Braveブラウザが怪しいと感じたとき|Macで選べる代わりの候補
Braveブラウザが怪しいと感じるとき、その感覚は多くの場合、複数の別々の理由が混ざったものになっている。広告を消すのに無料であること、暗号資産のアイコンがアドレスバーに出ること、過去の不祥事を伝える記事、そして聞き慣れない企業名。どれも理由としては正当だが、一緒くたにすると「なんとなく不安」以上に進まない。ここでは感覚を分解して、公開されている資料で確かめられる部分と、確かめようがなく好みで決めるしかない部分を分ける。そのうえで、Macで実際に選べる乗り換え先を、何を重視するかごとに並べる。
怪しいと感じる理由は、性質の違う4つが混ざっている
同じ「怪しい」でも、中身はこの4種類に分かれる。どれに引っかかっているのかが分かると、確かめる方法も決まる。
- 収益の仕組みが見えない。広告を遮断するブラウザを無料で配って、どこで利益を出しているのかが分からない
- 暗号資産が絡んでいる。BAT(Basic Attention Token)というトークンの受け取りが機能として組み込まれている
- 過去に報じられた出来事。アフィリエイトコードの件と、寄付画面に未登録の制作者が表示されていた件
- 提供元が馴染みのない企業である。米国のBrave Software社が開発しており、日本国内での知名度は高くない
1つ目と2つ目は、仕組みを読めば答えが出る。3つ目は事実の確認で済む。4つ目だけは確かめようがなく、最終的に好みで決めることになる。
収益の仕組みは、公開されている
無料で配られている道具に警戒するのは正しい反応になる。ただし、Braveの場合は収益源が隠されているわけではない。
Braveは自社で広告の仕組みを持っている。Brave Adsと呼ばれるもので、Webページの中に広告を差し込むのではなく、新しいタブの画像や通知として表示される。これを見ることに同意した利用者にはトークンが支払われ、広告主が支払う費用の一部がBrave側の収益になる。同社の説明では、この仕組みは初期状態ではオフで、アドレスバーのトークンのアイコンから自分で有効にしない限り動かない。
つまり、Braveを広告ブロック内蔵のブラウザとしてだけ使っている人は、Braveに収益をもたらしていない。有料の定期購読サービスも用意されており、端末全体の通信を対象とするVPNと、AIアシスタントの上位プランがそれにあたる。VPNのページには、通信記録を保存しない方針を外部監査で検証したこと、40を超える地域に300台以上のサーバを置いていること、1つの契約で10台まで保護できることが記載されている。
無料の利用者から直接お金を取らずに、広告と定期購読で回す構造そのものは、検索エンジンやメールサービスと同じ形になる。納得するかどうかは別として、仕組みが公開されていない類のものではない。
過去の出来事は、Brave自身が公表している
不信の根拠として引用されることが多い出来事は2件あり、どちらもBraveが公式ブログで説明を出している。
1件目は2020年6月のアフィリエイトコードの件で、アドレスバーに特定の暗号資産取引所のURLを入力すると、確定する補完先にアフィリエイトコードが付いていた。Braveはこれを実装の誤りとして公表し、デスクトップ版の安定版1.9.80で修正した。修正の内容は、アドレスバーの候補表示に関する設定の初期値をオフにするというものだった。同じ記事で、利用者の個人情報が関与しないこと、Webページ上のリンクが書き換えられたわけではないことも明記されている。
2件目は2018年12月の寄付機能の件になる。
We apologize for the errors showing unverified creators in the Brave Rewards tipping panel, and look forward to sharing an improved system with you. 出典: brave.com
寄付画面に、Braveのプログラムへ登録していない制作者が表示されていたことへの謝罪になる。同じ記事で、未登録であることを画面に明示すること、未登録者のチャンネル画像を表示しないことを発表し、寄付されたトークンを自社のものにしたことはないと説明している。
