two google accounts on one computerを1台のMacで分ける4つの線
Googleアカウントを2つ持っていて、パソコンは1台。いまはこれが普通の状態で、珍しい構成ではない。それでも調べる人が絶えないのは、この一文の中に「どこで分けるか」という選択が隠れているからだ。分ける場所は4つあり、どれを選ぶかで日々起きる面倒の種類が変わる。最初に起きた成り行きのまま使うのではなく、線を引く場所を自分で決めるところが、実質的な作業になる。
境界を引ける場所は4つある
Googleは1つのブラウザに複数のアカウントを同時にログインさせておける。右上のアイコンから切り替える仕組みがそれだ。ただし、これは4つある分け方の1つでしかなく、ブラウザの外で動くものに対しては何も分けていない。
4つを並べておく。1つ目は同じブラウザの中でセッションを重ねる方法、2つ目はブラウザのプロファイルを分けてCookieや拡張機能ごと切り離す方法、3つ目はmacOSのユーザアカウントを2つ作ってパソコンの利用者そのものを分ける方法、4つ目はWebアプリごとに窓とセッションを分ける方法になる。
| 線を引く場所 | 分かれるもの | 代わりに払うもの |
|---|---|---|
| Googleの複数ログイン | ブラウザ内のセッション | ブラウザの外は何も分かれない |
| ブラウザのプロファイル | Cookie・拡張機能・履歴 | 行き来はウインドウの切り替えになる |
| macOSのユーザアカウント | パソコン上のほぼ全部 | 同時に使えるのは片方だけ |
| Webアプリごとの窓 | サービス単位で個別に | その作りのブラウザが要る |
表を上から下へ見ていくと、分離が強くなるほど行き来の手間が増えるという関係が見える。複数ログインは行き来が一瞬だがデスクトップ側を何も守らない。macOSのユーザを分ければ書類まで含めて完全に分かれるが、ログアウトか切り替えなしには行き来できない。多くの人に必要なのは中間で、判断が要るのは真ん中の2行になる。
ブラウザの外にあるものは別に決める
意外に思われるのは、Googleの機能のうち相当な部分がすでにブラウザの外に出ている点だ。ブラウザ側でどれだけ丁寧に分けても、そこには効かない。
分かりやすいのがパソコン版のGoogleドライブになる。バックグラウンドで動き、画面上端のメニューバーにアイコンを1つ置き、Finderにファイルを同期する。
パソコン版 Google ドライブでは、一度に最大 4 個のアカウントを使用できます。 出典: support.google.com
4つまで使えるのはありがたいが、ここで見るべきは数ではない。このアカウントの境界を持っているのは同期クライアントであってブラウザではない、という点になる。ブラウザのプロファイルを分けても、こちらは別途設定する必要がある。
同じことがデスクトップに常駐する他のものにも当てはまる。カレンダーの通知、両方のアドレスを登録したメールアプリ、資格情報を入れるパスワード管理、リンクから起動する会議アプリ。どれも「いまどのプロファイルが前面か」を見ていない。それぞれが自分の中に現在のアカウントを持っていて、その多くは最初に設定したものが既定のまま残っている。
丁寧に分けたはずのブラウザで混線が起きるのは、この層が残っているからだ。対処は難しくない。Googleのログインを持っている常駐アプリを一度書き出して、それぞれ片方だけを持たせるのか両方を持たせるのかを決める。多くの人にとっては数個の短い一覧で、一度決めれば数か月は動かない。
その書き出しのとき、もう1つ記録しておきたいのが「何も指定しなかったときにどちらを使うか」になる。同期クライアントは最初に接続したアカウントを選ぶ。メールアプリは既定に設定したアドレスから送る。カレンダーの通知は、片方を消音にしない限り接続している全アカウント分が鳴る。これらはインストールした日に黙って決まり、その後ほとんど見直されない。半年前は正しかった設定が、いつのまにか妙な挙動の原因になっているのはこのためだ。
