仕事用と私用のブラウザを分けるがうまくいかないとき|確かめる順番

仕事用と私用のブラウザを分けていたはずなのに、気づくと混ざっている。仕事のカレンダーから開いたリンクが私用のアカウントで開き、通知はどちら側から来たのか画面を見ても分からず、いままで両方でログインできていたサービスが毎朝パスワードを求めてくる。これらは症状が似ているだけで原因が別になる。片方に効く手順をもう片方に当てると、関係のないデータだけが消える。ここでは、症状を仕分けてから、取り返しの付く順に確かめる手順を並べる。

混ざる場所は、4つの受け渡しのどこかにある

仕事用と私用の分離は、どこか1か所で守られているわけではない。メールやチャットで押したリンクが画面に出るまでに、持ち主の違う4つの判断を通っている。

1つ目がmacOSの判断になる。システム設定のデスクトップとDockにある「デフォルトのWebブラウザ」は、Mac全体で1つしか選べない。どのアプリからリンクを押しても、行き先はその1つに決まる。リンクの側に「これは仕事用です」という情報は乗っていない。

2つ目がブラウザアプリの判断になる。受け取ったリンクをどの窓で開くかを決めるのはブラウザで、その規則は「最後に使った窓」になる。リンクの出どころは参照されない。

3つ目が、その窓を持っているプロファイルになる。手前にある窓のプロファイルが、自分のCookieを付けて通信する。

4つ目がサービス側の判断になる。届いたCookieを読んでセッションを見つけ、そのアカウントの画面を返す。私用のセッションが届いていれば、私用の画面を返すのが正しい動作になる。

不具合として報告される「混ざった」の多くは、この継ぎ目で起きている。どれも単体では正しく動いていて、誰も設定していない受け渡しの結果としてアカウントがずれる。どの継ぎ目で起きたのかが分かれば、直す先は1か所に絞れる。

症状を先に仕分ける

先に仕分けておくと、試す候補が半分以下になる。よく挙がる症状を、発生する場所で分けたのが次の表になる。

症状 起きている場所 最初に見る場所
仕事のリンクが私用のアカウントで開く 受け渡し1と3 既定のブラウザ設定、次に直前まで手前にあった窓
急に別のブラウザでリンクが開くようになった 受け渡し1 更新や新規インストールの後の既定のブラウザ設定
同じサービスの2つ目にログインすると1つ目が落ちる 受け渡し4 2つのアカウントが1つのCookie領域を共有していないか
通知がどちら側のものか分からない ブラウザの外 通知設定と、両側が同じアプリかどうか
パスワードの候補に毎回もう片方の人格が出る ブラウザの外 パスワード管理はプロファイルを見ていない
特定の拡張機能が仕事用にだけ入らない 管理者の設定 chrome://policy
集中モードが仕事用と私用を一緒に黙らせる ブラウザの外 集中モードはアプリ単位でしか絞れない

7行のうち4行は、ブラウザの分け方をどう変えても直らない。この割合は珍しくない。パスワード管理の挙動をプロファイルの設定で直そうとして時間を使うのが、いちばん多い遠回りになる。

取り返しの付く順に確かめる

起こりやすさの順に試すのは当て推量になる。失敗したときの損失は先に分かるので、順番は損失の小さいものから決めるのが合理的になる。

  • 1つ目は既定のブラウザ設定になる。システム設定を開いて、どのブラウザが役目を持っているかを読むだけで5秒で済む。ブラウザの更新や新しいブラウザのインストールのたびに変更の確認が出るので、数か月前の何気ない承認が原因になっていることがある。確かめるだけなら失うものがない
  • 2つ目は、いま手前にある窓のプロファイルになる。多くのブラウザはツールバーのアイコンの下に名前と色を出している。見間違えていただけなら、直すものは最初から無かったことになる
  • 3つ目はログイン状態になる。ブックマークが消えた、片側が空になった、という症状は、データが壊れたのではなくプロファイルがログアウトしている場合が多い。同じアカウントで入り直せば戻る
  • 4つ目は、1つのCookie領域が同じサービスの2つのアカウントを持たされていないかになる。この条件でログインを何度も求められるのは、仕様どおりの動作になる
  • 5つ目は管理者の設定になる。アドレスバーに chrome://policy と入れると、会社や取引先が適用している項目が並ぶ。灰色になって押せない設定や、入らない拡張機能はここに出る。手元でいくら操作しても変わらないので、確かめる価値は「何を依頼すればよいか分かる」ことにある

