Chromeのプロファイルを複数使うとき|限界と次の選択肢
「chrome プロファイル 複数」で検索する人の多くは、すでに2つ目か3つ目のプロファイルを作り終えている。作り方そのものは数分で済むのに、増やしたあとで困る場面が出てくるからもう一度調べている、という順番になっていることが多い。仕事のGmailと私用のGmail、取引先のGoogle Workspace、それに検証用のアカウントが並び、どの窓がどれなのか一瞬で分からなくなる。
この記事では、Chromeのプロファイルが何を分けていて何を分けていないのかをはっきりさせたうえで、複数運用で残り続ける限界と、その先に取れる選択肢を並べる。作るかどうかではなく、何個まで作って、どこから別の道具に任せるかを決められるようにするのが目的になる。
複数プロファイルを求める人が増えた背景
Chrome公式のヘルプがプロファイルの用途として挙げているのは2つだけである。1台のパソコンを複数の人で共用する場合と、仕事用と個人用のように別々のアカウントを使い分ける場合。どちらも、パソコンが家族や部署の共有物だった時代の想定に近い。
ところが今の使われ方は3つ目に寄っている。パソコンは1人1台で、共用する相手はいない。それでも1人が持つアカウントの数が増えた。所属先のGoogle Workspace、個人のGmail、業務委託先から渡されたアカウント、生成AIや設計ツールの契約。Webアプリが仕事場そのものになったことで、同時にログインしていたいセッションの数が、ブラウザの想定を超えた。
プロファイルという言葉自体が分かりにくいという声も多い。現場での説明としては、次のような言い方が実情に近い。
「プロファイル」とはプロフィールのことです。プロファイル機能とは一言でいうと、インターネットを見るアプリの中に、自分専用の部屋を複数作る機能です。 出典: school.dx-hiroshima.com
部屋という比喩は分かりやすい一方で、期待をふくらませやすいところもある。実際に分かれているのは部屋の中の家具であって、玄関やポスト、表札にあたる部分は共有されたままになっている。ここを先に押さえておくと、複数運用で起きる困りごとの見当が付く。困りごとは「分かれている側」ではなく「共有されている側」に集中して出るからである。
プロファイルが分けているものと、分けていないもの
分けているものははっきりしている。ブックマーク、閲覧履歴、保存したパスワード、自動入力、Cookieとサイトのデータ、拡張機能、そしてテーマカラーや各種設定。プロファイルを削除すると、そのプロファイルのブックマークや履歴、パスワードはパソコンから消える、とヘルプにも明記されている。つまりデータの側から見れば、プロファイルは十分に独立している。
分けていないものは、macOSから見た身元にあたる部分である。
- アプリケーションとしての姿。Dockに並ぶのは
/Applications/Google Chrome.appという1つの束で、プロファイルが3つあってもアイコンは1つのまま - Command+Tabの切り替え。3つのプロファイルの窓は、キーボードから見れば1つのアプリの3枚の窓として扱われる
- リンクを開く先。メールやSlackから開いたURLは、最後に使っていたプロファイルで開く
- ダウンロード先のフォルダの既定値や、OSに渡す通知の出どころ
実体の置き場所も知っておくと切り分けが速くなる。macOSでは~/Library/Application Support/Google/Chromeの下にプロファイルごとのフォルダがある。最初に作られたものはProfile 0ではなくDefaultで、以降はProfile 1、Profile 2と番号が付く。削除しても番号は詰められないため、何年か使っている機械ではProfile 1の次がProfile 17のように飛ぶ。画面に出ている「仕事」という表示名と、フォルダ名のProfile 17は別物である。ここを取り違えると、後述する起動用のコマンドが黙って別のアカウントを開く。
表示名とフォルダ名の対応は、目的のプロファイルでアドレス欄にchrome://versionと入れて「プロファイルパス」の行末を見るのが確実である。
複数作る前に決めておく4つのこと
作ってから決め直すと、ブックマークとパスワードの引っ越しが発生する。先に決めておくほうが結局早い。
分ける単位をアカウントにするか、役割にするか
