Macのメールで複数アカウントを使う手順と先に決める設定
Macのメールアプリに複数のアカウントを入れる作業そのものは数分で終わる。難しいのはその後で、iCloudと会社のアカウントとGmailが同じサイドバーに並んだときに、署名がどれになるのか、削除キーで何が起きるのか、下書きがどこに保存されるのかが、アカウントの種類ごとに違ってくる。ここでは追加の手順と、複数アカウントで使う前に決めておきたい設定を順に並べる。
追加できるアカウントの種類と手順
Appleの公式のユーザガイドでは、メールアプリの役割がはっきり書かれている。
Macの「メール」を使用して、すべてのメールアカウントのメールをMac上の1か所で送信、受信、および管理します。 出典: support.apple.com
追加できるアカウントとして案内されているのは、iCloud・Gmail(Google)・Exchange・学校・職場の既存のアカウントになる。会社がMicrosoft 365を使っている場合はExchangeとして、レンタルサーバーのアドレスは一般的なIMAPのアカウントとして登録できる。
手順は3段階になる。メールアプリを開き、「メール」メニューから「アカウントを追加」を選ぶ。メールアドレスを入力するか、「リストから選択」をクリックしてアカウントの提供元を選ぶ。あとは「続ける」を押して、画面の指示に従ってアカウント情報を入力する形になる。
Gmailを追加するときは、ログインの画面がGoogleのものに切り替わる。Gmailのヘルプでは、ユーザー名とパスワードの共有を必要とするアプリはサポートされなくなり、「Googleでログイン」の経路を使うよう案内されている。2段階認証はそのまま通り、アプリパスワードを作る必要はない。古い手順書を見ながらパスワードを直接入れて失敗するのは、ここになる。
アカウント数の上限は公表されていない。実際の頭打ちは別のところから来る。アカウントごとにメールの複製が手元に降りてくるため、履歴の長いアカウントを4つ入れると保存容量をかなり使う。設定のアカウント情報で「添付ファイルをダウンロード」を「最近のもの」か「しない」に変えると、優先度の低いアカウントの分を抑えられる。
「インターネットアカウント」との関係
見落としやすいのが、アカウントの登録がメールアプリの中だけの話ではない点になる。
公式のガイドには、Mac上の別のアプリ(連絡先やメッセージなど)ですでに使用しているアカウントは、メールでも使用できると書かれている。メールアプリから「メール」メニューの「アカウント」を選ぶと「インターネットアカウント」の設定が開き、そこで使いたいアカウントをクリックして「メール」が選択されているかを確認する形になる。
つまり、アカウントは機械の側に登録され、どのアプリで使うかをチェックで選ぶ構造になる。ここを知っておくと2つのことが説明できる。1つは、カレンダーだけ使うつもりで登録したアカウントのメールが勝手に流れ込んでくる場合の原因になる。もう1つは、メールアプリで消したはずのアカウントが他のアプリに残っている場合の理由になる。
複数のGoogleアカウントを入れる場合、この画面で有効にする項目を絞ると扱いやすくなる。メール・連絡先・カレンダー・メモの4つのうち、メールだけを有効にしておけば、3つ分の連絡先が1つのアドレス帳に混ざるのを避けられる。カレンダーを別の場所で見ているなら、なおさら絞ったほうがよい。
複数アカウントで先に決める4つの設定
ここが本題になる。次の4つは、アカウントを足した直後に決めておくと後の事故が消える。
1つ目が新規作成の差出人になる。届いたメールへの返信は、そのメールを受け取ったアカウントから出ていく。これが既定の動きで、返信は安全になる。危ないのは新規作成で、差出人の欄で選ばれているアカウントから送られる。その初期値は作成の設定で決まるため、使用頻度の高いアカウントを指定しておく。複数アカウントで最も多い事故がこれになる。
2つ目がメールボックスの特性になる。設定のアカウントの項目で、下書き・送信済み・迷惑メール・ゴミ箱をサーバー側のどのフォルダに対応させるかを指定する。未設定のままだと、下書きが手元にだけ保存されて、スマートフォンから見えなくなる。アカウントごとに1回ずつ確認しておきたい。
3つ目が添付ファイルのダウンロードになる。全部・最近のもの・しない の3つから選べる。全アカウントで「全部」にすると容量を使うので、読むだけのアカウントは絞る。ただし絞ったアカウントでは、手元の検索で見つかる範囲も狭くなる。
