ブラウザの使い分けを3層で決める|プロファイルとグループと窓

ブラウザの使い分けは、たいてい2週間で崩れます。仕事用と私用でプロファイルを分けた、案件ごとにタブグループを作った、そこまでは誰でも到達します。それでも1か月後にはタブが40個並び、どの窓に何が入っているか分からなくなっている。原因は続ける気力ではなく、分ける層を取り違えていることにあります。ブラウザが提供する仕組みは1種類ではなく、分けられるものと分けられないものが仕組みごとにはっきり決まっています。ここを先に押さえると、使い分けの設計は好みの話から事実の話に変わります。

使い分けが崩れるのは、分ける単位を先に決めていないから

道具を探し始める前に決めることが1つあります。何を単位にして分けるのか、です。実際に使われている単位は4つに整理できます。

  • アカウントで分ける。仕事用と私用のGoogleアカウント、2つのSlackワークスペース、取引先のNotionと自社のNotion。必要なのは、同時にログインしたままにできる独立したクッキーの箱です
  • 案件や取引先で分ける。サービスの種類に関係なく、1つの案件に関わるページが1か所に集まっていること。必要なのはサービスをまたぐ束ね方と、束ごとの切り替えです
  • 公私で分ける。条件がこれだけなら、主要なブラウザに最初から入っている機能で足ります
  • アプリで分ける。1つのサービスを1つの窓に固定して、常に同じ場所に置く。必要なのは常設の窓と、そこへ直接着く経路です

この4つは互いに代用が効きません。アカウント単位で作られた仕組みに案件単位の使い方をさせると、毎回どちらに入れるか迷うことになります。逆に案件単位の仕組みでアカウントを分けようとすると、同じサイトに2つの資格情報を保持できず、ログインし直しが日常になります。使い分けが2週間で崩れる典型は、この取り違えです。

単位を見つける近道は、直近で作業が止まった場面を思い出すことです。原因がアカウント違いだったなら1つ目、資料を探し回ったことなら2つ目、窓がほかの窓に埋もれたことなら4つ目が足りていません。

Chromeのプロファイルが分けるものと、分けないもの

まず事実から確かめます。プロファイルが何を分けるかは、公式のヘルプに明記されています。

With profiles, you can keep all your Chrome info separate, like bookmarks, history, passwords, and other settings.(プロファイルを使うと、ブックマーク、履歴、パスワード、その他の設定といったChromeの情報をすべて別々に保てます) 出典: support.google.com

ここに書かれているのは、保存される情報の分離です。クッキーとログイン状態も同じ箱に入るので、仕事用のGoogleアカウントと私用のGoogleアカウントを同時にログインしたままにできます。アカウント単位で分けたい人にとって、プロファイルは正しい層の道具です。

同じヘルプは削除についても警告しています。プロファイルを削除すると、そのプロファイルのブックマーク、履歴、パスワード、その他の設定は端末から消えます。分けるのは簡単ですが、統合し直すのは簡単ではありません。この非対称性があるため、プロファイルは増やす前に数を決めておく対象になります。目安として、毎日開くものが3つを超えると、切り替えのメニュー操作そのものが摩擦になります。

一方でプロファイルが分けないものもあります。窓の位置と大きさ、どのサイトがどの窓にいるか、通知がどの順で出るか。これらはプロファイルの管轄外です。プロファイルを4つに増やしても、画面上には同じ見た目の窓が4つ並ぶだけで、どれがどれか見分ける手がかりは色の丸1つしかありません。

タブグループは並べ替えであって、分離ではない

タブグループは別の層の道具です。公式のヘルプは、閉じたグループの扱いと同期について次のように説明しています。グループを閉じても削除されず、ブックマークバーかメニューに保存されて、あとから開き直せます。履歴とタブの同期を有効にしている場合、タブグループへの変更は同じGoogleアカウントの端末すべてに自動で保存され、同期されます。削除した場合も同じで、ほかの端末からも消えます。