プロファイルの削除を最後に置く理由は、ヘルプに明記されている。

Chrome からプロファイルを削除すると、そのプロファイルのブックマーク、履歴、パスワードなどの設定がパソコンから削除されます。 出典: support.google.com

ログインしていなかったプロファイルには、手元以外に控えが無い。削除で終わった事例の多くは、1つ目か2つ目の確認で片づいていた内容になる。

症状が出た直後に手を出さないほうがよい3つ

いずれも「とりあえず効きそう」に見えて、原因の手がかりと動いていたものを同時に消してしまう操作になる。

  • Cookieの一括削除。混ざっていた側だけでなく、正常に動いていた側のログインも全部落ちる。同じサービスの2つのアカウントで交代が起きていた場合は、症状の原因を見る前に証拠が消える
  • プロファイルの作り直し。ブックマーク、履歴、保存したパスワードが手元から消える。同期していない側は戻せない。しかも既定のブラウザ設定が原因だった場合、作り直したあとも同じ症状が出る
  • ブラウザの再インストール。設定は残る作りが多いので効きにくいうえ、再インストールの過程で既定のブラウザの確認が出るため、原因そのものを踏み直すことがある

先に見るべきなのは、症状がいつから出ているか、もう片方の側でも同じことが起きるか、別のMacでも起きるかの3点になる。もう片方の側でも起きるなら、原因は片側の中には無い。

手前に来る窓が毎回ずれる理由

2つ目の確認でつまずく人が多いので、その理由を押さえておくと、分け方そのものの選択にも効いてくる。

アプリの切り替え(Command+Tab)はアプリ単位で動く。仕事用と私用を同じブラウザのプロファイルで分けている場合、切り替え画面にはブラウザが1つしか出ず、片側だけを名指しで前に出すことができない。同じアプリの窓を順に送る操作はmacOSが持っている並び順に従うので、使うたびに順番が変わり、狙って当てられる経路にはならない。

一方、仕事用と私用を別のアプリに分けている場合は、切り替え画面で直接それぞれに届く。この差が、プロファイルで分けるかアプリで分けるかを決めるときの、いちばん実務的な判断材料になる。

Dockも同じ理屈で動く。1つのアプリはアイコンが1つで、アイコンに人格は乗らない。押すと最後に手前にあった窓が上がってくるので、リンクを取り違えたのと同じ規則で動くことになる。

同じアプリの中で狙った窓に当てたいなら、メニューバーのウインドウメニューが確実な経路になる。開いている窓が題名で並び、プロファイル名もそこに出る。速くはないが、間違えると面倒な場面ではこれが正解になる。

お金をかけずにいちばん効くのは、側ごとにデスクトップ(操作スペース)を割り当てる方法になる。Dockのアイコンを副ボタンで押してオプションから割り当てておくと、デスクトップを移動するキー操作がそのまま片側への直行便になる。ただしこれはアプリ単位の分け方でしか使えない。割り当てはアプリに対して効くため、同じブラウザの2つのプロファイルを別のデスクトップに固定することはできない。

ブラウザの外で起きている4つのこと

分離の不具合として扱われているものの一部は、ブラウザのどの設定でも動かせない場所で起きている。先に切り分けておくと、無駄な設定変更をしなくて済む。

パスワード管理はプロファイルを知らない。保管庫はドメインで資格情報を持っているので、仕事用でログイン画面を開いても、そのサイトに保存してある私用の資格情報まで候補に出る。拡張機能から見えているのはサイトであってプロファイルではないためになる。対処は、保管庫を分けるか、側ごとに別のアカウントで拡張機能を使うか、候補が両方出る前提で選ぶかの3択になる。