4つ目が削除キーの意味になる。Gmailのアカウントでは、削除のマークを付けたときにアーカイブするのか、ゴミ箱に移動するのか、すぐに完全に削除するのかを、Webの画面のIMAPの設定で選ぶ形になる。3つのGmailで設定がばらついていると、同じキーを押しているのにアカウントによって結果が変わる。揃えておけば「アーカイブされると思って押した削除でメールが消える」形は起きない。
署名をアカウントごとに割り当てる
複数のアカウントを1つのアプリに入れたときに、地味に手間がかかるのが署名になる。
署名は設定の署名の項目で作り、左の列に並んだアカウントごとに割り当てる。仕事用のアカウントには会社名の入った署名、個人のアカウントには氏名だけの署名、という形に分けられる。既定の署名もアカウント単位で指定できるため、そこを決めておくと選び忘れが消える。
注意したいのは、差出人を切り替えたときの動きになる。新規作成の途中で差出人を変えると、署名も切り替わる。書き終えてから差出人を直すと署名が入れ替わるため、送る前に末尾を見る癖を付けておくほうが安全になる。
署名を1つだけ作って全アカウントで使う形も選べるが、会社名とURLの入った署名が私信に付くのは避けたい。アカウントの役割が違うなら、署名も分けておく。
サイドバーと全受信の見え方
複数のアカウントを入れると、サイドバーにアカウントごとの受信箱が並び、その上に全アカウントを重ねた一覧が現れる。
この一覧はメールボックスではなく表示の仕方になる。有効にした全アカウントの受信箱を時系列で重ねて見せているだけで、1通ごとにどのアカウントのものかという情報は残っている。だから返信の差出人が自動で正しくなる。
条件で絞った一覧を作りたい場合は、スマートメールボックスを使う。アカウントをまたいで条件を指定できるため、「4つのうち2つのアカウントの未読だけ」という一覧を作れる。VIPも同じくアカウントをまたいで働く。
メールの移動については、公式のガイドに具体的な注意が書かれている。IMAPのアカウントでメッセージを移動できない場合、メッセージに無効な文字が含まれているか、メッセージが大きすぎるか、アカウントの提供元が設定した容量制限を超えている可能性があるとされている。アカウントをまたいでメールを移す作業でうまくいかないときは、この3つを疑う。
アカウントを外すと手元のメールが消える
やめるときの話を先に知っておきたい。ここは戻せない操作になる。
公式のガイドには、メールアカウントを削除すると、そのアカウントのメッセージはMacから削除されると明記されている。メッセージのコピーはアカウントのメールサーバー上に残っており、Webメールなどで引き続き利用できる。つまり通常は消えても困らない。
困るのは、手元にだけ保存したメールがある場合になる。ガイドには、残しておきたいメッセージがサーバー上に残っているかはっきりしない場合は、アカウントを削除する前にMac上に保存されているメールボックスへ移動またはコピーしておくよう書かれている。サイドバーの「このMac内」の欄に置いたメールがこれにあたる。
削除の手順は、メールの設定からアカウントを選んで外す形になる。そのアカウントがMac上の別のアプリで使われている場合は、「インターネットアカウント」設定から削除するよう求められる。メールアプリの中だけでは外れないアカウントがあるのは、先に説明した構造のためになる。
ルールを置く場所を決めておく
複数のアカウントを入れると、仕分けの設定をどこに置くかという判断が出てくる。メールアプリの側とサーバーの側の両方に仕組みがあり、動く条件が違う。
メールアプリのルールは、その機械の上で動く。Macが起きていてメールアプリが開いているあいだだけ働くため、夜のうちに届いたメールは翌朝アプリを開いた時点で仕分けられる。スマートフォンで先に見ると、まだ仕分けられていない状態で並ぶ。
サーバー側の仕組みは常に動く。GmailのフィルタやExchangeのルールはサーバーで処理されるため、どの機械から見ても同じ結果になる。複数のアカウントを持っていて、パソコンとスマートフォンの両方で読む使い方なら、振り分けとラベル付けはサーバー側に置くのが揃いやすい。
メールアプリのルールが向いているのは、その機械に固有の処理になる。特定の差出人のときだけ音を鳴らす、色を付ける、通知の対象から外すといった操作がこれにあたる。2つの層に同じ振り分けを入れると、どちらが先に効いたのか分からなくなるため、置く場所は片方に決めておく。