この2件を読んで「公表して直したのだから信頼できる」と判断する人と、「そもそも既定値でそれをやる設計思想が合わない」と判断する人がいる。どちらの読み方も成り立つ。後者なら、乗り換え先を探すのは自然な結論になる。
Macで現実的に選べる候補を並べる
乗り換え先を決めるとき、比べる軸を先に決めておくと早い。広告の遮断、基盤となる技術、提供元、そしてMacとの相性の4つで見る。
| 候補 | 広告とトラッカーの遮断 | 基盤 | 提供元 |
|---|---|---|---|
| Safari | サイトをまたぐ追跡の防止が標準で有効 | WebKit | Apple |
| Chrome | 拡張機能が必要 | Chromium | |
| Firefox | Total Cookie Protectionが標準で有効 | Gecko | Mozilla |
| Chromium系の他ブラウザ | 製品により異なる | Chromium | 各社 |
Safariは、MacとiPhoneで同じブックマークとパスワードを使っている人にとって摩擦が最も少ない。サイトをまたいだ追跡を防ぐ設定は標準で有効になっており、Appleのサポート文書に設定場所の説明がある。プロファイルを作って用途ごとに分ける機能も、Safariのユーザガイドに記載がある。
Firefoxは、基盤がChromiumでもWebKitでもない選択肢になる。クッキーをサイトごとに分離するTotal Cookie Protectionが標準で有効で、Mozillaのサポート記事に仕組みの説明がある。営利企業の製品が気になる人にとっては、非営利団体が母体であることが判断材料になる。
Chromeは、拡張機能を自分で選ぶ前提の選択肢になる。遮断の強さは入れる拡張機能次第で、設定を自分で管理したい人には向く。Chromeのプロファイルに関するヘルプに、アカウントごとに環境を分ける手順がまとまっている。
何を怪しいと思ったかで、選ぶ先が変わる
理由ごとに向かう先は違う。ここを取り違えると、乗り換えたのに同じ不満が残る。
- 暗号資産が絡むことが引っかかっているなら、Safari、Firefox、Chromeのいずれでも解決する。どれもトークンの仕組みを持たない
- 無料の理由が分からないことが引っかかっているなら、Appleの製品やMozillaの製品のほうが構造を説明しやすい。前者は端末の販売で、後者は寄付と検索の提携で成り立っている
- 企業への不信が引っかかっているなら、源泉が公開されている製品を選ぶという基準がある。ただし、公開されていることと監査されていることは別の話になる
- 広告ブロックそのものを手放したくないなら、Braveをやめること自体が損失になる。この場合は拡張機能を自分で入れる前提で、Chrome、Firefox、Safariのいずれかに移るのが現実的な形になる
乗り換えの手間は、どこから移るかで大きく変わる。BraveはChromiumを基盤にしているため、Chromeへの移行はブックマークもパスワードも拡張機能もほぼそのまま引き継げる。SafariとFirefoxへ移る場合は、拡張機能を選び直す作業が発生する。
乗り換えのときに、実際にやることの順番
ブラウザの入れ替えが途中で頓挫する原因は、だいたい決まっている。順番を守れば避けられる。
- 先に移行先でインポートを済ませる。ブックマーク、パスワード、履歴をまとめて取り込んでから、元のブラウザを消す。逆の順番にすると、保存していたパスワードが取り出せなくなる
- macOSの既定のブラウザを同じタイミングで切り替える。ここを忘れると、メールやカレンダーの招待から開いたリンクだけが古いブラウザで開き、1週間で作業が二か所に分かれる
- 拡張機能は移行の初日にすべて入れ直さない。毎日使うものを3つまで入れて、足りなくなってから足す。最初に全部入れると、表示が崩れたときに原因の切り分けができなくなる
- 同期の設定を見直す。Braveの同期を使っていた場合、移行後もそのまま残しておくと、どちらが最新なのか分からなくなる。使わないと決めたら解除しておく
表示が崩れたときの扱いも決めておくとよい。広告の遮断が原因で決済画面や社内システムが動かないことは、どのブラウザでも起きる。多くの製品はアドレスバーのアイコンから、そのドメインだけ遮断を切れるようになっている。この操作が1クリックで済むかどうかは、保護機能が日常の運用に残るかどうかを分ける。数回続けて崩れた経験をすると、多くの人は機能ごと切ってしまうからだ。
