたい場合は別の種類の移行だと考えたほうが安全だ、と書いている。

端末を2台使う場合に先に知っておくとよい決まりがもう1つある。別の端末が先に同期した場合、最新の同期済みワークスペースが読み込まれ、上書きする前に見直せるようになる。設計としては妥当だが、どちらの端末の構成を正とするかが、設定ではなく同期の順番で決まることを意味する。

通知とキーボードの動き

この分野の製品を毎日使ったときの快適さは、結局2つで決まる。割り込みを自分で形にできるかと、切り替えにマウスが要るかになる。

割り込みについては、アプリ単位と全体の両方で制御できる。アプリを右クリックすればそのアプリの通知をオンオフでき、通知ボタンで全部をまとめてミュートできる。未読の表示は、設定でドットと数字を切り替えられる。ヘルプには、一部のサービスは専用の未読判定を持つため、普通のブラウザタブよりアプリらしい表示になる、と書かれている。タブのグループ機能に対してこの分野を選ぶ理由としては、見た目が整うことよりも、この通知の扱いのほうが実質的になる。

移動については、覚えるショートカットが少ない。アプリスイッチャーは Cmd + O で開き、Ctrl + Tab と Ctrl + Shift + Tab で送る。サイドバーの表示切り替えは Cmd + B、アドレスバーへの移動は Cmd + L、ショートカットの一覧は Cmd + / で出る。数字キーの移動先は、設定によってアプリかタブかが変わる。数字キーが想定と違う動きをする、という話が出やすいのはこのためになる。

この分野を試すなら、初日に確かめる項目は1つでよい。いちばんよく使うアプリから、2番目によく使うアプリへ移るのに何回キーを押すかになる。機能の一覧表からは読み取れないし、この手数は1週間に数百回払うことになる。

代わりを探す人が引っかかる4つの点

この製品名と「代替」を並べて検索される理由は、だいたい4つに集まる。値段はその中に入っていない。

1つ目が同期になる。前の節のとおりで、ログイン状態を運ばない構成は、新しい端末のたびに手で組み直す構成になる。

2つ目が、アプリと一般的なWeb閲覧の境目になる。ヘルプ自身が、日常的に使うアプリ系サービスを置くと活きやすく、一般的なWeb検索は通常ブラウザに分ける運用と相性がよい、と案内している。正直な説明だが、これは結果としてもう1つのブラウザがドックに残ることを意味する。分かれているほうがよいと考える人もいるし、調べもののタブと仕様書のタブが違う窓に散るのが困る人もいる。

3つ目が拡張機能になる。広告のブロック、パスワード管理、クリッピングの3つは、多くの人にとって作業の土台になっている。それらがChromeウェブストアを前提に組まれている場合、置き場所を変えるかどうかの判断が必要になる。

4つ目が、支援と継続性になる。アカウントも課金も無い製品には、契約上の支援窓口も無い。個人の用途なら問題にならないが、取引先の仕事が載っている端末では、有料であることそのものを選ぶ理由にする人もいる。

代わりに求める条件と、無料で使える範囲

この分野の比較は機能の一覧になりやすいが、実際に効くのは各社が無料でどこまで配っているかになる。下の数字は各社の公開ページを2026年9月18日に開いて確認したものになる。

製品 無料で使える範囲 有料
Biscuit 無料、登録不要、プランの区分なし 記載なし
Wavebox 2グループ、各2アプリ、拡張機能1つ 年払いで月8.33ドル
Rambox アプリ数は無制限、1アプリ2インスタンスまで、ワークスペースと多重ログインは有料 月7ドル、年70ドル
Shift 5スペース、各10アプリ 年199.99ドル
Ferdium オープンソース、上限の記載なし なし

この表から3つのことが言える。この分野では無料が珍しくないので、無料であること自体は選ぶ理由にならない。最初に当たる上限は、アプリの数ではなくアカウントとワークスペースの数で数えられていることが多い。そして有料の製品が費用を取っているのは、無料の範囲が手前で止めている2つ、つまりアカウントごとの分離と端末をまたいだ同期であることが多い。