アカウント単位で分けると、Googleアカウントの数だけプロファイルが増える。役割単位で分けると、「仕事」「私用」「検証」のように数を抑えられるが、1つのプロファイルの中で複数のGoogleアカウントを切り替えることになり、Gmailの誤送信や、意図しないアカウントでのファイル共有が起きやすくなる。同じサービスに同時にログインしていたい数がそのまま必要なプロファイル数になる、と考えるのが実情に合う。
最初のプロファイルをどのアカウントにするか
Defaultは削除せずに使い続ける前提のプロファイルである。ここに私用のアカウントを入れると、外部アプリから開いたリンクが私用側で開く場面が増える。逆に仕事用を入れると、休日にニュースを読むだけのつもりで業務アカウントの履歴が伸びる。どちらが困らないかを先に選んでおく。
見分ける印を最初に付けるか
Chromeはプロファイルごとに名前、写真、テーマカラーを設定できる。設定は右上のプロファイルから「Chrome プロファイルを管理」に入り、編集したいプロファイルの編集メニューから変更でき、変更は自動で保存される。色を後から付け直すこと自体は簡単だが、印が無いまま数週間使うと、窓の見分けを目ではなく記憶に頼る癖が付く。
起動時にプロファイル選択を出すか
Chromeには、新しいブラウザセッションを開いたときにすべてのプロファイルを一覧表示する設定がある。プロファイル管理の画面の下にある「起動時に表示する」をオンにすると、起動のたびにどのプロファイルで開くかを選ぶ形になる。毎回1手増えるかわりに、誤ったアカウントで作業を始める事故は減る。3つ以上のプロファイルを常用するなら、オンにしておくほうが釣り合う。
複数にしたあとに残る詰まり
ここからが、作り方の記事にはあまり書かれていない部分になる。プロファイルを増やすと、次の問題は消えずに残る。
- Dockのアイコンが1つしかないため、目的のアカウントに移るにはウィンドウ右上のアバターを押し、別の窓が開くのを待ち、間違って開いた窓を閉じる、という手順になる
- Command+Tabでプロファイルを直接選べない。同じアプリの窓を回す操作に頼ることになり、アプリを横断する切り替えとは別の手順を覚えることになる
- 通知が鳴ったとき、どのプロファイルのどのタブが鳴らしたのかが分からない。タブを順に見に行くことになる
- 拡張機能をプロファイルごとに入れ直す必要がある。設定の変更も、使っているプロファイルの数だけ繰り返す
- プロファイルごとに別のプロセス群が立つため、同時に開く数が増えるほどメモリを使う
- タブの数は減らない。3つのプロファイルに10個ずつ開けば、目の前には30個のタブがある
最後の1点が、複数プロファイルの限界をいちばんよく表している。プロファイルはセッションを分ける仕組みであって、タブを減らす仕組みではない。アカウントの取り違えは減っても、注意が切れる原因であるタブの数はそのまま残る。
共用の機械で複数使うときの注意
プロファイルは鍵ではない。Chrome公式のヘルプも、デバイスは信頼できる相手とだけ共用するようにと注意しており、その機械を使える人は設定されている他のどのプロファイルにも切り替えられると書いている。自分のプロファイルを他の人が開けば、見たサイトなどの情報は知られる。会議室の共用ノートや、検証用に置いてある機械に業務アカウントのプロファイルを残したままにするのは、パスワードを付箋で貼っているのに近い扱いになる。
同じ理由から、退職や契約の終了で使わなくなったアカウントのプロファイルは、その場で削除しておく。削除するとそのプロファイルのブックマークや履歴、保存されたパスワードは機械から消えるため、残したい情報があるなら先に書き出す。業務で預かったアカウントは、貸し出し元の規定でローカルに履歴を残せない場合もあるので、プロファイルを作る前に確認しておくほうが手戻りが少ない。
もう1つの注意は、同期を入れるかどうかである。新しいプロファイルでGoogleアカウントにログインすると、ブックマークやパスワードをアカウントに保存して、ログインしている他のデバイスから使えるようになる。便利な反面、私用の機械に業務のブックマークとパスワードが降りてくることになる。同期を入れる範囲は、プロファイルごとに分けて決める。
窓が増えすぎたときの選択肢
取れる道は大きく4つある。どれが正しいということはなく、何を分けたいのかで変わる。
| やり方 | セッションを分けられる | 窓を見分けられる | Command+Tabで分かれる | 手間 |
|---|---|---|---|---|
| Chromeのプロファイルを増やす | 分けられる | 色と写真で見分ける | 分かれない | 数分 |
