Googleアナリティクスの複数アカウントを管理する|上限と分け方
Googleアナリティクスで複数アカウントを扱う話には、性質の違う2つの話が混ざっている。1つは、サイトが増えたときにアナリティクス側の入れ物をどう分けるかという話。もう1つは、複数のGoogleログインを日常的に行き来している人が、どのログインで開いているか分からなくなるという話だ。前者は階層と上限の理解で片が付き、後者はブラウザ側の問題になる。順に整理する。
そもそも「アカウント」という言葉が2つの意味で使われているのが混乱の元になっている。1つはGoogleのログインとしてのアカウントで、もう1つはアナリティクスの中の入れ物としてのアカウントだ。前者は人に紐づき、後者は組織やクライアントに紐づく。検索して出てくる説明がどちらの話をしているのかを見分けるだけでも、読む労力はかなり減る。
アカウントとプロパティを取り違えていないか
まず構造を押さえる。アナリティクスは階層になっており、上から組織、アナリティクスのアカウント、プロパティ、データストリームの順に並ぶ。組織は任意なので、実際に使う人が意識するのは下の3つになる。
Googleアナリティクスの設定は階層構造になっていて、Googleアナリティクス アカウントは最上位に位置します。1つのGoogleアナリティクス アカウントがあれば、複数のサイト(プロパティ)を管理できるので、通常は企業や部署などの組織ごとにGoogleアナリティクス アカウントを作成します。 出典: blog.siteanatomy.com
上限の数字は公開されている。アカウントは100個まで作れて、各アカウントにはプロパティを2,000個まで入れられる。プロパティごとのデータストリームは合計50個までで、そのうちアプリのデータストリームは30個までとされている。
この数字を見れば分かるとおり、サイトが増えたからアカウントを増やす、という発想は必要ない。数十のサイトを持っていても、アカウント1つの中のプロパティで収まる。
Googleアナリティクスに、新しいアカウントを追加するのはとても簡単です。ところが、知識があまりない人の中には、複数のWebサイトを管理するには、その数だけアカウントが必要だと思っている場合もあるでしょう。 出典: n-works.link
アカウントを無用に増やすと、後から困るのは権限の管理になる。アカウントが分かれていれば、人を追加する操作もアカウントの数だけ発生する。管理画面を開く回数が増え、退任した人の削除漏れも起きやすくなる。
データストリームの数え方も押さえておくとよい。1つのサイトと、そのサイトのスマートフォンアプリを同じプロパティで見たい場合、ウェブとアプリでデータストリームを分けて登録する形になる。サイトだけを見るなら1プロパティに1ストリームで足りる。ここを増やす必要が出るのは、同じ事業を複数の入口で持っている場合に限られる。
アカウントを分けるべき場合
では、分けたほうがよい場面はどこかというと、権限の境目が違うときになる。判断の目安は3つある。
1つ目は、見せてよい相手が違う場合になる。自社の事業のデータと、受託しているクライアントのデータを同じアカウントに入れると、権限の設計が窮屈になる。クライアントごとにアカウントを分けておけば、渡す範囲がそのまま分かれる。
2つ目は、データの所有者が違う場合になる。クライアントのサイトのデータは、契約が終われば引き渡す前提のものになる。アカウントが分かれていれば、管理者の権限を相手に移して自分が抜けるだけで済む。同じアカウントに他社のデータも入っていると、移すという選択肢が取れない。
3つ目は、組織として区切られている場合になる。事業部ごとに予算も担当者も違うなら、アカウントもそこに合わせておくほうが、後の異動や統廃合に追従しやすい。
逆に、同じ会社の中でサイトが複数あるだけなら、分ける理由は薄い。1つのアカウントの中にプロパティを並べ、レポートを横に並べて見られる形のほうが扱いやすい。
