Googleアカウントの切り替えが毎回ずれる原因と直し方
仕事用のGoogleアカウントと個人用のアカウントを両方使っている状態は、いまや珍しくない。右上のアイコンから切り替えれば済む話のはずが、実際には共有されたはずのファイルが開けなかったり、カレンダーの招待が見ていないほうの受信箱に届いたりする。切り替えの仕組みそのものは壊れていない。ずれているのは、どのアカウントで今のページが開いているのかを、こちらが把握できていない点にある。ここでは複数ログインが何を分けていて何を分けていないのかを押さえたうえで、ずれが起きる場所を1つずつ潰していく。
複数ログインはブラウザ単位で成立している
Googleは、1つのブラウザの中で複数のアカウントに同時にログインした状態を保てるようにしている。切り替えのたびにログアウトしなくてよいのはそのためで、右上のアイコンを押して別のアカウントを選べば、そのページがそのアカウントで開き直る。
見落とされやすいのは、この「ログインしている一覧」がブラウザごとに持たれている点だ。同じMacでも、ChromeとSafariでは一覧が別になる。Chromeのプロファイルを分けていれば、プロファイルごとにさらに別になる。片方では確かにログインしているのに、もう片方ではログイン画面が出るのはこのためで、アカウント側の不調ではない。ログイン一覧からアカウントを外す操作も、使っているブラウザそれぞれで行う必要がある。
もう1つ、切り替えても目の前のタブは移動しない。切り替え操作が変えるのは、これから読み込むページがどのアカウントで開くかであり、開きっぱなしの古いタブは古いアカウントのまま生き続ける。同じサービスを別々のアカウントで2つのタブに並べておくことも、両方のセッションが有効なあいだは普通にできる。この性質を知っていると、「切り替えたのに前のアカウントの画面が残っている」という状況を不具合と勘違いしなくて済む。
URLの /u/0 と /u/1 が指しているもの
複数ログインの状態でGmailを開くと、アドレスがmail.google.com/mail/u/0/や/u/1/という形になる。ドライブもカレンダーも同じ書式を使う。
この数字はアカウントを識別する番号ではない。0から始まる通し番号で、そのブラウザにログインした順番の位置を指している。最初にログインしたアカウントが0番、次が1番になる。
ここが、ブックマークから開いたら違うアカウントだった、という現象の正体になる。/u/1/で保存したブックマークは「いま2番目にいるアカウント」を開くだけなので、一度すべてログアウトして個人用から入り直すと、同じブックマークが個人用の受信箱を開く。エラーは出ない。リンクは壊れておらず、下にある並び順のほうが入れ替わっている。
対処は2つある。1つは、ブックマークをmail.google.com/mail/u/[email protected]/のようにアドレスを含む形で保存すること。この書式なら順番が変わっても目的のアカウントに解決される。もう1つは、共有リンクを開いて権限のエラーが出たとき、権限の問題だと決めつける前に右上のアカウント表示を見る習慣を付けることだ。多くの場合、権限ではなく応答したセッションのほうが違っている。
デフォルトアカウントは順番で決まる
複数ログインしているアカウントのうち1つがデフォルトとして扱われる。普段は意識に上らないが、判断がつかない場面でこれが顔を出す。
多くの場合、デフォルトのアカウントとは、最初にログインしたアカウントになります。モバイル デバイスでは、デバイスのオペレーティング システムや使用するアプリによって、デフォルトのアカウントが異なります。 出典: support.google.com
同じヘルプは、複数のアカウントにログインしていると、どのアカウントを使っているのかGoogleの側で判断できなくなる場合があり、そのときはデフォルトのアカウントの設定が適用されることがあるとも書いている。新しいウィンドウを開いたときに意図しないアカウントで表示される、外部のアプリから踏んだリンクがいつも同じアカウントで開く、といった挙動はここから来ている。