ここから、確かめる項目が具体的になる。アプリごとに入れ物が分かれること。同じサービスに2回ログインして、実際に両方が保たれることを目で確かめること。同期が何を運んで何を運ばないかが文章で書かれていること。通知をアプリ単位で切れること。そしてスイッチャーがマウス無しで届くこと。

アプリごとに独立したワークスペースを持たせる作りが実際にどう動くかはワークスペースに、機能の全体像はできることに説明されている。製品ごとの差を横に並べた内容はWaveboxとの比較Ferdiumとの比較Ramboxとの比較Shiftとの比較Sidekickとの比較にある。対応しているサービスは使えるアプリで確認でき、一覧に無いものもURLを入れれば追加できる作りが一般的だ。同じ窓の中でターミナルを開きたい場合はターミナルが該当する。金額の条件は料金に、購入前によく聞かれる点はよくある質問に整理されている。

移すときの順番

移す先が別の製品であっても、2台目のMacであっても、作業の中身はほぼ同じになる。そして大半は、構成ではなくログインの作業になる。

最初にやるのは、何も触らずに今の構成を書き出すことになる。アプリの一覧、それぞれがどのアカウントを持っているか、どのグループに入っているか、そのグループが共有セッションかどうか。アプリとタブの設定の書き出しは構成を残せるので、移す先が読めない形式であっても記録として持っておく価値がある。メモに一覧を書くだけでも同じ役目を果たし、こちらは何からでも読める。

次に、古い端末を消す前に二段階認証の復旧経路を片付ける。端末にひもづいた認証コードは、2時間で終わるはずの移行を2日に変える最大の原因になる。一覧にあるすべてのアカウントについて、これから手放す端末以外の手段で復旧できることを確かめておく。

そのうえで、実際の使用頻度の順に組み直す。仕事の大半を占める2つか3つのアプリを先に入れ、通知と未読の表示まで含めて動作を確かめる。週に1度しか開かないサービスの列は後回しでよく、そのうちいくつかは追加し直す価値が無いことが分かる。これは移行のときにだけ得られる副産物になる。

頻度の順に組み直した構成は、3分の1しか終わっていなくても1時間後には使える状態になる。名前の順に組み直した構成は、最後の1つが入るまで使えない。どの製品を選んでも、この順番だけは変わらない。

よくある質問

Biscuitは今も配布されていて、無料ですか?

公開ページでは、macOSのIntel版とAppleシリコン版、Windows版、Linux版が配られていて、無料、トラッキングなし、登録不要と明記されています。有料プランやプランの区分は併記されていません。小規模な開発体制の製品なので、入れる時点で配布ページの表示を自分で確かめるのがいちばん確実です。

同じサービスに2つのアカウントでログインしたままにできますか?

できます。標準ではアプリごとに独立したセッションを持つため、あるアプリでのログインが別のアプリに広がりません。公開ページでも、同じサービスのアカウントを複数並べたまま使える形で説明されています。逆に同じグループ内で1つのログインを共有したい場合は共有セッションを有効にしますが、その際は再ログインが必要になります。

パスワードは2台のMacの間で同期されますか?

されません。ヘルプでは、クラウド同期の対象は最上位のタブ構造、通知設定、ショートカット設定など端末に依存しない設定であり、認証情報、Cookie、保存パスワード、ログイン状態は含まれないと明記されています。書き出しと読み込みで構成は別の端末へ運べますが、ログインは移った先で入れ直すことになります。

この種のアプリは、Chromeのタブグループより優れていますか?

解決している問題が違います。タブグループは1つのプロファイルの中でタブを整理するため、Cookieは共有され、同じサービスの2つのアカウントは衝突します。アプリ単位で入れ物を分ける作りでは、アプリごとにセッションと通知の設定を持てるので、1つのサービスに複数のアカウントでログインしたままにする必要があるかどうかが選び分けの基準になります。

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