集中モードはアプリ単位でしか絞れない。私用側が別アプリなら、夜間の集中モードでそのアプリだけを黙らせられる。同じアプリのプロファイルで分けている場合は、macOSから見てアプリは1つなので、両方まとめて黙るか両方鳴るかの二択になる。ここを設定の失敗だと思って時間をかけてしまう例が多い。

HandoffやContinuityは端末をまたいでリンクを運ぶ。iPhoneで開いていたページをMacで続けると、そのリンクは既定のブラウザに入る。アプリで分けているのにMac側の設定では説明できないずれが起きるときは、この経路を疑うことになる。

サービス側のセッション期限は運営が決めている。管理コンソールや金融系のサイトは短い間隔でセッションを切るし、パスワードを変更すると全端末のセッションが同時に無効になる。複数の側が同じ朝に一斉にログインを求めてきたなら、手元で同時に4か所壊れたと考えるより、サーバー側の出来事と考えるほうが筋が通る。この場合にCookieを消して回ると、動いていたセッションだけが失われる。

何度も戻るなら、直す対象は手順ではなく配置になる

正しい手順で直したのに数週間おきに同じ症状が戻るなら、日々の配置がその症状を定期的に生んでいることになる。判断に使える数字は2つある。

1つ目は、1日に何回その境界をまたいでいるかになる。窓を探した、プロファイルを切り替えた、開き直した、を1回と数えて1日だけ記録すれば足りる。午前は仕事、午後は私用のように塊で使っていて1日に数回なら、いまの配置で問題なく、起きた事故は偶発になる。20回を超えているなら、切り替えそのものが作業になっていて、取り違えは不注意ではなく確率の問題になる。

2つ目は、同じサービスを両側で別アカウントで使っている数になる。メール、チャット、クラウドの3つが該当するだけで、プロファイルの切り替えは1回あたり窓1つ分の費用になる。

この2つが両方とも大きいとき、変えるべきなのは手順ではなく配置になる。サービスごとに窓の置き場所を固定すると、どこを手前に出すかを思い出す工程そのものが消える。窓の単位で何を個別に持てるのかはできることに、区画の考え方はワークスペースに整理されている。手元で使っているサービスがその対象に入っているかは使えるアプリで確認できる。

同じ分類の製品でも、無料で使える範囲と分けている対象が違う。常駐できるサービス数で段階を付けるものと、機能で分けるものがあり、その差はWaveboxとの比較Ferdiumとの比較を並べると見えやすい。

配置を変えても残る層が2つある。管理者の設定は、管理されたアカウントでログインする限りどの道具でも適用される。サービス側のセッション期限も運営の領分になる。ここまで配置で解決すると期待すると、期待した分だけ落胆することになる。

よくある質問

更新のあとからリンクが別のブラウザで開くようになりました。何が変わったのですか?

macOSの既定のWebブラウザ設定が変わった可能性が高いです。ブラウザの更新時や新しいブラウザのインストール時に役目を引き受けるか確認が出て、一度承認するとMac全体のリンクの行き先が変わります。システム設定のデスクトップとDockから数秒で戻せて、失うものもありません。

同じサービスの2つ目のアカウントにログインすると1つ目が落ちます。壊れていますか?

壊れていません。1つのプロファイルはCookie領域を1つ持ち、1つのCookie領域はサイトごとに1つのセッションしか保持しません。同じサービスの2つのアカウントは交代で使う形になります。両方を同時に保つには、プロファイルを分けるか、アプリを分けるか、窓ごとにセッションを持てる道具を使うことになります。

パスワード管理に毎回もう片方の候補が出ます。プロファイルの設定で直せますか?

ブラウザ側では直せません。パスワード管理はドメインで一致を判定していて、どのプロファイルから聞かれているかを見ていないためです。保管庫を仕事用と私用で分ける、側ごとに別のアカウントで拡張機能を使う、といった管理ソフト側の対処になります。

集中モードで私用の通知だけを止めたいのですが、設定が見つかりません。

macOSの通知の絞り込みはアプリ単位で、ブラウザのプロファイルという単位を持っていないためです。同じアプリの中で分けている限り、片側だけを黙らせる設定は存在しません。私用側を別のアプリにするか、窓ごとに通知を設定できる道具を使うと、集中モードが狙える対象になります。

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