iPhoneやAndroidを併用しているなら、パソコン側の順番とスマホ側の既定は別物として扱ったほうがよい。上の引用にもあるとおり、モバイルではOSやアプリごとにデフォルトが変わる。パソコンで並び替えてもスマホの通知が来る先は変わらないので、通知が届かないという相談の多くは、パソコン側ではなくスマホのアプリに紐づくアカウントを見れば片が付く。
デフォルトを直接指定する設定項目は用意されていない。決めているのはログインした順番なので、変えたいなら全アカウントからログアウトして、いちばん使うアカウントで最初に入り直すことになる。作業自体は5分程度で終わる。ただし、この操作をすると番号の並びも同時に変わるため、/u/1/形式で保存していたブックマークは全部指し先が変わる。並び替えとブックマークの書き換えは同じ日にまとめてやったほうがよい。
会社のアカウントを混ぜるときの線引き
片方が勤務先から配布されたアカウントの場合、話は個人のアカウント2つとは別の層に入る。
そのアカウントで作ったものは組織のものになる。ドキュメントも予定も、そのセッションで許可した外部ツールとの連携も、管理者の管理下にあるドメインの中に置かれ、契約や在籍が終われば一緒に離れていく。うっかり仕事用で書いた個人のメモは、置き場所を間違えたファイルではなく、他人の資産の中にあるファイルになる。
ブラウザ側にも制限がかかることがある。管理者は、管理対象のアカウントと並べて別のアカウントを追加できるかどうか、専用のプロファイルで動かすかどうか、拡張機能の許可範囲、同期の可否といった設定を配布できる。設定画面に組織による管理を示す表示が出ていたら、その項目は手元では変えられない。時間をかけて設定してから上書きされるより、先に確認しておいたほうが早い。
ここから出てくる判断は、安全性の話というより向きの話になる。管理対象のアカウントが入っているブラウザに個人のアカウントを足すのは一瞬でできて、後から解くのは面倒だ。会社のアカウントは会社のアカウントだけの入れ物に置いておくと、どのセッションが作ったファイルなのかを後から悩まずに済む。
失敗は3つの形で現れる
検索してここに辿り着く状況は、だいたい次の3つのどれかに当てはまる。
1つ目は、外から踏んだリンクが違うアカウントで開くこと。チャットツールやメールソフトの中にあるドキュメントのリンクを押すと、URLは既定のブラウザへ渡され、ブラウザは番号かデフォルトのアカウントで応答する。結果として出てくるのはアクセス権を求める画面で、権限の不備に見えるが実際は応答したセッションの取り違えになる。その画面の上でアカウントを切り替えれば、そのまま開けることが多い。
2つ目は、書き出したファイルや連携が別のアカウントに入ること。あるアカウントで開いた画面から実行したものは、そのアカウントのものになる。定期実行のレポートも、そのセッションで許可した外部サービスとの接続も同じで、後からファイルを移すことはできても、連携の許可を付け替えるには管理者の操作が要る場合がある。ファイルの移動だけで片付いたと考えると、翌月の自動実行がまた別の場所へ書き出す。
3つ目は、ログアウトの押し間違いになる。メニューには1つのアカウントからログアウトする項目と、すべてのアカウントからログアウトする項目が並んでいる。後者を押すと一覧が空になり、入れ直した順番でデフォルトと番号が決まり直す。数週間分のブックマークの指し先がここでまとめてずれる。
切り替えの選択肢が出てこないとき
アカウントを追加できない、切り替えの一覧に出てこない、という詰まり方もある。原因は主に4つに分かれる。
サードパーティCookieや特定のサイトのCookieをブロックしていると、複数ログインの状態を保持できずに一覧が保てなくなることがある。シークレットウィンドウで開いている場合も同じで、そのウィンドウを閉じた時点でログイン状態は残らない。勤務先が配布したアカウントを使っている場合は、管理者の設定で他のアカウントの追加そのものが止められていることがあり、この場合は手元の操作では変えられない。そしてサービス側の事情もある。同時に1つのセッションしか扱わない作りのサービスでは、Googleの側で複数ログインしていても、そのサービスの画面では1つ分しか見えない。
前の3つは設定と権限の話なので、確認すれば白黒が付く。厄介なのは4つ目で、これはアカウントの持ち方をどう変えても解けない。1つのブラウザに1セッションという前提そのものが原因なので、同じサービスを2つのアカウントで並べたいなら、入れ物のほうを増やすしかない。