通知はアプリ単位で届く
複数アカウントの運用で最後に残るのが通知になる。
macOSの通知はアプリ単位で動く。メールアプリは複数のアカウントを抱えた1つのアプリなので、届く通知にはメールアプリの名前とアイコンが付く。設定の一般にある通知の対象は、受信箱のみ・VIPのみ・連絡先・すべてのメールボックスから選べるが、これはアプリ全体に効く設定で、アカウントごとには分けられない。
例外は集中モードになる。macOSの集中モードにはメールアプリ用のフィルタがあり、どのアカウントの通知を通すかを選べる。仕事の時間帯だけ個人のアカウントを黙らせる使い方は、これで足りる。
足りないのはその先になる。Dockのアイコンに付く未読の数字は全アカウントの合計で1つだけ表示され、通知の見た目はどのアカウントから来ても同じになる。時間帯ではなく相手の優先順位で分けたい要求は、複数のアカウントを内側に抱えた1つのアプリでは表現しにくい。それができるのは、macOSから見て別のアプリとして扱われる入れ物になる。
メールアプリの外に残るもの
メールアプリが引き受けるのはメールだけで、アカウントの残りは元の場所に残る。
サーバー側のフィルタやラベルはメールアプリが知らなくても動き続けるが、内容を直すにはWebの画面に戻る必要がある。Gmailのスヌーズや独自の検索演算子、カテゴリのタブも使えない。会社の管理者が接続できるクライアントを制限している場合もあり、その環境では選択そのものが本人の手を離れる。結果として、メールアプリは読んで返す場所、Webの画面は整理する場所という分担になる。
そして、届いていたのはメールだけではないはずになる。4つのアカウントで働く日は、たいてい4つ分の共有ドライブと4つ分のカレンダー、それにチャットの画面が1つか2つ動いている。メールアプリはメールの問題をきれいに解くが、残りはブラウザのタブに置かれたままになる。
その部分の詰まりに効くのは、サービスごとに置き場所を固定することになる。Webアプリを1つずつ独立した窓として扱えば、アプリごとに独立したワークスペースができて、同じサービスの2つ目のアカウントもログアウトなしで別の場所として並ぶ。考え方はワークスペースに、範囲はできることにまとめてある。毎日開くサービスが対象に入っているかは使えるアプリで確かめられる。
同じ分類の道具にも設計の差がある。機能を広く載せた設計との違いはWaveboxとの比較に、通知の扱いを含む違いはShiftとの比較に整理した。先に手を付けるのは上の4つの設定になる。そのうえで残る不満が「どのアカウントに届いたのか分からない」ことなら、分ける場所は受信箱ではなく、macOSがそれぞれを別のアプリとして扱うかどうかに移る。
よくある質問
Macのメールアプリにアカウントはいくつまで追加できますか?
公表された上限はありません。実際の制約は保存容量と検索の範囲で、アカウントごとにメールの複製が手元に降りてくるためです。履歴の長いアカウントを複数入れる場合は、設定のアカウント情報で「添付ファイルをダウンロード」を「最近のもの」か「しない」に変えると負担を抑えられます。
会社のアカウントも同じアプリに入れられますか?
Appleの公式ガイドでは、iCloud・Gmail・Exchange・学校・職場のアカウントを追加できると案内されています。会社がMicrosoft 365を使っている場合はExchangeとして登録します。ただし管理者が接続できるクライアントを制限している環境では登録できないため、その場合は社内の規則を先に確認してください。
アカウントを削除するとメールも消えますか?
公式ガイドには、メールアカウントを削除するとそのアカウントのメッセージはMacから削除されると記載されています。コピーはメールサーバー上に残るためWebメールから読めますが、サイドバーの「このMac内」に置いた手元だけのメールは別扱いです。削除の前に、残したいメールを手元のメールボックスへ移しておきます。
複数アカウントで通知をアカウントごとに分けられますか?
通知の設定はアプリ全体に効くため、アカウントごとに見た目や未読数を分けることはできません。時間帯で切り分けたい場合はmacOSの集中モードにメールアプリ用のフィルタがあり、どのアカウントの通知を通すかを選べます。相手の優先順位で分けたい場合は、別のアプリとして扱われる仕組みが必要になります。