つまりタブグループが扱うのは、開いているページの並べ替えと保存です。ログイン状態は1ミリも分かれません。同じプロファイルの中に「クライアントA」と「クライアントB」のグループを作っても、両方が同じGoogleアカウントで同じNotionを見ます。案件ごとに取引先のアカウントを使い分ける必要があるなら、グループでは届きません。

同期の挙動も、使い分けの設計に効きます。端末をまたいで同じ構成が復元されるのは利点ですが、片方の端末で整理したつもりが、もう片方の作業中の構成を書き換えることもあります。仕事用と私用でGoogleアカウントが分かれているなら、この影響はプロファイル境界で止まります。同期の範囲は、プロファイルの切り方で決まると考えると整理しやすくなります。

3つの層に当てはめ直す

ここまでの事実を1つの表にすると、どの層が足りていないかがすぐに分かります。

分けているもの Chromeでの受け持ち この層では分けられないもの
アカウントの層 クッキー、ログイン、パスワード、拡張機能 プロファイル 窓の置き場所、通知の出方
文脈の層 開いているページの束 タブグループ ログイン状態、通知の宛先
窓の層 画面上の位置と常設性 受け持つ機能がない 上の2層すべて

3層目に受け持ちがないことが、使い分けが崩れる最後の理由です。プロファイルとグループを正しく設定しても、画面に出てくるのは同じ形の窓です。Slackを開くという操作が、毎回「窓を探す、タブを探す、クリックする」の3手になります。1日に50回切り替える人なら、この3手は無視できない量になります。

自分の足りない層を測る方法は単純です。1日だけ、別のサービスへ移るたびに紙に線を引きます。その回数と、そのうち「探す時間」が発生した回数を数える。探す割合が高ければ、足りないのは窓の層です。ログインし直した回数が多ければアカウントの層、資料を見つけられなかった回数が多ければ文脈の層です。

窓の層を埋める道具は、何を固定するかで選ぶ

窓の層を受け持つ仕組みは、ブラウザの外側にあります。macOSのミッションコントロールでデスクトップを分ける方法もありますが、これは窓の置き場所だけを分けるもので、アカウントの層には触れません。もう1つの方向が、アプリごとに独立したワークスペースを持つ作りのブラウザです。1つのサービスを1つの窓に固定し、その窓が独自のクッキーの箱を持つため、アカウントの層と窓の層を同時に埋められます。

この種類の道具が具体的に何を固定するのかは、機能の一覧を見ると判断しやすくなります。サービスごとに窓を立てて切り替える考え方はワークスペースの説明にまとまっていて、窓の分け方と切り替えの操作が具体的に書かれています。窓の常設化以外に何ができるのかはできることにあり、通知の扱いや起動時の復元まで含めて確認できます。対応しているサービスの範囲は使えるアプリで確かめられて、毎日使うサービスが入っているかどうかは導入前に見ておく項目です。

判断材料として、費用の形も先に見ておくと迷いが減ります。無料で使える範囲と有料の条件は料金に整理されていて、窓の数や機能の制限がどこに掛かるかが分かります。導入前に出やすい疑問はよくある質問にまとまっています。

通知は、どの層でも自動的には分かれない

使い分けを設計するとき、最後まで残りやすいのが通知です。プロファイルを分けても、タブグループを作っても、macOSの通知センターには同じブラウザから届いた通知として並びます。差出人がどの箱のものかは、通知を開いて初めて分かります。私用のプロファイルを閉じていても、仕事用のプロファイルで開いたままのカレンダーが私用の予定を知らせてくることもあります。

対処は2つの方向に分かれます。1つは、サイトごとの通知許可を出す相手を絞り込むことです。ブラウザの設定から通知を許可したサイトの一覧を開き、業務に必要なもの以外を取り消す。一覧を見ると、許可した記憶のないサイトが並んでいることが多く、ここを削るだけで通知の総量は目に見えて減ります。もう1つは、通知を出す主体を窓ごとに分けることです。サービスごとに独立した窓を持つ作りなら、どの窓から来た通知かが送信元の名前で判別できます。