同時に開くための手段を並べる
複数ログインは選択肢の1つでしかない。何を分離するかが手段ごとに違う。
| 手段 | セッションの分離 | 拡張機能とブックマーク | 切り替えの手数 |
|---|---|---|---|
| 1つのブラウザで複数ログイン | 分離しない(Cookieは共通) | 全アカウントで共通 | 2クリックと再読み込み |
| Chromeのプロファイルを分ける | 分離する | プロファイルごとに別 | 別ウィンドウを探す手間 |
| アカウントごとに別のブラウザ | 分離する | ブラウザごとに別 | アプリ切り替えと操作の違い |
| アプリとアカウントごとに窓を持つ | 分離する | 窓ごとに別 | メニューを経由しない |
複数ログインは設定が最も速く、境界としては最も弱い。Cookieの保管場所が共通なので、同時に1セッションしか許さないサービスでは結局1つしか保てない。プロファイルを分ければ境界は本物になるが、ウィンドウが1つずつ増える。ブラウザを分ける形は、他と混ぜたくない取引先のアカウントには向くが、頻繁に行き来する用途には向かない。操作体系が2つになるからだ。
切り替えの回数そのものを見る
ここまでの調整で減るのは、間違ったアカウントで開く回数になる。減らないのは、切り替えという操作の回数のほうだ。
見分け方は簡単で、切り替えたあと1分以内に元へ戻しているかどうかを数えればよい。この往復が1日に何度も出るなら、その作業は両方のアカウントを同時に見る必要がある。1つずつ表示する前提で作られた仕組みでは、何回操作しても足りない。アカウントの整理では解けない種類の詰まりで、原因は入れ物が1つしかないことにある。
Webアプリごとに独立した窓とセッションを持たせる考え方では、この往復自体が消える。アプリごとに独立したワークスペースの組み方はできることにまとまっていて、取引先や案件の単位でアプリの組をまとめて切り替える話はワークスペースが扱っている。手元のGmailやカレンダーが対象に入っているかは使えるアプリで確認できる。同じ系統の製品との違いを事実だけで並べたものとしては、機能の幅で知られる製品との比較がWaveboxとの比較に、無料で始められる系統との比較がFerdiumとの比較にある。費用の考え方は料金、導入前に引っかかりやすい点はよくある質問に整理されている。
最初に手を付けるなら、順番の作り直しから始めるとよい。全アカウントからログアウトし、いちばん使うアカウントで先に入り直し、/u/1/形式のブックマークをアドレス入りの書式へ書き換える。アカウントが2つの環境なら、これだけで取り違えの大半は消える。それでも往復が残るなら、分けるべき単位はアカウントではなく窓のほうになる。
よくある質問
Googleアカウントは何個まで同時にログインできますか?
ヘルプでは同時ログインができるとだけ説明されていて、明確な上限は示されていない。実務で先に限界が来るのは数の上限ではなく見分けのほうで、4つを超えたあたりからメニューが「形で認識するもの」ではなく「読んで探すもの」に変わる。
デフォルトのアカウントを後から変更できますか?
デフォルトを直接指定する設定は用意されていない。決めているのはログインした順番なので、いったん全アカウントからログアウトし、デフォルトにしたいアカウントで最初にログインし直す形になる。この操作でURLの番号の並びも変わる点に注意したい。
共有されたファイルが「アクセス権が必要です」と出るのはなぜですか?
権限を持っているアカウントとは別のセッションでリンクが開いているケースが多い。ブラウザはURLの番号かデフォルトのアカウントで応答するため、権限を付与された側とは限らない。その画面でアカウントを切り替えると、そのまま開けることがほとんどになる。
複数ログインとChromeのプロファイル分けはどちらがよいですか?
目的が違う。複数ログインは設定が速く、Cookieも拡張機能もブックマークも共通で使う。プロファイル分けはアカウントごとにデータの保存先が分かれるため、1セッションしか許さないサービスや、仕事と個人を混ぜたくない場面で効く。代わりに、見分けるべきウィンドウが1つ増える。