分けるかどうかを迷ったときは、後から動かす手間で比べるとよい。1つのアカウントに入れておいたデータを後から別のアカウントへ移すことはできないため、プロパティを作り直してデータを取り直す形になる。逆に、分けておいたものを後からまとめて見たいだけなら、レポート側で並べる方法がある。迷ったら分けておくほうが、取り返しはつきやすい。
命名も最初に決めておきたい。アカウント名に会社名、プロパティ名にサイト名と用途を入れておく形が扱いやすい。案件が増えたときに一覧から探す時間は、名前の付け方でほぼ決まる。
権限で渡せばアカウントは増えない
見せたい相手が増えたときに、アカウントを増やす前に見るべきなのが権限の仕組みになる。アナリティクスには役割が用意されており、公式のヘルプでは管理者、編集者、マーケティング担当者、アナリスト、閲覧者が説明されている。
管理者はユーザーの追加や削除まで行える権限で、編集者はプロパティ単位の設定を管理できるがユーザーの管理はできない。数字を見るだけの相手なら閲覧者で足りる。役割はアカウント単位でもプロパティ単位でも割り当てられ、親の階層で付けた役割は既定で下に継承される。
この仕組みがあるため、パスワードを共有する必要はない。それぞれのGoogleアカウントに対して役割を付ければよく、操作の記録も本人のものとして残る。誰かが辞めたときも、その人の役割を外すだけで済み、他の人のアクセスには影響しない。
実務でよくあるのが、クライアントの担当者に見せるためにログイン情報を渡してしまう形だ。これをやると、担当者が変わったときに認証情報を変える判断が必要になり、変えれば他の全員が影響を受ける。閲覧者の役割を付けるだけなら、この面倒は発生しない。
権限を渡すときに確認しておきたいのは、相手がどのGoogleアカウントで見るかという点になる。会社のアドレスを伝えられたつもりで個人のアドレスが混ざっていると、退職後もアクセスが残る。付与する前に相手のアドレスの所属を確かめておくと、後の棚卸しが楽になる。半年に一度、役割の一覧を開いて、いまも関係のある人だけが残っているかを見る習慣をつけておきたい。
複数のGoogleログインを行き来する場合の詰まり
ここからが2つ目の話になる。代理店や複数の事業を持つ人は、自社のGoogleアカウントとクライアントから発行されたGoogleアカウントの両方を持っていることが多い。同じブラウザで両方にログインしていると、アナリティクスを開いたときに意図しない側の画面が出る。
原因はアナリティクスではなくGoogleアカウント側の仕組みにある。
多くの場合、デフォルトのアカウントとは、最初にログインしたアカウントになります。 出典: support.google.com
複数のアカウントにログインしている状態では、Googleがどのアカウントで操作しているかを判断できない場面がある。新しいウィンドウを開いたときが典型で、そのときはデフォルトのアカウントの設定が適用されることがあると案内されている。ブックマークから直接アナリティクスを開くと、想定と違うアカウントの画面が出るのはこのためになる。
対処は2つある。1つは、URLに含まれるアカウントの番号を意識して、アカウントごとにブックマークを作り分ける方法。もう1つは、そもそも同じブラウザに複数のログインを同居させない方法になる。前者は覚えることが増え、後者は画面を分ける手間が増える。継続して使うなら後者のほうが揺れない。
共有のパソコンで作業している場合は、もう1つ気をつける点がある。ログインしたままにしておくと、次にそのパソコンを使う人がクライアントのデータを見られる状態になる。閲覧の権限しか持っていない相手のデータでも、契約上見せてよい範囲を超えることがあるため、席を離れる前に閉じる運用か、案件用のプロファイルを使う運用に寄せておきたい。
画面を分けて開き間違いを防ぐ
Chromeはログイン状態を分ける仕組みを標準で持っている。
プロファイルを使用すると、Chrome 上の情報全体(ブックマーク、履歴、パスワードなど)を、プロファイルごとに分離できます。 出典: support.google.com