通知を減らす取り組みは、切り替え回数の削減より先に効くことがあります。切り替えが多いのは、そもそも呼び出される回数が多いためだからです。1日の中断の回数を数えて、そのうち自分から切り替えた回数と、通知に呼ばれた回数を分けて記録すると、どちらを先に手当てすべきかが決まります。

同じ層を扱う道具どうしを比べる

この分野の製品は、見た目が似ていても埋めている層が違います。比較を読むときは、機能表の行数ではなく、どの層を受け持っているかで読むと差が見えます。

複数のサービスを1つの窓にまとめる系統の代表的な製品との違いはWaveboxとの比較にまとまっていて、アカウントの分け方と費用の形が比較の中心になっています。仕事用のメールとカレンダーを束ねる方向で作られた製品との違いはShiftとの比較にあり、扱えるサービスの範囲と設定の手数が論点です。設定の自由度を重視する系統との違いはRamboxとの比較、オープンソースで運用する選択肢との違いはFerdiumとの比較、ブラウザ本体を置き換える方向の製品との違いはSidekickとの比較にあります。

比較を読む前に、自分がどの層で詰まっているかを1文で書いておくこと。これをしないまま機能表を見比べると、必要のない層の機能の多さで選んでしまいます。

切り替えの回数から逆算すると、順番が決まる

使い分けの設計は、次の順番で進めると手戻りが出にくくなります。

1つ目に、アカウントの層を確定させます。同時にログインしたままにしたい組み合わせを紙に書き出し、その数だけプロファイルを作ります。増やし過ぎないことが重要で、削除時にデータが消える非対称性がある以上、あとから減らすのは作業になります。

2つ目に、文脈の層をタブグループで作ります。ここで扱うのは同じアカウントの中の話題の束だけです。アカウントをまたぐ束を作ろうとした時点で、層を間違えています。

3つ目に、残った摩擦を数えます。ここまでやってもなお「探す時間」が減らないなら、不足しているのは窓の層です。窓の層は設定では埋まらないので、窓を常設する仕組みを持つ道具を検討する段階になります。

この3段階は、どれも1日で終わる作業です。順番だけが重要で、途中の段階を飛ばして窓の層から手を付けると、アカウントの整理が済んでいないために窓の数が必要以上に増えます。

この順番を守ると、それぞれの段階で効果が測れます。プロファイルを整えた週にログインし直しの回数が減ったか、グループを作った週に資料を探す回数が減ったか。減らなかった層は、その道具の担当ではなかったということです。使い分けが続かない状態は、たいてい担当外の道具に期待し続けている状態を指しています。

よくある質問

プロファイルとタブグループは、どちらを先に整えるべきですか?

プロファイルが先です。プロファイルはクッキーとログイン状態を分ける層で、タブグループは同じログイン状態の中でページを束ねる層だからです。順序を逆にすると、グループを作り直す作業が二度発生します。同時にログインしたままにしたいアカウントの組み合わせを書き出し、その数だけプロファイルを作るところから始めてください。

プロファイルはいくつまで増やしてよいですか?

毎日開くものが3つを超えると、切り替えのメニュー操作そのものが摩擦になります。使う頻度が週に1回程度のものは、プロファイルを増やさずシークレットウィンドウで済ませる判断もあります。削除するとそのプロファイルのブックマークや履歴が端末から消えるため、減らすほうが手間が掛かる点も考慮してください。

タブグループを使えばアカウントの使い分けもできますか?

できません。タブグループが扱うのは開いているページの並べ替えと保存で、ログイン状態は分かれません。同じプロファイル内に取引先ごとのグループを作っても、すべてのグループが同じGoogleアカウントでサービスを開きます。アカウントを分ける必要があるなら、プロファイルか独立したクッキーの箱を持つ仕組みが必要です。

設定を整えても切り替えが面倒なままなのはなぜですか?

不足しているのが窓の層だからです。プロファイルもタブグループも、画面上の窓の置き場所は管理しません。設定をどれだけ整えても、サービスを開く操作が「窓を探す、タブを探す、クリックする」の3手のままなら、窓を常設する仕組みを持つ道具を検討する段階に来ています。

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