ダウンロードと既定のブラウザは機械の側にある
もう1つ、アカウントではなくパソコン側に属していて、ブラウザの中の設定では動かせないものがある。
代表がダウンロード先だ。プロファイルを2つに分けていても、保存先が同じなら、届いた順に同じフォルダへ並ぶ。取引先の契約書と個人の領収書が隣り合い、区別できるのはファイル名だけになる。プロファイルごとに保存先を変えるか、毎回保存場所を尋ねる設定にしておくと、この混在は入口で止まる。
既定のブラウザも同じ層にある。macOSはユーザアカウントごとに1つの既定を持つので、メールやチャットや書類から踏んだリンクは、まずそのブラウザへ渡される。そこから先、どのプロファイルが受け取るかはブラウザ側の判断になり、たいていは直前に使っていたウインドウのプロファイルになる。共有された資料のリンクを開いたらアクセス権の申請画面が出た、という現象の大半はこの経路から生まれている。
パスワードの置き場所も分けて考えたい。Googleアカウントに保存したものはアカウントに付いて回るのでログインした先すべてで使える。macOSのキーチェーンに保存したものは、そのユーザアカウントのものになる。つまり同じMacユーザであれば、どちらのプロファイルからも届く。仕事の資格情報と個人の資格情報をどちらの置き場所に入れるかは、意識して決めないと既定のまま混ざる。
家族と共有しているなら、ユーザを分ける
この検索の背後には性質の違う2人の読者がいて、答えも分かれる。
1人は、自分専用のMacで仕事用と個人用の2つを使っている人だ。この場合の危険は取り違えであって、他人に見られることではない。宛先を間違えたメールは気まずいが取り返せる。必要なのは、いまどちらで作業しているかが一目で分かる、いちばん軽い境界になる。
もう1人は、家族や同居人とパソコンを共有している人になる。ここでの危険は実際の露出だ。閲覧履歴、自動入力の住所、保存された支払い情報、ログインしたままのメール。プロファイルでは守れない。プロファイルは整理の仕組みであって鍵ではない。そのMacを触れる人なら、メニューから別のプロファイルへ移れる。
この用途にはmacOSの側に正しい道具がある。Macは複数のユーザアカウントを持てて、管理者がファストユーザスイッチを有効にすると、複数の利用者が同時にログインしたまま切り替えられる。設定はシステム設定のメニューバーの項目から行い、切り替えは画面右上のメニューかコントロールセンターから行う。ユーザごとに書類もキーチェーンもアプリの状態も分かれる。代わりに、前面で動くのは常に片方だけになる。つまりこれは「人と人」を分ける線であって、同じ人の2つの役割を分ける線ではない。
この2つを取り違えると、家族で1つのMacユーザを共有したままプロファイルで分けようとする、いちばん残念な形になる。誰のプライバシーも守れていない。
決めかねたら、1日に何回またぐかを数える
4つの中からどれを選ぶかで迷ったときは、機能を比べるより先に、自分が1日に何回その境界をまたぐかを数えるほうが早い。
またぐ回数が1日に数回で済むなら、強い境界のほうが得になる。朝に個人のメールを見て、あとは夕方まで仕事だけ、という使い方なら、macOSのユーザを分けても不便はほとんど出ない。切り替えに20秒かかっても、1日2回なら問題にならない。
逆に、片方の通知を見ながらもう片方で作業する働き方だと、またぐ回数は1日に何十回になる。この場合、強い境界は続かない。面倒になった時点で片方のアカウントを両方の環境に入れてしまい、分けた意味が消える。ここで必要なのは、またぐこと自体を前提にした軽い境界になる。
数える方法は雑でよい。1日だけ、切り替えたと思うたびに紙に印を付ければ足りる。感覚で答えると多くの人は実際より少なく見積もる。この見積もりのずれが、続かない運用を選んでしまう原因になっている。
会社のアカウントを個人のMacに入れるとき
片方が勤務先や取引先から発行されたアカウントなら、利便性とは別の層が加わる。