| よく使うページをアプリとして入れる | 入れたプロファイルに固定 | 独立したアイコン | 分かれる | ページごとに1分 |
| ブラウザ自体を2つ使い分ける | 分けられる | 別アプリなので明確 | 分かれる | 再ログインが要る |
| アプリごとに窓を持つブラウザを使う | 分けられる | アプリ単位で並ぶ | 分かれる | 導入と再ログイン |
ページをアプリとして入れる方法は、ChromeのメニューからGmailやNotionを単体のウィンドウとして切り出すやり方である。Dockに独立したアイコンが並び、Command+Tabでも別扱いになる。弱点は、そのアプリが入れたときのプロファイルに固定されることと、サービスの数だけ登録作業が要ること。
ブラウザ自体を分ける方法は最も単純で、仕事はChrome、私用は別のブラウザ、と決めてしまう。Cookieも拡張機能も完全に別になる。弱点は、3つ目以降のアカウントで同じ手が使えないことと、ブックマークや設定が2系統に分かれることである。
道具を替える前に確かめる4点
プロファイルを増やす方法から、アプリごとに窓を持つ道具に移す判断をするなら、確かめる場所は決まっている。
1つ目は、同じサービスに同時に何個ログインできるか。Cookieの入れ物がアプリごとに独立していないと、Gmailを3つ並べた時点で互いを上書きしてしまう。この分け方をどう実装しているかはワークスペースのページで、アプリごとに専用のCookieの入れ物を持たせる形として説明されている。
2つ目は、自分が毎日使うサービスが対応しているか。一覧に載っていないサービスをURLから追加できるかどうかで、使える範囲が変わる。対応しているサービスの一覧は使えるアプリにまとまっている。
3つ目は、通知と切り替えがアプリ単位になっているか。プロファイル運用で残る「どこが鳴ったか分からない」を解消できるかはここで決まる。通知の集約やキーひとつでの切り替えを含めた機能の範囲はできることにある。開発の仕事が混ざる人は、窓の中でシェルが開くかどうかも判断材料になる。その仕組みはターミナルで説明されている。
4つ目は、無料でどこまで試せるかと、有料にしたときの金額。同じジャンルの製品は月額の年払いだけという形も多く、買い切りを選べるかどうかで総額が変わる。無料の範囲と有料の金額は料金に、同じジャンルの製品との違いはWaveboxとの比較に並んでいる。ライセンスの台数やデータの扱いなど、契約前に引っかかりやすい点はよくある質問にまとめられている。
判断の順番としては、まず今のプロファイル数を数えるところから始めるのが早い。アプリごとに独立したワークスペースが必要になるのは、同じサービスに同時ログインしたい数が2つを超えたときである。1つか2つで足りているなら、テーマカラーを付けて起動時の選択画面をオンにするだけで、困りごとの大半は収まる。
よくある質問
Chromeのプロファイルは何個まで作れますか?
Chromeのヘルプに上限の数は示されていない。実務で問題になるのは上限ではなく、同時に開いた数だけプロセスとメモリを使う点と、拡張機能や設定をプロファイルの数だけ入れ直す手間のほうである。常用するのは3つから4つまでに抑え、それを超える分はアプリ単位で窓を持つ道具に移すほうが管理が軽くなる。
プロファイルを削除すると、Googleアカウントのデータも消えますか?
消えるのはパソコン側に置かれていたそのプロファイルのデータで、ブックマーク、履歴、保存したパスワードや設定が対象になる。Googleアカウントに同期されている分はアカウント側に残るため、別のプロファイルで同じアカウントにログインすれば戻る。同期していなかったブックマークは戻らないので、削除の前に書き出しておく。
複数プロファイルを使うと、Dockにアイコンを分けて置けますか?
macOSのDockが並べるのはアプリケーションの束であり、Chromeは束が1つなのでアイコンも1つになる。ページをアプリとして入れる方法や、起動を代行する小さなアプリを作る方法でアイコンを増やすことはできるが、Chrome本体のプロファイルがCommand+Tabで別扱いになるわけではない。
仕事用と私用は、プロファイルを分けるだけで十分ですか?
Cookieと履歴とパスワードを分ける目的であれば足りる。足りないのは、タブの数を減らすことと、通知の出どころを分けることの2つになる。同じサービスに同時ログインしたいアカウントが3つ以上あるか、通知で作業が切れる場面が多いなら、アプリごとに窓を持つ道具を検討する段階に入っている。