クライアントごとにプロファイルを作り、テーマの色を変えておけば、どの案件の画面を見ているかが目で分かる。レポートのスクリーンショットを取り違えて別の会社に送る事故も、ここで止まる。
一方で、プロファイルを増やせば窓も増える。案件が5件、6件と並ぶと、今度はどの窓に何が入っていたかを探す時間が生まれる。アナリティクスだけでなく、広告の管理画面、検索の管理画面、共有のスプレッドシートも同じ数だけ増えていくので、窓の数は案件数の倍で伸びていく。
レポートを見る時間帯を決めておくのも効く。案件ごとに画面を開き直す形だと、思い立ったときに開く運用では切り替えの回数が増え続ける。週に一度、案件を順に回して見る形にすると、開く回数は案件数と同じで済む。数字の変化に気づく速さが要る案件だけ、通知やメールのレポートで補う形に寄せると、画面を開く必要そのものが減る。
案件ごとに置き場所を決める
複数アカウントの困りごとは、アナリティクス単独では現れにくい。同じ人の画面には、案件ごとの解析の画面、広告の管理画面、クライアントとのチャット、共有のドキュメントが並んでいることが多く、タブは30個を超えている。どれも同じ仕組みの上にあり、ログイン状態はCookieに入り、Cookieはタブではなくブラウザのプロファイルに属している。
そこで出てくるのが、案件ごとに置き場所を決めてしまう考え方になる。アプリを左の一覧に並べ、それぞれが自分のセッションを持ち、クリックすれば必ずその案件のログインで開く形だ。窓を増やすのではなく、窓の中を区切る発想で、名前を付けた集まりとして束ねる方法はワークスペースに整理してある。アナリティクスを含めてどのWebサービスがこの形で扱えるかは使えるアプリで確認できる。
アプリごとに独立したワークスペースを持たせると、案件を切り替える動作が、ログインを入れ替える動作から場所を移る動作に変わる。似た分類の製品には考え方の違いがあり、代表的なものとの比較はWaveboxとの比較やFerdiumとの比較に書いてある。何ができるようになるかはできることに、費用の目安は料金にまとめてある。
手を動かす順番としては、まずアナリティクス側の入れ物を見直すのが先になる。無用に増やしたアカウントを1つにまとめ、見せたい相手には役割を付けて渡す。そのうえで、行き来しているGoogleログインの数を数えて、画面の分け方を決める。この順番なら、道具を足すかどうかの判断も根拠を持って決められる。
よくある質問
サイトが複数あるとGoogleアナリティクスのアカウントも複数必要ですか?
必要ありません。1つのアナリティクスアカウントの中に、サイトごとのプロパティを作る形で足ります。各アカウントにはプロパティを2,000個まで入れられるため、数十のサイトを持っていても1つのアカウントで収まります。アカウントを無用に増やすと、人を追加する操作がアカウントの数だけ発生します。
Googleアナリティクスのアカウントとプロパティの上限はいくつですか?
アナリティクスのアカウントは100個まで作成できます。各アカウントにはプロパティを2,000個まで格納でき、1つのプロパティにはデータストリームを合計50個まで、そのうちアプリのデータストリームは30個まで登録できます。
アカウントを分けたほうがよいのはどんな場合ですか?
見せてよい相手が違う場合、データの所有者が違う場合、組織として区切られている場合です。受託しているクライアントのデータは、契約が終われば管理者の権限を相手に移して自分が抜ける形になるため、クライアントごとに分けておくと引き渡しが簡単になります。同じ会社の中でサイトが複数あるだけなら分ける理由は薄いです。
複数のGoogleアカウントを行き来すると意図しない画面が開きます。
Googleは、多くの場合デフォルトのアカウントは最初にログインしたアカウントになると説明しており、新しいウィンドウを開いたときなどにその設定が適用されることがあります。ブックマークをアカウントごとに作り分ける方法もありますが、続けて使うならブラウザのプロファイルを分けて、同じブラウザに複数のログインを同居させない形のほうが安定します。