移行の成否は、最初の2週間で決まる。その間に元のブラウザを開く回数がゼロに近づかないなら、移行先の選び方か、既定ブラウザの設定のどちらかが合っていない。
候補を絞ったあとに残る、もうひとつの問題
ここまでで、怪しいという感覚への答えはおおむね出る。ただし、乗り換え先を決めた直後に、多くの人がもうひとつの問題に突き当たる。アカウントの数だ。
Gmailを3つ、スラックを2つ、顧客ごとのNotionを使い分けている状態は、どのブラウザに移っても変わらない。1つのプロファイルが持てるクッキーは1組なので、2つ目のアカウントには2つ目のプロファイルが必要になる。プロファイルを増やすと窓が増え、拡張機能の設定も別々になり、リンクを踏む前にどの窓にいるかを確認する手間が毎回かかる。
この制約はBraveの問題ではない。ChromeにもSafariにもFirefoxにも同じ形で存在する。プロファイルという単位で環境を分ける設計を採っている限り、同じ制約がついてくる。乗り換えの目的が「怪しいものを外す」ことなら達成できるが、「仕事が楽になる」ことなら、この時点ではまだ何も解決していない。
アプリごとに窓を分けるという、別系統の考え方
プロファイルとは違う単位で環境を分ける道具の系統がある。ブラウザをページを読む道具ではなく、Webアプリを収める入れ物として設計したもので、アプリごとに独立したワークスペースを作る。登録したアプリはそれぞれが自分専用のクッキー領域を持つため、Gmailを3つ登録すれば3つとも同時にログインしたまま並ぶ。窓は1つで済む。
アプリの置き場所と切り替えの仕組みがどうなっているかは、画面の構成とあわせて解説したワークスペースのページで確認できる。この系統の道具はサービスごとに対応の可否があるため、対応する311種類のサービスを一覧にした使えるアプリで、毎日使うものが揃っているかを先に見ておくと判断が早い。
同系統の製品は複数あり、無料で使える範囲と有料プランの金額が製品ごとに違う。条件を1対1で並べた資料としては、有料プランが年払い前提の製品と比べたWaveboxとの比較や、無料で全機能を提供している製品と比べたFerdiumとの比較がある。導入前に確認されやすい点はよくある質問にまとまっている。
判断の順番としては、怪しいと感じた理由がどれだったかを先に確定させるのが早い。暗号資産や企業への不信が理由なら、Safariに移して1週間使えば片がつく。移してもタブの列が読めず、同じアカウントのログアウトを繰り返しているなら、引っかかっていたのはブラウザの銘柄ではなく、窓とアカウントの数え方のほうになる。
よくある質問
Braveブラウザが怪しいと言われるのはなぜですか?
理由は主に4つに分かれます。広告を遮断するブラウザを無料で配っている収益構造、BATというトークンを扱う機能が組み込まれていること、2020年のアフィリエイトコードの件と2018年の寄付画面の件、そして提供元が日本では馴染みの薄い企業であることです。前の3つはBraveが公開している資料で確認でき、最後の1つは好みの問題になります。
Braveをやめるなら、Macでは何に移るのがよいですか?
引っかかった理由によって変わります。暗号資産の機能が理由ならSafari、Firefox、Chromeのいずれでも解決します。ブックマークや拡張機能をそのまま引き継ぎたいなら、同じChromiumを基盤にするChromeが最も摩擦が小さく、非営利団体の製品を選びたいならFirefoxが候補になります。
Braveをアンインストールすると、ブックマークやパスワードは消えますか?
先に移行先のブラウザでインポートを済ませてからアンインストールするのが安全です。BraveはChromiumを基盤にしているため、Chromeへのインポートはブックマーク、パスワード、履歴をまとめて移せます。同期を有効にしていた場合は、移行後に同期の設定も見直してください。
ブラウザを変えれば、複数アカウントの使い分けは楽になりますか?
ブラウザの銘柄を変えるだけでは変わりません。1つのプロファイルが保持できるログインは1組なので、同じサービスの2つ目のアカウントには2つ目のプロファイルが必要になり、窓が増えます。1つの窓で複数アカウントを同時に保持したい場合は、アプリごとにクッキー領域を分ける設計の道具を検討することになります。