そのアカウントで作ったものは組織のものになる。書類も予定も、そのセッションで承認した外部サービスとの連携も、管理者の管理下にあるドメインの中にあり、契約が終われば一緒に離れる。仕事用で書いた個人のメモは、置き場所を間違えたファイルではなく、他人のアカウントの中にあるファイルだ。
管理者はブラウザ側の挙動も配布できる。管理対象のアカウントと並べて別のアカウントを追加してよいか、専用のプロファイルを強制するか、拡張機能の許可範囲、同期の可否。設定画面に組織による管理の表示が出ていたら、その項目は手元では変えられない。組み立てる前に確認しておくと、作り直しの手間が消える。
個人のMacに会社のアカウントを入れる場合は、組織の設定によっては端末側の管理も一緒に入ることがある。ログインする前に何が対象になるのかを確認しておきたい。その答え次第で、会社のアカウントを普段使いのMacのプロファイルに置くのか、返却できるように別のmacOSユーザに閉じ込めるのかが決まる。
取り違えは、画面に手がかりが無いから起きる
境界を決めても、最後に1種類の間違いが残る。いまどちらで作業しているかが画面に出ていないために、違うほうで送ってしまう類の間違いだ。
手がかりは小さい。隅のアイコン、設定していれば配色、作成画面の端に出るアドレス。どれも急いでいるときの視線の通り道には無く、macOSのアプリ切り替えにも現れない。ブラウザは何アカウント抱えていても1つのアプリとして扱われる。
減らすには2つの習慣が効く。1つはプロファイルの見た目をはっきり変えること。テーマの色とアイコンを、視界の端でも違うと分かる程度に離す。もう1つは、行動の前に確認すること。送信の前、ファイルの共有の前、アクセス権の承認の前の3か所に絞れば、確認の回数は少なくて済む。
習慣の外側にある打ち手は、1つのアプリに2つの身分を持たせるのをやめることになる。ブラウザを2つ使い分ける人もいれば、複数アカウントを前提に作られたブラウザへ移る人もいる。その系統の作りはWaveboxとの比較で、料金や機能の違いも含めて確認できる。
もう1つの方向が、アプリごとに独立したワークスペースにして、身分をウインドウの単位まで引き上げる方法になる。窓が分かれていれば、視線がすでに向いている場所に手がかりが出る。どこまでを窓の単位で扱えるかはできることの一覧に、毎日開くサービスが対象に入っているかは使えるアプリの一覧にまとまっている。
よくある質問
1台のパソコンでGoogleアカウントを2つ使ってもよいのですか?
問題ありません。Googleは複数のアカウントに同時にログインできる仕組みを用意しており、パソコン版のドライブも同時に最大4個のアカウントに対応しています。制限が出るとすれば勤務先の側で、管理者の設定によっては、管理対象のアカウントと個人のアカウントを並べられない場合があります。
ブラウザのプロファイルを分ければ家族に見られませんか?
見られます。プロファイルが分けるのはCookieや履歴や拡張機能で、鍵はかかっていません。同じMacを触れる人なら、メニューから別のプロファイルへ切り替えられます。他の人から隠したいなら、macOSのユーザアカウントを分けてください。書類もキーチェーンも分かれ、ファストユーザスイッチで行き来できます。
ブラウザの外で違うアカウントが出てくるのはなぜですか?
同期クライアントやメールアプリ、カレンダーが、それぞれ独自にログインを持っているためです。これらは前面のブラウザプロファイルを参照しません。設定は個別に行う必要があり、最初に登録したアカウントが既定として残り続けることがほとんどです。
仕事と個人を分けるのにmacOSのユーザを2つ作るのは大げさですか?
1人で使うMacなら大げさです。前面で動くのは片方だけなので、切り替えるたびに作業をすべて置いていくことになります。この方法が向くのは他の人と共有している場合で、同じ人が2つの役割を持つだけなら、ウインドウかプロファイルの単位で分けるほうが両方を同時に使えます。